老いること
*はじめに
先日、めずらしく図書館で本を
一冊借りました。
山下澄人の「君たちはしかし再び来い」
という本です。
新聞の書評が貼ってあったので、
どんな本かと読んだのですが、
「何が書いてあるのか分からない、
分からなくなる、
けれど考えさせられる。」(ウル覚えです)
という紹介が面白いと思い借りました。
以下は好きな箇所を抜粋しました。
「花はどんな風に咲いてもいい、
咲いた限りは枯れるまで咲く、
何の手を借りても咲け、
わたしだって誰だってまた咲く、
何度でも咲いてきた、
死んだらまた咲いて山になる、
海になる、人にだってなるだろう、
どれも人もまだあと百万年はきっといる」
この本を読んで、老いについて、
僕が思ったことを文章にしたいと思い、
書きました。読んで頂ければ幸いです。
*
詩 「老いること」
毎日、毎日、
鏡に映る自分自身を見る。
そこには老いて、
頬の痩せた自分がいる。
髪には白いものが目立ち、
真っ白になる日も遠くない。
当たり前に続くと思ってた命に、
限りがあると、限りがあったと、
やっと、理解が及びだす。
幼いときの時間は、限りなく長く、
青春時代の甘く、苦しいときでさえ、
一日はいつまでもあると思ってた。
今、僕の時間は限られた。
明確に今日はここまで、
という限りがある。
そしてその先には、
人生の限りが透けて見える。
そのたびに、苦しく、
誰も聞いてくれないさみしさに、
胸を押さえて涙する。
弱くなった体力と、
弱くなった気力と、
少なくなった残り時間。
それでも、
この世界の空気を吸って、
胸の奥深くに巡らせて、
世界にあふれる命の中の、
その一つが自分なのだと、
僕は世界の一つなのだと、
老いることも、
命が終わることも、
ずっと続く営みなのだと、
その営みの僕は一部なのだと、
ほんの、
ほんの、少しだけ、
分かりかけて、
いや、たぶん、
いいきかせて、
僕は今日も生きている。
そして、それでも、
老いてなお、
生きていたいと思うのだ。
*
最後にもう一文、紹介します。
「思想めいたものが私にあるとすれば
それはこの、
聞こえているのに聞こえない耳と
見えてはいるのに見えていない目、
このからだです。」