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夫が家を買ってきた

転勤が決まり、物件を探すために夫がひとり飛行機に乗った。前もってお願いしていた不動産屋さんに朝イチで乗り込み、その中の2軒を実際に見せてもらった。
私は自宅からリモートで一緒に内見した。
「水回りは新品だね」
「部屋もきれいだね」
「駐車場はギリギリだね」
「冷蔵庫は庭から入るね」

それなりにいい物件だったけどテンションが上がらなかった。
何故ならスマホで見つけた良さそうな賃貸物件がことごとく「埋まってます」だったからだ。
これまで何度も引っ越しを経験しているけど、スマホに載っている物件に住めたことは一度もない。
毎度のことながら、結局は不動産屋に出向いて直接やり取りをすることになる。
「妥協を望む不動産屋」VS「諦めない客」の無言の戦い。面倒くさくなって投げやりになってしまいそうになる。

うちはそもそも戸建てに住んでいたのでひとつひとつの家具家電のサイズが大きい。
600Lの冷蔵庫、婚礼タンス、58インチのテレビ、マッサージチェア、大きなソファ。
洋服ダンスやコタツなど処分したけれど、宮城に来てベッドを2台買ってしまった。
もはやマンションの玄関を通るサイズではない。
ちなみに夫自身も184センチの規格外だ。

夫はもともと賃貸が嫌いで「どうせお金払うならローンが良い」という考えの持ち主だ。
なので賃貸物件と並行して売り物件もずっとチェックしていた。
そして物件を見に行く前日、
「うおっ!!」
夫が叫んだ。
「出た!!」
目当ての場所にかなり安くすごい良い売り物件が出たという。確かに全てが良く見える。
夫はすぐに不動産屋に電話をして無理矢理内見予約を入れてもらった。
もう既に3組の内見予約が入っていたらしく、夕方5時になった。

そんなことがあって午前中はテンションが上がらないまま、住む気のない賃貸物件の内見をしていた。
そして夕方、打って変わってテンション高く売り物件の内見が始まった。
「すげ〜!でかい!天井高い!!」
大興奮の夫に私は
「落ち着け!いつもの厳しい目で見るんだ!」
とスマホに向けて叫ぶ。
屋根、外壁、白アリ、残留物、家電の機動確認、動物の侵入経路チェック、擁壁の強度などなど見て回ってもらった。
夫はリフォーム費用などを計算し、やっぱり買いだと言う。それならばと手続きするよう勧めた。

「トントン拍子に進むようならそのまま手続きを」
と言って送り出したけど、本当に昨日の今日で家を買うことになるとは。
リモートでの内見だったけど、2階のテラスからの眺めは清々しく、緑しかない景色だった。鳥の声がスマホからずっと聞こえていた。
転勤が決まってから何度も想像していた眺め。
あの家に住めたらいいなぁ。


物件探しはトントン拍子に進んだけど、実は行きの夫の飛行機が天候不良で大揺れし、到着が遅れた。
そして今日、私用のスマホを無くした。
更に今、バスに乗っていて追突事故に巻き込まれて高速で立ち往生している。
トントン拍子とはほど遠い夫!無事に帰って来いよ〜

あ、夫より契約成立の連絡が来た。
やった〜!

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