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身体は予測を外されるのに弱い ~ 情報システムとしての人体①

前回書いたように、人間の身体は単なる物体ではなく、情報処理を行う生体です。
武術を科学的に研究したという本もいくつかありますが、たいていはちょっと食い足りない。重心の位置とか底面積とか加速度とか、単なる物体としてだけ研究している本が多いのです。

力学だけではわからない、情報システムとしての人体を武術の視点から書いてみます。

・行動には予測が欠かせない

私たちは、物の距離や重さを予測しながら動いています。
階段を登ったとき、階段が終わっているの気づかずに脚を出すとびっくりします。重いと思った荷物が軽かったときも驚きますね。

予測はもっとリアルタイムでも使われています。
人間が何かに反応して動きだすまでの時間は、最短でも0.3秒程度。
脳に信号が行き、判断して手足に信号を送るまでの時間です。
どんなに急いでも、私たちが何かに反応するのは0.3秒後。

そこで脳は、その時間差を予測で補って動いています。逆に言えば、0.3秒前の予測から外れた動きには、なかなか対応できません。

・小手返しにおける予測外し

もちろんフェイントなども予測外しの1つですが、今回は意外なところを書いてみます。

合気道などの基本技の1つが小手返し。相手の手首を外向きにねじるようにして倒す方法です。この技をただかけようとすると、抵抗する力とぶつかってうまくいきません。力の方向が予測されているので、正確な方向で対抗することができるからです。

なめらかな螺旋をつくるのは難しいですが、決まると気持ちいいほどキレイにかかります

大きめの円を描いて肘ごと巻き込むのも技がかかりやすい方法ですが、さらに円を螺旋にしてみます。
緩やかなカーブから急なカーブへと手の動くコースが変化するので、0.3秒後の位置は予想から微妙にズレることになりますね。たったこれだけのことで正確な抵抗がしにくくなり、技がかかりやすくなります。
上手く決まると、本当に軽々と転がって楽しいです。

小手返しを知っている方はお試しあれ。
人間の感覚はかなり微妙な情報を感じ取って反応しているのです。

・ちなみに

トップの絵は合気道の小手返し。
小手返しは、いろいろなやり方があります。絵のような方法のほか、右手を右手で持つやり方も。最初は相手の手を両手で包みこむように持つ方法が簡単です。

八起堂治療院ホームページ https://www.hakkidou.jp/


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