吹部パワー
わたしは、中高6年間吹奏楽部に所属していた。
この6年間のすべての経験が今も何らかの役に立っているが、特に経験しておいてよかったと思っているのは、吹部の宿命・打楽器運搬である。
音楽室以外の場所で練習・演奏する際は、部員全員で協力して打楽器を運搬する。
わたしが育った中高(一貫校だった)は、校舎と離れたところに芸術棟なる建物があり、吹部の基地・音楽室は、芸術棟の最上階、3階にあった。
我が母校には、エレベーターがなかった。もちろん芸術棟にも。
そのため、校内ホール(職員棟2F)を使用する際は、芸術棟の3階から1階まで階段で楽器を降ろし、職員棟まで運び、また階段で2階のホールまで運ぶ。すべてを運び切るまで、大体一人3〜4往復する。
打楽器は、とても女子中高生が持てる重さではない。でも、他にやってくれる人もいない。
中学生の間は「先輩たちも頑張ってるし、わたしも力にならなくては!」だし、高校生になると「慣れているわたしたちがやらねば!」になるので、全員、「わたしがやるしかない!」のである。
重くても疲れても、暑くても寒くても、楽器を落とすことは絶対に許されない。助けを求めようにも、前後を歩く同志たちも皆同じ状況なので、若さと気合と根性でやりきるしかない。そうやって皆強くなっていく。
ちょっとブラックな香りもするが、当時は別に嫌じゃなかったしなんなら楽しかった。全員で汗だくになって何かをやり遂げる一体感と達成感があった。
ここで得た強さはたぶん、死ぬまでずっと役に立つ。
高校を卒業して7年が経った今、まさにこの経験が生きる機会があった。
先週、ソファがほしくなり、実家の自室から一人がけのソファを回収した(ソファの運搬もらくらく!)。
ついでに模様替えをしたら、棚が必要になった。
欲しい棚が見つかったが、配送日数と配送料に納得がいかず、DIYも考えたけど一応見にいくことに。
実物を見たら、やっぱりドンピシャで欲しいデザインだし、致し方なし、配送頼むか〜〜と思ってレジに運ぶため持ち上げると、意外と軽い。軽いぞ、、?
"これはわんちゃん自力でいけるか?"
"いやでも電車乗るし、ここ新宿だし、誰かにぶつかったりしたら大変、、"
"けどな、改めて持ち上げてもやっぱ軽いよな、、ちょっと長いけど"
"いや〜〜〜でももう歳だし、家まで保つかしら?"
"だがしかしこの程度の重さに配送料払うのもちょっと癪だな"
"冷静に考えてこの大きさのダンボール担いで新宿の人混みを歩く成人女性の絵面ヤバくない?"
などと15分ほど葛藤したものの、やっぱり今すぐにほしい!の気持ちが勝ったため、担いで帰ることにした。
新宿の人混みはまあまあだったが、幸い電車は空いていた。
電車に乗った瞬間、座っていたおじさまに心配とドン引きが混ざったような目で見られてしまったけど、絶対に危害を加えぬよう注意を払いながら無事帰宅。
電車で、どうしてこうも逞しいんだ?と考えていたら、打楽器運搬の経験にたどり着いた。
そう、わたしってなんか全体的に"逞しい"んだよな。あらゆるところで。
良いことかはさておき、簡単にヘルプを求めたりギブアップしないところは自分の長所だと思っている。大学時代も社会に出てからもよく褒められる。(でも他人に強いるのは絶対ダメ、こんな根性なくていい。)
この逞しさは間違いなくあの6年で培ったもの。
養われた気力と腕力はこれからも大事にしていきたい。
おかげさまで、すぐに棚が手に入り無事に良い家になりました。
以上、朝霧でした!