老いること

*はじめに
先日、めずらしく図書館で本を
一冊借りました。
山下澄人の「君たちはしかし再び来い」
という本です。
新聞の書評が貼ってあったので、
どんな本かと読んだのですが、
「何が書いてあるのか分からない、
分からなくなる、
けれど考えさせられる。」(ウル覚えです)
という紹介が面白いと思い借りました。

以下は好きな箇所を抜粋しました。

「花はどんな風に咲いてもいい、
咲いた限りは枯れるまで咲く、
何の手を借りても咲け、
わたしだって誰だってまた咲く、
何度でも咲いてきた、
死んだらまた咲いて山になる、
海になる、人にだってなるだろう、
どれも人もまだあと百万年はきっといる」

山下澄人「君たちはしかし再び来い」文藝春秋

この本を読んで、老いについて、
僕が思ったことを文章にしたいと思い、
書きました。読んで頂ければ幸いです。

詩 「老いること」

毎日、毎日、
鏡に映る自分自身を見る。

そこには老いて、
頬の痩せた自分がいる。

髪には白いものが目立ち、
真っ白になる日も遠くない。

当たり前に続くと思ってた命に、
限りがあると、限りがあったと、
やっと、理解が及びだす。

幼いときの時間は、限りなく長く、

青春時代の甘く、苦しいときでさえ、
一日はいつまでもあると思ってた。

今、僕の時間は限られた。

明確に今日はここまで、
という限りがある。

そしてその先には、
人生の限りが透けて見える。

そのたびに、苦しく、
誰も聞いてくれないさみしさに、
胸を押さえて涙する。

弱くなった体力と、
弱くなった気力と、
少なくなった残り時間。

それでも、

この世界の空気を吸って、
胸の奥深くに巡らせて、

世界にあふれる命の中の、
その一つが自分なのだと、
僕は世界の一つなのだと、

老いることも、
命が終わることも、
ずっと続く営みなのだと、
その営みの僕は一部なのだと、

ほんの、
ほんの、少しだけ、
分かりかけて、

いや、たぶん、
いいきかせて、

僕は今日も生きている。

そして、それでも、

老いてなお、
生きていたいと思うのだ。

最後にもう一文、紹介します。

「思想めいたものが私にあるとすれば
それはこの、
聞こえているのに聞こえない耳と
見えてはいるのに見えていない目、
このからだです。」

山下澄人「君たちはしかし再び来い」文藝春秋


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