点字の数字(3)ひとり・1にん編(点字のはなし(37))

前回、点字の「日にち・日数」のことを書きました。
今回は人数です。

人数も、基本的には日にちと同じですが、他のルールも関係してきます。

注:以下、点字の五十音を「仮名」と表現します。
  数字等と区別をつけるため、便宜上です。ご承知おきください。

人数を点字で書く時は、「ひ・ふ・み…」に基づく言い方だけ、仮名で書きます。
現代語では、「ひふみ」に基づく人数の言い方は「ひとり・ふたり」だけですから、それだけ仮名で書き、「3人」以上は、数符を使って書きます。
(古文では3人以上も「ひふみ」に基づく言い方をすることがありますが、ここでは省きます。)

<点字凸面、ひとり・ふたり・3にん・4にん>

「さんにん」はいいとして、「よんにん」と読んでしまうのでは?
…と思ったりもしますが、許容範囲なのでしょう。

と、ここまでは単純かもしれません。
でも、上記のルールが適用されない書き方もあります。

例えば、「一人前(いちにんまえ)」です。
(「ひとりまえ」という言い方は少数派ですので除外します。)

「いちにんまえ」が数量をあらわす場合は、点字の数字を使って書きます。
「一人前の蕎麦」
 ⇒「1にんまえの[マスあけ]そば」。

しかし、同じ「一人前」でも、数量をあらわしていないなら、仮名で書きます。
「一人前の大人」
 ⇒「いちにんまえの[マスあけ]おとな」。

数量をあらわさない…というのは、
お蕎麦なら、「二人前、三人前…」と言い(数え)ますが、「大人として二人前・三人前…」とは言わない(=数えない)、ということです。

<1にんまえのそば、いちにんまえのおとな>

点字では、「数を数える概念」が含まれていれば数字(数符)を使って書き、その概念が無い時と、人名や地名は仮名で書きます。
原則、「ひ・ふ・み…」は仮名、それ以外は数字なのですが、「ひふみ」でないのに仮名で書く場合もあるのです。

「いちにんまえ」と似ている例としては、
・「水を一杯」は数字で書き、「胸がいっぱい」は仮名で書く。
・「追加料金一円」は数字で書き、「北海道一円(範囲の意味)」は仮名で書く。
…があります。

迷うのは、普段あまり「数える概念」を意識しない言葉です。
墨字(普通字)で漢数字で書かれる言葉は、何となく、数える概念を感じにくいかもしれませんが、
 五重塔 は、「5じゅーの[マスあけ]とー」
 一期一会 は、「1ご[マスあけ]1[つなぎ符]え」
 一朝一夕 は、「1ちょー[マスあけ]1せき」
です。
(『つなぎ符』については、別の機会に書きます。)

ただし、数える概念があっても、数字の部分が「ひ・ふ…」となっていたら、仮名で書きます。
「ひとつまみ」
「ふたつへんじ」
などがそうです。『「ひ・ふ・み…」は仮名』が大前提だからです。

ケースバイケースが多くて、なかなかフクザツです。
点訳に迷ったら、ここに来て見てくださいね、と言うしかありません。
「数える時はこう書く、数えない時はこう書く」と、割り切れたら良いのに…数字だけに…。

by くろうーろん

※こちらは過去にssブログ(2017-01-26 13:00)に掲載されていた記事です。再掲にあたり、一部修正致しました。