【小説】焦点の合わぬメガホン(本文:538文字)
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叫んでいる人たちがいた。彼らは集団ではない。一人一人が異なる言葉をメガホンに乗せて声を張り上げているのだ。
叫んでいる一人が膝から崩れ落ちた。それでも何かを叫ぼうとしている様子だったが声が枯れてしまったようで、多数の声が轟くこの場所からでは彼が何を伝えようとしているか分からず、震えて泣いている姿が私の心を不安にさせる。だが彼に同情するだけでなく動き出せばよかったんだ。メガホンを捨て置き、岸に飛び込んでいった彼の哀しそうな表情が目に焼きついてしまったから。
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