夫からの遺伝
次男一家が中古車を買うと、車大好きな夫へ電話がかかってきた。車種、予算、安全性、燃費などの希望を聞き、おすすめの車について嬉々として語っていた。
しばらくしてまた電話がきた。今度は中古車ならではの妥協点について。走行距離、汚れや傷、安全機能、付属品の有無など。次男は、夫の口から飛び出す専門用語にいちいち質問していく。
先日ようやく良さそうな車を見つけたと連絡がきた。陸送が必要で、まだ現物を見ていないという。
「陸送してもらったあとでは買わないという選択肢がないのでは?」と心配していた次男。
今回たまたま現物がうちの近くの中古車販売店にあるというので、夫が直接見に行くことにした。
夫の厳しいチェックをクリアした車はとりあえず陸送することになった。
その後無事に、次男一家は中古車販売店にて車と対面した。いざ契約というときには次男のお嫁ちゃんのご両親も同席したという。次男はまだ24歳で、おそらく心配だったのだと思う。
案の定いくつかのトラブルがあった。チェック不足や口約束、中古車販売店への過剰な期待などなど。
とはいえ次男としては、仕事の合間に無知ながら懸命に選んだ車を今更一からやり直しとはいかない。中古車販売店と家族の板挟みになりながら、
「どうすれば良かったのか」
と夫に相談?愚痴?の電話をかけてきた。
「完璧に物事を運ぶなんてことは無理だから諦めろ」
「人が絡めば絡むほど大団円とはいかない」
次男の話を聞けばなかなか強かな交渉ぶりで、
「ドラレコ無しでこの価格はちょっと、、」
「あと少し下げてくれたら即決なんだけど、、」
「下取り価格、他ではもうちょい高かったな」
とかなり値引きしてもらったらしい。
もはやこれ以上はクレーマーだ。
でもそんなことを知らないご両親たちは次男のためにがんばってくださったのだろう。
あとは次男の説得力でみんなを納得させてくれ。
次男は以前にも家を購入したとき、すぐに壊れた空調を無償で修理してもらったことがあった。ごねる修理業者とのやり取りをスマホで録音し、物件の仲介業者も引っ張り込んで、契約書を隅々まで確認し、弁護士に相談までして、、、
我が息子ながら恐ろしい。当時はまだ23歳なりたてだった。
私には全くない能力なので100%夫からの遺伝だろう。
夫は常識や正義を盾に理詰めで攻める。
「レジに並んでるうちに支払いの準備をすれば待たせないから迷惑にならない」
「追い越し車線は追い越したら戻らないと早い車の迷惑になる」
「譲るのはいいけど自分の後ろに人が並んでる場合は先に行くべき」
自分はちゃんとやってるがゆえに人様のことが許せなくて文句が多い。
私としては夫に怒られないかヒヤヒヤする。
レジでは早くにスマホにペイの画面を出したから、支払いの時に時間切れになったり、クーポンの画面から支払いの画面へなかなか切り替わらなかったり、もたもたすることが多い。
そんなとき夫は
「さっきのレシート見せて。ほら、割引になってない。」
もはや感心してしまう。
次男には先日の母の日に
「いつもありがとう」
「いえいえ、母親らしいことしてませんので」
「そうだね。大学入試の説明会で寝てたもんね」
まだ言うか、それ。
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