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【小説】じゃんけん(本文:639文字)

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 T字路の死角から現れた男は私と目が合うと、右手を私に見えないように構え始めた。じゃんけんを始める気だ。私も同様に彼から隠すように右手を構える。

 じゃんけんを行うとき、大概の人間は初手にグーを出しやすいと聞いた。グーは単純な形であるため直感的に選びやすいという。

 ならばパーだ。パーを出せば彼に勝てる。そう拳を緩めた瞬間、なぜか自らの敗北が頭をよぎった。その理由は帽子越しに窺う彼の素顔を見て明らかとなる。彼はチョウザメだったのだ。

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