エッセイ 思い出せない
淡く
少しだけ苦い
思い出せない
もどかしさ
忘れたいことは
忘れてしまおう
忘れたくないことは
忘れないで
*
僕が覚えているのは
教室の隣の席にすわる
君の横顔
その綺麗な眼差しは
でも僕を見ていない
白く眩しい夏服
かがやく笑顔
遠くから眺める僕
一言も
話しかけられない
*
僕が思い出すのは
君の白い右の横顔
透き通った目
肩にかかる
少し茶色の
サラサラした髪
会うことはない
君の横顔を
なぜかこの頃
思い出す
*
君と言葉を交わす
少しハスキーな声音
君は少し微笑んで
僕の名前を呼ぶ
遠い記憶の果て
思い出せない