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二宮翁夜話 巻之一、第四節 推譲は、人に譲り、未来に譲る

自分の勉強も兼ねて、二宮翁夜話について書いています。なんか交互になってますが、原則は不定期投稿。
ニワカのやることなので、読み間違いなどありましたら、ご指摘いただけると助かります。

・抄訳

人の道は、人工物である。自然に任せて成り立つ天道とは異なり、人が努力しつづけなければ成り立たないものだ。

もしも人が自然の欲のままに動けば、すぐにぶつかってしまうだろう。思ったままを口にしてしまえば、常に争いが絶えない。
人の道は、欲を抑え、感情を制し、努力して努力して、ようやく成り立つのである。

美食美服を欲しがる自然の欲を抑え、楽や贅沢をしたいと思う自然の感情を制して、自分の分度(自分にふさわしい分量)からさらに支出を減らして、残ったものを他人に譲り、未来のために譲る。
それこそが人道なのである。

正しい全訳が見たい方は、類書を参照のこと

・感想

前回に引き続き、自動的に成り立つ天道と、人間の努力が無いと成り立たない人道を解説。
そのあと、人道のうち、推譲と言われる概念を解説しています。

推譲は、人に譲ること。自分のものを、人に譲り、未来に譲る。
お金に関して言えば、倹約して、残した分を他人や未来の人のために使うのが推譲です。

ただし寄付のように、ただ与えることを意味しません。
もちろん困窮している人は救いますが、主な目的は社会全体を活性化すること。イメージとしてはむしろ投資に近い。

尊徳は再建策を考えた上で金を貸し、その金で新田が開発されたり産業が盛んになると、返してもらいます。戻ってきた分をまた別の再建に貸付けて、産業を大きくする。その繰り返しで、みんなを豊かにする。

今でいうと起業支援融資のようなものでしょうか。

資本主義の祖父と言われることもある二宮尊徳。
資本主義といえば、富の集中で貧富の差が大きくなると言われることもあります。それは多分「天地自然の理」に任せきった資本主義なのでしょう。

そこで人道が入ることで、みんなが豊かになる。
道徳のある資本主義という考えは、現代にも十分に通用するのではないでしょうか。

・原文

翁曰(いわく)、夫(それ)人道は人造なり、されば自然に行はるゝ処の天理とは格別なり、 天理とは、春は生じ秋は枯れ、 火は燥(カワ)けるに付(ツキ)、 水は卑(ヒキヽ)に流る、昼夜運動して万古易(カハ)らざる是なり、人道は日々夜々人力を尽し、保護(ホウゴ)して成る、故に天道の自然に任すれば、忽に廃(スタ)れて行はれず、故に人道は、情欲の侭(マヽ)にする時は、立(たた)ざるなり、譬(タトヘ)ば漫々たる海上道なきが如きも、船道(フナミチ)を定め是によらざれば、 岩にふるゝ也、 道路も同じく、己(オノ)が思ふ侭にゆく時は突当り、言語(ゲンギヨ)も同じく、思ふまゝに言葉を発する時は忽(タチマチ)争(アラソヒ)を生ずる也、是に仍(ヨリ)て人道は、欲を押へ情を制し勤め々々て成る物なり、夫(それ)美食美服を欲するは天性の自然、是をため是を忍びて家産の分内(ブンナイ)に随はしむ、 身体(シンタイ)の安逸奢侈を願ふも又同じ、 好む処の酒を扣(ひか)へ、安逸を戒め、欲する処の美食美服を押へ、分限の内を省(ハブイ)て有余を生じ、他に譲り向来に譲るべし、是を人道といふなり

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