クジャク・シュモクバエなど、性淘汰における一見不可解な進化は、判断の単純化によって起きているのではないか?
シュモクバエというハエがいます。まずは姿を見てください
頭から左右に長く出ているのが、目玉。シュモクバエは、左右の目がとんでもなく離れた昆虫なのです。
シュモクバエのオスが出会って威嚇し合うと、目の幅が狭いほうが逃げてしまいます。メスを巡る争いでも、目の幅が広いほうが有利。
何世代にも渡って、幅が広いオスが子孫を残してきたので、どんどん目の間隔が広くなっていったわけです。
・なぜこんな形に進化するのか
シュモクバエの目とか、クジャクの羽とか、極楽鳥の色とか、
「生きるのに役に立たない資質をもったオスが子孫を残す」
という現象については、ランナウェイ仮説とか、ハンディキャップ仮説などがあります。
しかし素人の私としては、
「メスがたまたま好む性質が拡大した」
というランナウェイ仮説も、
「あえて不利な性質を持つことで、能力の優秀性をアピールする」
というハンディキャップ仮説もしっくりきません。
とくにハンディキャップ仮説は、不利な性質を持つことで優秀性が打ち消される矛盾があります。人間で言うと
「お酒とギャンブルでお金を浪費してる人、収入が多いのね、ステキ」
みたいな話。そうはならんやろ。
・「物差しが決まると、暴走が始まる」仮説
さて、ここからは素人の想像です。
たぶんシュモクバエも、最初は相手の身体の大きさを判断して、自分より大きいと判断したら逃げていたはず。ただ相手の大きさを測るには基準が必要ですね。しかも単純なもの。
相手の大きさを測る時に、前から後ろからしっかり眺めて、大きさを確認するとは思えないんですよ。
たとえば、山でクマと出会った時の対処法の一つは、両手を上げて身体を大きく見せることだそうです。荷物や傘などを持っていたら、それを差し上げてさらに大きく見せると効果的。
クマという比較的高度な脳を持っている生き物ですら、背の高さという単純な基準で、相手の大きさを判定していることになります。
で、シュモクバエ。
彼らが、正面から見える相手の横幅 → 目の幅を基準に、大きさを見ていたらどうなるでしょうか。
目の幅が広いだけで、身体が大きいと判定され、有利になりますね。
それが何代もつづくと、本来の意味である身体の大きさは関係がなくなって、目の幅だけがどんどん大きくなっていくはず。
スポーツで、ルールに特化したプレイスタイルの選手が勝ち残るようなものですね。
・他の生き物も同様では?
他の生き物でも、正面からみた面積や、身体の長さを基準にして、強く丈夫そうなオスを選んだ結果が、現在の姿ではないでしょうか。
孔雀の羽
⇒ 正面から見た面積が基準なら、羽根で大きさを稼ぐことができる。
尾が長い鳥
⇒ 体長が基準なら、羽根だけでも長い方が有利
鮮やかな色
⇒ 鳥の目で見た膨張色かも。もしそうなら、実際より大きく見えるはず
(膨張色は、実際よりも大きく見える色のこと。人間だと、白い図形は同じ大きさの黒の図形より大きく見える)
どれも、大きさを示す基準となる「ものさし」が決定されたことで、実際の大きさから離れて特化していったと思うのですが、どうでしょうか?
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