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【小説】15回の初めまして(本文:1696文字)

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 壊れているような音が鳴り終えると神経が繋がっていく感覚がして目を開けた。彼はまるで私の目覚めを待っていたように顔を近づけて問いかける。

「質問。俺の名前は?」

 唐突であったが私は頭をフル回転して考える。けれども答えは浮かばなかった。

「ごめんなさい。分からないです」
「いいよ。このやり取りも15回目だから」

 15回目。私は彼と会話を交わしたことがあるのか。しかし彼との思い出の断片すらも掴めない。唯一分かるのは、私に見えないものが彼には見えているということだ。

 彼はAと名乗った。そして私をCと呼んだ。

 砂の世界には縦横無尽に走り回れるほどの自由があったが、私には彼が残した轍を追うことしかできなかった。目の前にある灯を失ってしまえば世界が途端砂ぼこりに覆われてしまいそうだったから。

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