詩 手を伸ばす。
手を伸ばす。
伸ばした手は空をきる。
何もない所に手を伸ばしたって、
何もとれない。
本当だろうか。
手を伸ばす。
伸ばした手は闇をつかむ。
つかんだ闇で、
何をにぎっているのだろう。
*
伸ばした手は、
かつては、その先に手があって、
僕の手を握り返してくれた。
その手の温もりに、
その手の柔らさに、
その手のやさしさに、
僕はとても安心していた。
手を伸ばす。
伸ばした手は空をきる。
それでも伸ばした手の先に
かつて握った手があることを
その手が開いていることを
いつかはもう一度握れることを
でも、
何もない所に手を伸ばしたって、
何もとれやしない。
*
手を伸ばす。
伸ばした手は闇をつかむ。
僕の手はどこにいったのか。
この闇は何を現すのか。
いつまで闇は続くのか。
つかんだ闇で、
何をにぎっているのだろう。