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Photo by
keiko0131
エッセイ サナギの季節
久しぶりに青空が広がる。
近くの公園に咲く花たちも、
気持ちよさそうだ。
公園にも子供たちの姿が戻った。
青空は白い雲と重なって広がり、
鳥たちの鳴き声が響いている。
厳しい冬が来る前の、
やさしい、ひととき。
この一日が、永遠に続けばと、
願わずにはいられない。
*
ふと、木の下にモゾモゾ動く
ものがあるのに気づく。
見ると、蝶の幼生だ。
尻にはツノのようなものがあり、
少しずつ前に進んでゆく。
僕は幼生は好きではないが、
眺めていると、不思議に思う。
この幼生が、あの美しい蝶に
変態するなんて、
知っていても、信じられない。
彼らはなぜ、
自分が蝶になれることを
知っているのだろう。
どうして、
変態に必要なやり方を
知っているのだろう。
本能の一言で片づけて、
知った気になっているけど、
何も分からない。
*
僕の子は、今まさに、
サナギの時期にいる。
幼生のときの愛らしさは欠片もなく、
別の人格として再構築の真っ最中だ。
思春期。
身体が変わり、精神が変わり、
一人で生きられるように変態を遂げる。
幼生が蝶になるためサナギとなるように、
人も思春期というサナギの時期を経て、
大人へと変わる。
*
それは、誰も助けてあげられない。
その苦しい時期を、
サナギの時期を。
今、振り返って思えば、
いつも僕を導く何かがあった。
確かにあった。
そう思える自分がいる。
それが何かは、わからない。
その何かが今も僕を導いてる。
それは本能と呼ばれるものと、
同じ種類のものなのだろうか。
直感
ひらめき
言葉
出会い
僕の知る限りにおいて、
その導きに、嘘はない。