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お金を貸す理由

長男と次男がお金を貸してくださいと言ってきた。
「今か〜、今なのか〜」と思った。

夫の実家は夫が子供の頃、お金でかなり揉めたという。
介護やワンオペ、買い物依存、ブラックリスト、、、
義父母は今はお金の心配なく暮らしているけど、家族間の喧嘩を体を張って止めたり、進路を変えたり、夫の心に残る傷は大きい。
だからうちの両親への結婚の挨拶は通帳持参だった。
私へは「お金の心配はさせない」だったし、それは2度の入院があっても専業主婦でも変わらず守ってくれた約束だった。
長男、次男にも同じで、学費から習い事の費用まで全てきちんと納めてくれた。
夫にとってそれはプライドであり存在意義だった。
そんな夫だから老後の資金の心配が、退職の足枷になっている。どうしてもお金の不安がつきまとう。
何でそんな時に!


長男は会社勤めをしている。更に副業で会社を立ち上げている。
先日「本業の方が倒産するから副業一本でいく」と連絡があった。本業の方で長男が立ち上げた部署が、副業に関連していて買い取りたいから資金援助をしてくれという。
長男には今までもいくらかお金を貸していて、副業の方の株も買っている。(返済は毎月きちんとされている)
次男は奥さんの入院、漏水の修理、車の車検などが重なり貯金が底をついたという。
次男には孫のおむつ代とミルク代を全て支払っている。返済は孫の笑顔でオールOK。

今回の次男の言い分は私たちにも身に覚えのあるものだったし、孫のこともあるし、クリスマスや誕生日として贈ることにした。
問題は長男だ。
夫は何故か貸す気でいる。息子に頼られるという承認欲求、存在意義がそうさせるのはわかる。
それは自分を犠牲にして、辛い仕事をこのまま耐えるという選択をするなら話は変わってくる。
こういったお金が絡む話し合いは、いつもは私は何も言わない。夫の働いてきたお金だし、好きなように使えばいいと思う。
ただ今回は私の心がモヤモヤして、いつものようにぼんやりと幸せに浸ることができなくなった。

夜、電話で長男と話し合うことになった。
長男は説得する準備を万端にして、銀行相手に話してるかのようだった。(この辺はホント夫に似てる)
今の売り上げ、資金の流れ、今後の利益、返済の目処。
(ふん!子供の頃は口より先に手が出るタイプだったくせに!)
いつもは言葉が上手く出てこないのに、この日は何故かスルスルと長男に反論している私がいた。
「そうは言っても大金だからね。銀行が貸してくれた分があなたの価値でしょう。分不相応なんじゃない?今あるもので何とかするという選択肢も、諦めて新しく仕事先を探すのもありでしょう。結婚もして責任もあるわけだし。」
今まで常識や礼儀を説いてきたのは夫で、私は長男には「ワクワクしてるの?それならいいわ。」しか言ってこなかった。その私が長男と夫から「ごもっともです。」と言われるようなことを言うなんて。
ホントに私?
そんな私に長男も思わず言ってしまったのだろう。
「こう言ったら良くないけどお金を借りることは悪いことだとは思ってない。」

なるほど〜
夫がどう思ったかはわからないけれど、私はこの言葉でお金を貸してもいいと思った。
長男にとってお金は動かすものなのだと思う。大きな流れを作る力。循環させていくもの。
これは夫のお金に対する考え方を変えるきっかけなのかもしれない。
老後の資金に怯えてる夫の横で、希望に満ちた借金まみれの息子がいる。

夫は私の決断に反論することなく長男にお金を振り込んだ。
「これから外壁塗装と屋根の修理をするのに。税金も払わなきゃいけないのに。」
そう言いながらも表情は明るかった。


この文章を読み返すとかなりダメな親子だと思う。
少し言い訳をすると私たちがお金を貸した理由は、会社の将来性ではなくて長男の将来性を信じたということ。今まで育ててきて(いや、彼の場合は勝手に育って)いろんな信じられない出来事を数々見せてくれたことが理由だ。長男の将来を、ワクワクさせてくれる行動を、特等席で見るためのチケット代だと思っている。
それをぜひ、夫に見てほしい。
「なんとかなる」を体現する息子を。

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