めったに使わない点字、「ダッシュ」編(点字のはなし(50))

これまで、使用頻度が低い点字として、伏せ字記号、位取り記号、アポストロフィ、一部のカッコ記号、中点(中黒)をご紹介してきました。
今日は、ダッシュ(横棒)の記号についてです。
 ※以下、「ダッシュ」は、文字の右上に付記する記号「´」ではなく、
  横に長い線のことです。

当センターの試験も、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家試験も、「線」を使うことがあります。

例えば「正しい組み合わせ」を選ぶ問題の場合、墨字(普通字)では、
 1. 北海道 ― 札幌市
 2. 青森県 ― 仙台市
…のように、複数の単語をつなぐために使います。
(ここでは、ダッシュでつないでいます。)

(注:音声でこの記事を読んでいる方は、設定によっては、ダッシュを「バー」と読み上げる場合があります。)

墨字(普通字)では、ダッシュだけでなく、長音、ハイフン、マイナスを使ったり、罫線を使うこともあります。
以下、同じように見えるかもしれませんが、違う記号です。
 ダッシュの場合 北海道 ― 札幌市
 ハイフンの場合 北海道 ‐ 札幌市
 マイナスの場合 北海道 - 札幌市
 長音記号の場合 北海道 ー 札幌市

(注:音声でこの記事を読んでいる方は、設定によっては、ダッシュと長音をどちらも「バー」と読み上げる場合があります。)

なお、試験問題を朗読(問題の読み上げ)する場合は、原文でどんな線が使われていても、
 いち。 北海道 と 札幌市。
 に。 青森県 と 仙台市。
…のように、接続詞の「と」に置き換えて読むことになっています。

さて。点字はどうでしょうか。

実は、原文の墨字(普通字)で、どんな線が使われていても、点字では一択、「棒線」を使って書きます。

<棒線は、長音(音を伸ばす印。2と5の点)を2マス以上連続して書き、その前後をひとマス空けて書きます。>

点字にも、ダッシュの記号はありますので、自動点訳すると、アプリによってはその記号が使われることがあります。
ですが、試験問題の点字では、あえてダッシュの記号を使いません。

理由の一つ目は、読みやすさ優先のため。

点字では、ダッシュの前後は、マスあけをしないルールになっています。そのため、複数の単語がつながり、読みにくくなります。

<ダッシュをルール通りに点訳すると、前後にマスを空けないので、複数の単語が全部ひとつながりに長くなります。>

点字は、途中に空白のマスがあるほうが、読みやすいのです。
試験ならばなおさら、読みやすさは重要ですよね。
「棒線」の記号は、前後を1マスあけて書くことになっているので、読みやすい。
だから、原文の墨字(普通字)でどんな線が使われていようと、点字は一律に「棒線」を使う、というわけです。

理由の二つ目は、ダッシュの記号を使うと、別の意味になってしまうから。

ダッシュは、点字では、英語の仲間に分類されます。
点字ではこれらを「外語(がいご)」と呼んで、区別します。
点字には、日本語の文章の中で、前置きなく外語や外語の記号を使わない、というルールがあります。

という事は、日本語の文の中では、ダッシュは日本語の「~」、波線(なみせん)になってしまうのです。
(波線は、3と6の点2マスを、前後をあけないで書きます。)

つまり、書き手は「北海道―札幌市」のつもりでも、出来上がった文章は「北海道~札幌市」となるのです。
音読すると、「北海道から札幌市」。
全然、違いますよね。
このような事態を避けるために、点字では「棒線」一択というわけです。

余談ですが…
文字の右上に付記する「´(ダッシュ)」の記号は、日本の点字記号にはありません。必要な場合は、カナで書くと良いでしょう。

by くろうーろん

※こちらは過去にssブログ(2018-03-14 13:00)に掲載されていた記事です。再掲にあたり、一部修正致しました。