父方のおじいちゃん
父方のおじいちゃんは、元関西電力の技術者で、私が物心つく頃は、まだ働いてたと思う。
姫路駅を降りて、みゆき通りにある喫茶店のパンを通勤の時に買っていた、と聞いたことがある。
おじいちゃんは、手先が器用で、大工仕事も得意で、盆栽とか木を植えることにも詳しくて、電気製品とかの修理も出来て、何でも自分でやってしまうし、出来てしまう、っていうイメージ。
小さい頃に作ってくれた、黄色い木のイス。
初めて犬を飼った時、犬小屋も作ってくれた。
小学校の時の工作の宿題とか、夏休みの自由研究とかも手伝ってくれた。
私が産まれた時に植えてくれた、庭の松の木。
接ぎ木とかも自分でやってて、庭には渋柿、甘柿、両方の木があって、毎年、実がなった。渋柿は、干し柿にしてた。
あと、食べられるものが生る木としては、桃、ビワ、姫リンゴ、グミの木なんかもあった。
お正月の前には、何軒分もの寄植えを作って、親戚なんかに配ってた。わざわざ、おじいちゃんに頼んでくる人もいた。
松ぼっくりで作った鶴とか、ちいさな灯籠とか、親子の亀とか、箱庭みたいで可愛くて、大好きだった。
おじいちゃんの家の玄関を入ってすぐ右の部屋は応接間で、ソファとか置いてあって、ちょっとした暖炉を模したようなデザインの棚があって。
そこは、ほぼ、おじいちゃんの部屋になってた。
そして、テレビが3台置いてあって。
1つは普通に大きなテレビ。
あと2つは、おじいちゃんが座ってる定位置の近くに置いてあって。小さめので、少し旧型だったのかも。
で、大きなテレビは、まあ普通に見てて。これが基本的にはメインで見たい番組なんだと思う。
小さなテレビのうち1台は、イヤフォンで片耳で音を聞きつつ、見て。
もう1台は、消音で画面だけが写ってる状態。
この小さい2台は、野球とかのスポーツだったり、囲碁とか将棋の番組だったりしてたと思う。
という感じで、3台同時にテレビを見ているおじいちゃんの姿を1番よく覚えてる。
おじいちゃんは、その当時の人にしては比較的背が高くて、170cm以上あって、シュッとしてて。
食事は、いつもおじいちゃんだけメニューが決まっていて、おかずは、白菜を茹でたものを小さく切って、かつお節と醤油をかけたもの。
それに、さつま揚げみたいな天ぷらを数切れとか、何か少し。
ご飯も白菜も、ちゃんと量を計ってた。
小さい頃は、おじいちゃんは白菜が好きで、好んで食べているんだと思っていたんだけど、実は糖尿だったらしく、自ら節制していたんだと、後で知った。
そういうキッチリした性格の人だったから、不摂生とかじゃなくて、体質だ
ったみたい。
ちなみに、かつお節は、おじいちゃんがカンナで削っていたから、いつもフレッシュで美味しかった。
当時は、かつお節って、みんな家で削ってるものだと思ってた。
最後に削れなくなった小さなかつお節をもらって、飴みたいに舐めてた。これも美味しかったけど、今思えば、贅沢だな。
甘い物を食べてるのは見たことがなくて、キライなんだと思っていたら、ホントは好きだったらしい。
これも、後で知った。
好きだったのは、焼き穴子。
姫路の山陽百貨店の地下の食品売り場のお店のが好きで、姫路に行くと、おじいちゃんのために、よく買って帰った。
あと、ウエガキの六甲花吹雪。あられ。
常備されてた気がする。
今となってみたら、元々好きだったのか、体調のことを考えて、食べられる物の中で、これを選んだのかは分からないけど。
だから、おじいちゃんが亡くなった後、おじいちゃんの好きだった田舎饅頭と六甲花吹雪を、仏壇によくお供えしてたな。
おじいちゃんは、昔ながらの黒い重たい自転車に乗って、毎日、うちの庭の手入れに来てた。
自転車の後ろには竹製のしっかりした四角いカゴが備え付けられていて、いろんな道具が入ってた。
小さい頃は、私もそのカゴに乗って、あちこち連れて行ってもらった。
おじいちゃん関係で記憶に残ってるのは、おじいちゃんの何かのお祝い(定年のお祝かな?でもそれだと年齢的に合わない気もする…)を、「中納言」でやった時の映像をよく覚えていて。
食前酒をみんな飲んでて、でも子供の自分はもちろん飲めなくて、でも味見させてもらった記憶。
あと、おじいちゃんは戦争に行っていて、アジアのどこかの国で従軍中に盲腸になって、麻酔なしで手術したって話。
おじいちゃん、すごいなあ、と子供心に思ったのと、こういう経験をしてきた上での、今の穏やかな、でも自分に厳しい感じのおじいちゃんなんだなあ、と後々思った。
私の記憶の中では、おじいちゃんについて、イヤな部分とかがホントに全くなくて。
なんでも出来て、自分を常に律していて、趣味も色々あって、色んなこと知ってて、なんでも出来て、穏やかだけど、アクティブな人。
両親とか親戚とか、若い時のおじいちゃんを知ってる人からすると、ちょっと違うイメージなのかもしれないけど。
私にとっては、今まで生きてきた中で、1番ちゃんとしてる人は、おじいちゃん。
もし、また会えるなら、大人になった私として、色々聞きてみたいことがいっぱいあるな。
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