スポーツで言う「力を抜け」の、本当の意味
スポーツでも武道でも定番のアドバイスが、
「力を抜け」
ですね。
「そんなこと言っても、力抜いたら動けないだろ」
と言いたくなりますが、この「力を抜け」には、もう少し深い意味があります。
・筋肉には屈筋・伸筋がある
骨を動かすのは筋肉ですが、そのうちで伸ばす働きをする筋肉を伸筋、縮める働きをする筋肉を屈筋と呼んでいます。
例を挙げれば、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)はヒザを伸ばすための伸筋。
ボディビルダーが作ってみせる力こぶ(上腕二頭筋)は、腕を曲げる屈筋です。
この2種類の筋肉は逆の働きをしますので、手足を伸ばすとき伸筋だけを使い、曲げるとき屈筋だけを使えば、最大の力が出せるはずです。
・主張する屈筋と、無口な伸筋
伸筋と屈筋は働きの他に、大きな違いが一つあります。
腕を曲げて、力こぶを作ってみて下さい。
「パワー!」的な力の実感があるはず。
次に、立ってみましょう。
太ももの前側は体重を支えるために頑張っているはずですが、力が入っている実感はありますか?
あまりないですよね。
力が入っているという感覚は屈筋のもの。伸筋ではあまり感じないのです。
伸筋は重力に対抗するために、いつも働いています。立っていたり、歩いていたりする間、ずっと力の感覚があると邪魔なので、よほど強くない限り感じないようになっています。
つまり力の実感があるのは、屈筋が働いているサインです。
・力を感じないように力を入れる
敏捷に動こう、頑張ろうという時、私たちは力を入れようとします。物理的には正しいのですが、先ほど書いたように、力を入れている実感は屈筋にあります。「力を入れよう」と考えた時点で、もう屈筋を使ってしまっているのです。
スポーツでは伸筋主体の場面が多いもの。押そう、蹴り出そうという伸筋主役の場面で、屈筋が働いていれば、かえって動きを邪魔してしまいます。
つまり「力を抜け」というのは、屈筋を使うときの力の実感を、感じないようにしろということ。軽く、軽く、なるべく力の実感が無いように動ければ、いちばん効率よく動けることになります。
といっても、頑張ろうとするときに力を入れるのは本能的なもの。
その本能を止めるには「軽く、軽く」と意識しながら繰り返し練習して、感覚を身につけるしかありません。
結局は練習が必要だということで。
あんまり役に立たない話でしたかね?