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自主財源と依存財源のおかしな分類と計算式
こんにちは
函館減税会です
すべての増税に反対し、減税を実現することという二つの活動方針に基づいて、減税活動を行っています。
今回は、地方自治体が宿泊税や交通税などの法定外目的税を導入しようとする背景としてよく挙がる、自主財源と依存財源という分類について取り上げます。
自治体及び自治体の諸事業は、自治体ごとに徴収した地方税と、国(中央政府)から渡される国庫支出金と地方交付税交付金などを合わせた歳入によって運営されています。
ここで、歳入に占める地方税の割合が少ないと、自治体の事業の多くの部分を国からの支出に頼る形となり、財源の観点からみて自主性が小さい、すなわち国への依存度が高いと言われます。実際、地方交付税交付金については、各自治体ごとの歳入の差による不足を補うという、自主性をかえって損ねるような論理で支出されていますから、地方税などの自主財源で事業を賄えているかという観点は無視できません。
しかし一方で、自主財源と依存財源という分類は、地方財政の自主性を測るという目的からすると、おかしいと言わざるを得ません。そこで今回は、自主財源と依存財源のおかしな点について書いていきます。
自主財源と依存財源
函館市の歳入の内訳
まずどのような財源が歳入に含まれているのかを確認していきましょう。次の図は、令和4年度(2022年度)の函館市の歳入を表したグラフです。
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令和4年度の函館市の台所事情という、市民向けの説明資料から抜粋しました。自主財源が33.4%、依存財源が66.6%となっており、歳入の3分の2が依存財源となっています。この図を見ると、函館市は外部の財源に依存しているように見えます。
国庫支出金・道支出は依存財源なのか?
依存財源の最も多くを占めるのが、国庫支出金及び道支出金です。これらはどのようなお金なのでしょうか。以下は令和6年度の地方財政白書に掲載されている国庫支出金の説明です。
国と地方公共団体の経費負担区分に基づき、国が地方公共団体に対して支出する負担金、委託費、特定の施策の奨励又は財政援助のための補助金等。
基本的にこれらの支出金は、国や広域自治体が基礎自治体にやってほしい行政を実行するために払っているお金です。ですから、基礎自治体の裁量で歳入も歳出も変更するというものではありません。自治体の自主性とは本来関係のない歳入なのです。委託したい側とされる側、業務と対応する支出金でトレードが成立していますから、支出金の額を依存財源と呼ぶことには無理があります。
もし支出金を計算に入れなかったら?
上述したように、国庫支出金・道支出金は自治体の依存財源から外すべきです。では、これらを外した場合に、函館市の自主財源・依存財源の割合はどのように変化するのでしょうか。それを表したのが次の図です。
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上図を見ると、国庫支出金・道支出金を除けば、自主財源と依存財源はほぼ同額存在しているということがわかります。また、項目の修正前と後で、17%ポイント弱も自主財源の割合が変わっていることがわかります。
地方自治体の財政の自主性を測る指標
財政力指数
地方自治体の財政の自主性、すなわち、国から得ている歳入にどれだけ左右されずに自由に自治を行うことができるかを測る指標としては、基本的には財政力指数という数値が用いられます。計算式は総務省の財政力指数のページに書かれており、次のようになっています。
$$
財政力指数 = \frac{基準財政収入額}{基準財政需要額}
$$
この数式は基準財政収入額と基準財政需要額という二つの変数で構成されていますが、これらの計算式は非常に難解な内容になっており、本題とは外れるので説明は省きます。
函館市の資料によると次のように説明されています。
行政に必要なお金を,自前の収入でどれくらい賄えているかを示すもので,この指数が1に近いほど,または,1を超えるほど,財政力が強い(財源に余裕がある)団体となります。
函館市の財政力指数は令和4年度で0.481であり、類似団体(産業構造等が似ている自治体)は0.776なので相対的には低いといえます。確かに、上図を見ても、50%はいまだ依存財源であり、そのうち34%が地方交付税交付金ですから、決して自主性が高いとまでは言えません。
自主財源比率という謎の指標
ところで、地方自治体関係の話や資料を見ていると、時々、自主財源比率という用語が用いられていることがあります。直観的には、上記の図に示すように歳入全体に対して自主財源がどの程度の割合を占めているか、という風に定義されるでしょう。しかし、定義(計算方法)は必ずしもそのようにされません。
例としていくつかの資料から定義を引用します。
地方公共団体の財源には、自主財源と依存財源がある。自主財源は、自治体が自らの権能に基づいて自主的に収入できる財源で、自主財源比率は、財源全体に占める自主財源の比率である。
上記で定義されている指標は「国と地方の関係に関する一考察~地方交付税に内在する課題と見直しの方向性~」という参議院の財政金融委員会調査室の吉田博光氏が書いた文書でも用いられています。
地方税や手数料といった、都道府県の自前財源(=自主財源)の歳出総額に占める割合をみると、35道府県では、50%を下回っており、歳入の半分以上を地方交付税や国庫支出金といった、自主財源以外の財源に頼っていることが分かる。
(中略)
自主財源比率=自主財源額/歳出決算総額
内閣府の資料の中には、歳出決算額に対する自主財源額の割合を自主財源比率とする記述がありました。しかし、これまでの説明を読んだうえではこの定義の問題に気付けるでしょう。歳出には国庫支出金で賄う予定の支出が含まれています。分母には国庫支出金に相当する事業費が含まれているにも関わらず、分子には自主財源のみを持ってきているわけですから、この計算式では実態以上に自主財源の割合が低く計算されてしまいます。
どちらの定義にも、国庫支出金の扱いに問題があり、さらに後者については、分母と分子の条件がそろっていないように見える不出来な指標になっています。
まとめ
今回は自主財源という用語について、函館市の歳入などの基礎的な部分から解説してみました。自主財源は、地方が独自の税を導入するための理由付けや方便に用いられる言葉であり、我々は増税を阻止するために注視する必要があります。
そんな自主財源ですが、その分類や比較方法、また、自主財源比率という指標に含まれる問題点が浮き彫りになりました。行政やその関連団体、メディア等では、指標の計算方法を疑う姿勢が欠けているように思えます。減税活動を行っていくうえで、こうした指標にまどわされないようにしていきたいものです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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