かくてもあられけるよ、とあはれに見たくなる生き物たち

生物は生き残るために進化しますが、その方向は人間にとって理解しやすいとは限りません。時には、なぜそんなところに行き着いてしまったかと思うような生き物もいます。
先日から気になっている生き物を3つほど。

・アリノタカラとミツバアリ

NHKの「超・進化論 第2集 愛しき昆虫たち」で紹介されていました。
アリノタカラはミツバアリの巣の中にしか存在しない昆虫。アブラムシのように、植物の根から樹液を吸って余った糖分を分泌します。自分では歩くことすらできず、ひたすらミツバアリに世話される生活。

一方のミツバアリは食べ物を探しに出ることはなく、自分たちが世話したアリノタカラが出す糖分だけ食べて生きています。彼(彼女?)らがいなくなったら、餓死するしかありません。

どちらも完全に特化してしまっていて、相手がいなくなったら自分も滅ぶところまできてしまいました(絶対共生関係といいます)。

新しい女王アリが巣を出てゆく時には、アリノタカラを一匹だけ口に咥えていきます(動画で、咥えられている白くて丸いのがアリノタカラ)。アリノタカラは単性生殖して、女王の子孫を養うのです。
NHKで見た二匹の旅立ちの映像は、なかなかに感動的でした。

・ツチハンミョウ

これは、北杜夫の「どくとるマンボウ昆虫記」で知りました。
ハンミョウとよく似た(分類上は違う仲間)姿をしていますが、羽根もなく、動きも鈍い昆虫です。身を守るのは毒だけ。

幼虫はハナバチの巣の中で、溜め込まれた花粉や蜜を食べて育ちます。ただ、ハナバチの巣に行くまでの方法が無茶なんですよね。

卵から孵化した幼虫は、近くの植物に登って、ハナバチのメスを待ちます。
ここからがギャンブル。
①登った植物に花があればOK。花がない草に登ったら死ぬ。
②花にきた昆虫に取り付く。ハナバチならOK。他の虫なら死ぬ。
③ハナバチがオスなら交尾の時にメスに乗り移るが、移れなければ死ぬ。
④メスのハナバチに取り付けたらOK。唯一の生き残りコース。

定められたコースを少しでも外れたら即死するギャンブルを、生まれたその日に行うのです。一度に数千個の卵を生むという事実が、生き残りの難しさを表しています。

・ケイブ・クレイフィッシュ

アメリカの洞窟に住む白いザリガニです。
天敵やライバルの少ないところで生きるため、一生を光の当たらない洞窟で暮らすことを選択しました。

餌が少ない場所なので、極端にエネルギー消費を減らしています。
①視覚はいらないので省略。
②身体の色もいらないので省略。
③なるべく成長しない。

そうして少ないエサで暮らすために、10センチほどの成体になるまで100年かかるという方向に進化しました。
最大に長生きした個体は175歳。生まれたのは江戸時代ですね。動画に出てくる個体でも、撮影者より年上です。

・生き物の多様性はスゴイ

こうして書いていると、学生時代に教科書で読んだ「かくてもあられけるよ」という言葉を思い出します。
「こんなふうにしても生きられるものなんだ」

わずかでも利用できる資源があれば入っていくのが生物。進化の試行錯誤を延々と繰り返して適応してゆきます。

生物の絶滅が心配されるこの頃ですが、生物全てが滅ぶことは無いでしょう。どんな状況にも適応する生き物が出てくるはずです。
人類はどこまでついていけるでしょうか。

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