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身元保証サービスの重要事項説明書とは

身寄りがなかったり、こどもや親族が遠方に住んでいるシニアの方を対象に、病院への入院や介護施設等への入所の際の手続、日用品の買物などの日常生活、葬儀や死後の財産処分などの死後事務をサポートする、身元保証サービス(高齢者等終身サポート事業)を提供する事業者が増えています。

そこで今回は、シニアの方々が、身元保証サービスを安心して利用するための「重要事項説明書」についてご一緒に見ていきましょう。


重要事項説明書とは

重要事項説明書とは、契約を締結するかどうかを判断するうえで影響をあたえるような、大切な事柄が説明されている書面を指します。「重説」(じゅうせつ)と略されることもあります。

つぎのような場面では、事業者は重要事項説明書を作成し、契約当事者や依頼者に対してそれを交付し、あわせて専門家から説明することを、法律で義務付けられています。

  • 不動産売買契約を締結するとき(宅地建物取引業法第35条)

  • 設計受託契約・工事監理受託契約を締結するとき(建築士法第24条の7)

  • マンション管理委託契約を締結するとき(マンション管理適正化法第72条)

  • 探偵業務契約を締結するとき(探偵業法第8条)

このほかにも重要事項説明書は、保険の加入、介護サービスの締結、携帯電話の加入、動物の取り扱いなど、さまざまな場面で作成・利用されています。

身元保証サービスでも重要事項説明書は必要

2024年6月、内閣官房等は、身元保証サービスを提供する事業者の指針として、「高齢者等終身サポート事業に関する事業者ガイドライン」を策定しました。

ガイドラインのなかでは、重要事項説明書の作成・交付について、次のように指摘しています。

事業者は、契約に際して重要な事項に関する説明を行う際には、個々人ごとに提供するサービス内容や、利用者の判断能力が低下した場合の対応方針などの以下の事項について、利用者本人との面談等を通じ、利用者の年齢、心身の状態、知識及び経験を踏まえた丁寧な説明を行うとともに、重要事項説明書として作成・交付することにより、利用者の理解促進に努めることが重要である。

出典:高齢者等終身サポート事業に関する事業者ガイドライン P9(太字筆者)

このように、身元保証サービスを利用する場合は、契約締結前に、事業者から重要事項説明書をもらって説明を受けることが大切です。

身元保証サービスの重要事項説明書に記載すること

では、身元保証サービスの重要事項説明書には、どのようなことが記載されているべきなのでしょうか?

ガイドラインは、具体例として、次の12項目をあげています。

①契約者に対して提供するサービス内容や費用
②当該利用者の費用の支払方法
③契約者に対して提供するサービスの履行状況を確認する方法
④入院・入所等が必要となった場合における対応方針、医療に係る意思決定の支援
⑤利用者の判断能力が低下した場合の対応方針
⑥契約するサービスの債務不履行や不法行為により利用者に損害が発生した場合の賠償に関するルール
⑦契約するサービスの解除方法・解約事由や契約変更や解約時の返金に関する取扱い
⑧預託金の管理方法等
⑨死後事務として提供されるサービスの内容
⑩寄附や遺贈に関する取扱方針
⑪個人情報の取扱方針と管理体制
⑫相談窓口の連絡先

出典:高齢者等終身サポート事業に関する事業者ガイドライン P9~11(太字筆者)

特に「⑦契約するサービスの解除方法・解約事由や契約変更や解約時の返金に関する取扱い」について、ガイドラインでは「解約等に関する取扱いについて、重要事項説明の際に書面を交付して説明することが特に望ましい」(P10)と指摘されています。

消費者庁では、身元保証サービスの契約を締結する事業者として特に注意するべきことを、チェックリストにまとめています。事業者の方は、ガイドラインとともに、チェックリストも確認しておく必要があるでしょう。

わかりやすい重要事項説明書を目指して

身元保証サービスの場合、依頼者のなかには、専門用語を難しく感じたり、字が見にくい方などもいることが考えられます。

そのため、重要事項説明書を作成するときは、介護サービスの重要事項説明書の作成方法が参考にするのがおすすめです。

例えば、兵庫県では、令和3年版の「重要事項説明書及び契約書のガイドライン」のなかで、次のように指摘しています。

1 記載における注意
文章は、高齢者に理解しやすいように、平易な文書で記載し、専門用語、外来語には解説を加えること。
淡色の用紙に文字サイズ 12 ポイント以上の濃色の文字で記載すること。その際、高齢者にとって明らかに識別できる色を用いること。
項目については、ゴシック体を用いる等強調すること。
2 パンフレット
パンフレット等を作成する際には、重要事項説明書及び契約書に記載された内容と異なる内容を記載しないこと。
なお、パンフレット等を用いて宣伝を行う場合には、できるだけ重要事項説明書を併せて交付し、利用者が事業者を選択する際の判断材料となるように留意すること。
重要事項説明書及び契約書にパンフレットの内容を準用する際には、その項目に準用するパンフレットの頁数を記載すること。
3 書面の事前交付
重要事項説明書及び契約書は、要求があれば、利用者の判断に供するため、事前に交付すること。
4 (略)
5 視覚障害者等への対応
視覚障害者に対しては、点字の利用や口頭での説明で十分な理解を得ること。聴覚視覚障害者に対しては、家族やボランティア団体等を通じて十分な理解を得ること。
6 契約時の家族等の立ち会い
重要事項説明及び契約時には、利用者の判断能力に疑問の余地がない場合を除き、家族(近親者)等が立ち会うこととすることが望ましい。

出典:重要事項説明書及び契約書のガイドライン(令和3年版)

まとめ

身元保証サービスを安全・安心に利用できるようにするには、利用者側も自衛策をもっていなければなりません。

消費者庁では、利用者向けに「「身元保証」や「お亡くなりになられた後」を支援するサービスの契約をお考えのみなさまへ」という、わかりやすいパンフレットを作成していますので、ぜひそちらを参考にしてください。

また、当事務所では、身元保証サービスについてのご相談におこたえしていますので、お気軽にお問い合わせください。

最後までお読みいただきありがとうございました!^ ^