【二次創作】特技を期待される砦を守る翼竜(本文:2497文字)
※本作は『遊☆戯☆王』の二次創作小説となります。原作と異なる設定および表現を含むため、苦手な方はご注意ください。
本作のテーマである「砦を守る翼竜」について詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
「『砦を守る翼竜』の特技『飛行』! 敵の攻撃の回避確率35パーセント!」
なんやその能力。ワイは通常モンスターやなかったのか。
あかん。マスターはワイが回避する気満々の顔しとる。百歩譲ってワイにそんな特殊能力があったとしても、35パーセントって割と低めな確率に絶対避けるやろみたいな顔せんとってくれや。仲間を信じきるタイプなのは知っとるけど、ワイの35パーセントはそこまで信用ならんぞ。
ワーム・ビーストが本当に避けるんかって顔してる。お前の言いたいことは分かるで。ワイのテキストのどこにも35パーセントで相手の攻撃を回避するなんて書いてないからな。ほんでテキストに書いてもない効果処理やらかしたらゲームが成立しなくなるって言いたいんやろ?
ワイだって回避なんかしたくないわ。回避せんでも相打ちで十分役目は果たせる。でもゲームが成立せんとかいう正論でうちのマスターが止まるわけないやろ。一度勢いに乗せたら誰にも止められんお方やぞ。
大体、カード名「砦を守る翼竜」やぞ。一部の連中には「とりでをまもるよ!」の愛称で呼ばれてるワイが砦ほっぽいて逃げたらアイデンティティの崩壊やないか。
「成功!」
やけどすまんなワーム・ビースト。ワイはもっとマスターに使われたいねん。ここで避けんかったら死者蘇生で復活も無いやろうし、ルール無視を非難されるより戦力外通告でストレージ行きの方がごめんやねん。
「翼竜の攻撃!」
そんな顔せんといてくれやワーム・ビースト。どうせワイもこの後適当なモンスターにやられてすぐそっち行くから。
案の定、ワイはその後に海馬が繰り出したサギーとかいうモンスターに瞬殺された。
やっぱりダメやったわワーム・ビースト。まあ、ワイがあの後も回避しまくってたらさすがの海馬もブチギレやろうからこれでよかったんかもしれんな。でもここだけの話、お前を倒せたときほんのちょっとブルーアイズってやつもいけると思ったんやけどな。ほら、サギーの奴が使ってたなんたらエネルギーってやつでワイも攻撃力3倍になったりとかさ。サギーが「闇・エネルギー」やったらワイは「砦・エネルギー」かななんて。お前やったら「毒・エネルギー」なんてイカしてるかもしれんな!
墓地ではワーム・ビーストとの賑やかな談笑が繰り広げられていた。補充要員だの死体に鞭打って再び使われることも無くはないが、墓地はいわば舞台裏みたいなもんで、一度逝ってしまえば積み重なったカードらと一緒に決闘鑑賞にしゃれこむのが常套よ。
「2枚目のブルーアイズを引いた。素直に負けを認めたらどうだ遊戯!」
「海馬! オレはこのカードを信じるぜ! 死者蘇生!」
ここで死者蘇生を引いてくるとは見事やでマスター。だが2体のブルーアイズ相手に誰を呼んでも変わらんのやないか?
遠くからサギーがこっちに来た。え、マスターがワイを死者蘇生しようとしてる? まさかワイの回避でブルーアイズの攻撃全部避けきろうとしとるんやないやろな? あかんて。さすがの海馬もその展開はブチギレ間違いないて。それならまだワイの後に出てきたガイアとかいうのにリベンジマッチさせた方がええやろがい!
「フン! そんな雑魚モンスターで何ができる?」
「カードと心を一つにすれば奇跡は起こるんだ!」
回避する気満々やないか。そら二回も回避できたら奇跡やろうけど35パーセントにそこまで期待されるのプレッシャーでしかないわ。
ほら、ブルーアイズさんの方もどうせ回避してくるんやろ考えて翼バッサバッサしとるやないか。嫌やわ2体がかりのバーストストリーム。滅ぶ気しかせんもん。
せやけどワイは間違ってた。うちのマスターは無茶振り常習犯やけどそれ以上に天賦のエンターテイナー。二連続回避とかで満足するようなお方やなかった。
「翼竜の隠された特技『光の護封剣』を発動!」
無理無理無理無理。二連続回避どころかワイで3ターンもたせようとしとるやん。
そもそもなんでモンスターのワイに光の護封剣を見出したんや。そらたまに生きた○○とかいう壊れカードもあるけどワイには荷が重いで。
あ、いいからやれって顔しとる。ズルいでまったく。逆らったらどうせ「マインドクラッシュ!」とか「罰ゲーム!」とか言って精神的に散々いたぶった挙句ストレージ行きやろ。地獄しかないやん。
ならやったる。後門の狼より前門の虎や。やけどワイと心を一つにしてくれたんやったらコツくらい教えてくれてもええと思うんやけどな。まあこの際どうでもええか。ワイが護封剣出すならやっぱり口からやろか。うーん、これじゃいつもの「火球の飛礫」やもんな。こうすると、ちょっと良くなったけど「炎の流星」って感じや。炎から離れないかんのやな。えーと、炎やなくて光を出す感覚で。
「無駄なこと。3ターン引き延ばしたところで何ができる?」
よかった。口からパァって光っぽいの出したら海馬納得してくれた。ていうかさっきから思っとったけど海馬優しすぎるやろ。うちのマスターやりたい放題やってるけど全部許してくれとるし、ワイやったら回避とか言い始めた時点でげんなりしとるぞ。
「海馬の言うとおりオレの手札は意味不明のカード。これでどうやって戦えばいいんだ」
ワイの特技は意味不明やと思わんかったんか。急にただの通常モンスターが攻撃避けて光の護封剣まで使い始めてるんやぞ。
「――オレの引いたカードは『封印されしエクゾディア』! 今、5枚のカードが全て揃った! 怒りの業火エクゾードフレイム!」
「バ、バカな! 僕が負けるなんて……」
勝った。最後も何がどうなったかよくわからんかったけど勝ったみたいや。マスターもノリノリでマインドクラッシュしとる。
今回は見せ場も仰山もらったし大いに勉強させてもらったわ。カードゲームに一番大切なものは知識とか運やない。勢いや。相手を呑みこむ勢いがあれば大抵の逆境もなんとかなるいうことを学んだわ。ワイもいけいけどんどんでやらさせてもらうで!
「ダイナソー、ダイナソー。朝やでー」
「おおもう朝かいな。母ちゃん起こしてくれてありがとな」
「ええわそんなん。今日は大会の決勝戦なんやろ? 気張っていくんやで!」
「おう! そんじゃ行ってくる!」
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