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私にとっての「未来に残したい風景」:ワット・プーからの眺め

ラオス最南部のチャンパサック県には「ワット・プー遺跡群」という世界遺産があります。
2001年に世界文化遺産に登録されたもので、ラオスに3つある世界遺産のうち2番目に登録されました。
正式名称は「Vat Phou and Associated Ancient Settlements within the Champasak Cultural Landscape(チャンパサックの文化的景観にあるワット・プーとその関連古代遺跡群)」。

世界遺産のメインのサイトである「ワット・プー」は、私の住むパクセー市から南に約45km、車で約50分の場所にあります。
パクセー市からメコン川に沿って南下し、少し西側に入ったところで、チャンパサック県チャンパサック郡に位置しています。

私が初めてワット・プーに行ったのは、2001年4月。
まだ、世界遺産には登録される前。
当時は、ゲートや柵もなくて、チケットを売っている小屋みたなのがポツンとあるだけ。
地元のラオス人は出入り自由で、観光に来た外国人とかだけが、一応入場料を支払っていたけど、なんなら、どこからでも入れる感じでした。

当時は、遺跡の修復作業のための調査などは行われていたはずですが、本格的な修復作業はまだ行われておらず、本当に放置された遺跡のような感じで、足場も悪く、本殿のある山の中腹に向かう参道の両側に立っていたはずのリンガの石柱は、ほとんどが倒れていました。

ガイドの方に、遺跡の説明をしてもらったような記憶もあり、一通り、遺跡などを見ながら山を登り、見下ろすと、山から続く参道と、両側に作られた大きな池。
「この場所が栄えていた当時は、さぞかし立派な建造物群だったんだろう」と思ったことを覚えています。

その後、ツアーのガイドやお客様を連れて何度かワット・プーを訪れました。
その度に、チケット売り場がキレイになっていたり、お土産物屋や食べ物を売るスペースが増設されていたり、さらには、日本の援助で建設された博物館が出来ていたり。
行く度に立派になっていきました。

もちろん、遺跡の修復作業も進められていて、崩れた建物の一部が少しずつ復元され、参道のリンガも立て直され、歩きにくくなっている場所にはステップが作られ、見学もしやすくなっていきました。
チケット売り場から参道の手前までは、歩くと少し距離がありますが、電動カートのシャトルサービスもあり、どんどん観光地らしくなっていくなあと思っていました。

そして、まさか私自身がこのチャンパサック県に住むことになるとは想像もしていませんでしたが、2015年からチャンパサック県の県都パクセーに住むことに。

2016年、久しぶりに完全プライベートでワット・プーへ。

初めてワット・プーに行った当時は、メコン川の西側には車で行ける、よい道路がなかったので、パクセーからメコン川の東側を車で南下して、ワット・プーに近い船着き場から、車ごと筏でメコン川の西側の対岸に渡り、ワット・プーに行きました。
今では、メコン川の西側に舗装された道路ができて、メコン川をわざわざ対岸から渡ることなく、ワット・プーに行くことができるようになり、パクセーからの所要時間が大幅に短縮されました。

ワット・プーに着いたら、いつものように、両側にリンガが立ち並ぶ参道を歩いて、本殿を目指します。


参道のあと、本殿を目指す階段。両側にはラオスの国花「ドック・チャンパー(プルメリア)」の木が植えられていて、花が咲く時期に行くと、白いプルメリアの花が満開で、とても美しい。


本殿からさらに奥に行くと、ゾウやワニのモチーフの石や、聖水が湧き出る洞窟などがあります。

久しぶりに、お客様などと一緒ではなく、自分のペースでゆっくりと満喫して、さて山を下りようかと思って、眼下を見下ろした時の風景。

「なんて豊かな土地なんだろう」と思いました。
かつて、ここに栄えた王国があったことが、よく分かるなあ、と。


本殿などがある山の中腹から麓に下りる方向。参道に入るところ。


一面に広がる鮮やかな緑。
豊かな水。
真っ青な空。

私が行った時期が、ちょうど雨季だったので、緑の色が鮮やかで、水も豊富にあったためでもありますが、
「人間が生きていくのに必要なものが、ここには全て揃っている」
とさえ思いました。

実際、この地域は、古くから灌漑設備が整備されていることもあって、場所によっては、1年間で3回、お米を収穫することができます。
灌漑がなくても、2回は作れる。

1年を通して温暖な気候。(暑すぎることはありますが…)
絶えることのない水源。
雨季に川が溢れることがあっても、それによって、川の養分を田畑にもたらしてくれる。
それ以外に大きな自然災害は、ほとんどない。

ここはこんなにも豊かな土地だったんだと、改めて思いました。

ここで私が感じた「豊かさ」というのは、日本や他の先進国で使う「豊かさ」とは、少し意味が違うかもしれないけれど。
便利な生活、買いたいものを買いたい時にいつでも買える生活、物が溢れていて選び邦題の生活。
そういう生活とは、むしろ真逆のものかもしない。

でも、この土地に住んでいる人達の生活を知ったからこそ、ここは間違いなく「豊か」だ思うし、パクセーに住み始めたからこそ、改めて、この風景を「豊か」だと直感的に感じたのかもしれない。

以前はビエンチャンに住んでいたから、東南アジア最貧国だと言われようと、「世界で一番質素な首都だ」と言われようと(かなり失礼な表現だと思うけど…)、そこはやはり首都なので、自然に囲まれた生活ではなく、農業よりも行政やビジネスなどの世界で生きている人が多い環境でした。
休日に郊外の滝に行ったり、川沿いのレストランに行ったりしたとしても、それはありのままの自然ではなかったから、ここまでの圧倒的な自然を目の当たりにて、何か人間の本能のような部分で感動したのだと思う。

この豊かな緑の下には、そこに住む人の生活もあるし、外から来た人間が何かしら言うのはおこがましいのだけれど、純粋に、ただただ純粋に、
「この風景は、この風景のまま、これからもずっと残って欲しい」
と心から思った。

今度、チャンパサック県南部の開発もある程度は進むのだろうし、もしかしたら、将来、この風景の中に巨大な人工物が現れる日がいつか来るかもしれない。
でも、なんとなく、「ここは当分このままなんじゃないかな」と思ったりもする。
自分の願望も大いに入っているけれど…

少なくとも、初めて訪れた2001年の風景と、現在の2022年の風景は、そんなに変わっていないから、これからの20年も、大きく変わらないことを密かに願っています。

なにはともあれ、パクセーに住んでいる限り、これからも定期的にワット・プーに行くと思うし、身近な場所であり続けると思うので、今後も、私は、この景色を見る度に感動するのだろうと思います。

そして、この景色がこれからも変わらなくても、もしくは変わっていったとしても、私は変わらずに見守って行きたいと思っています。


(注):私がこれほどまでに感動したのは、おそらく、これまでの体験や背景があってのことなので、もしこれを読んで、大いなる期待してワット・プーに行かれる方がいらっしゃったとしても、私と同じ程、大げさに感動されないかもしれないので、あしからず、ご承知おき下さいませ(笑)

ワット・プー公式サイト:

場所はこちら ↓



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