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おしゃれワンプレートランチの罠
主食、主菜、副菜の全てを、大きなひと皿に盛り付けた「ワンプレートランチ」に心惹かれる日が、ときどきある。
彩り良く盛り付けられたプレートは、「いろんな料理を少しずつちょこちょこ食べたい」という乙女心を満たすのだろう。店内にいる女性客はみんな、日替わりワンプレートランチを食べている。
日替わりの他には、その店の定番メニューらしきABCの3種類のランチがあった。
Aが魚のフライになんかカタカナのオシャレな名前のソースを添えてあるもの、Bがチキンのソテーにキノコクリームがかかったやつ、Cは豚バラ肉をミルフィーユ仕立てにして煮込んだもの。
一瞬Bに心が動いたけど、日替わりワンプレートをオーダーした。隣の席に座っている人が食べている、彩り豊かなその皿に心を奪われたのだ。
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料理を待つ間、ちびちびとお冷やを飲む。うっすらレモンの味がする。おしゃれなカフェはどうしてお水にレモンを入れるのだろう。おしゃれだからだろうか。レモンって、おしゃれなのだろうか?
前に行ったおしゃれなカフェは、レモンだけでなくミントも入っていた気がする。やはりそれも、おしゃれだからなのだろうか。レモンとハーブは確かになんだかおしゃれな気がするが、お冷やはただの水でいいと思う私はきっと、おしゃれカフェに行くべきではないのだろう。
ごめんなさい、でももう来ちゃった。
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そして運ばれてきたおしゃれワンプレートランチ。
サニーレタスのサラダ、キャロットラペ、春菊とタコの何か、れんこん、豚肉の味噌焼き。プラス150円でスープも付けてもらった。ほうれん草と卵のスープだった。
どれもこれも美味しかった。
シャキシャキしていて美味しかった。
シャキシャキシャキシャキと自分の咀嚼音がやたらうるさくて、「あ、よく見るとほぼ野菜だけじゃねコレ?」という事実に気づいた。3〜4切れのタコの足と、3枚の小さな豚肉以外は全て野菜なワンプレート。
食べてる間じゅう、シャキシャキシャキシャキうるさくて、笑えてきたけど我慢した。ほとんど野菜のプレートに1,400円か…いやでも野菜の価格が高騰している今、たくさんの野菜料理を提供してくれていることに感謝せねば。
シャキシャキと食べ進めながら、貴重な3枚の豚肉をどのタイミングで口に運ぶべきかを考える。とりあえずひと口食べてみると、これがめちゃくちゃうまい。
味噌の風味が香り、しっとりと柔らかい。
思わずご飯が進む。
そうか、ご飯があったんだ。
シャキシャキ野菜ばっかり食べていたから全然ご飯が進まなかったんだ。そういえば先日聴いていたポッドキャストで「れんこんでご飯が食べられるか!」って怒っている人がいたな、と思い出した。
そのときは、「別にれんこんでご飯いけるっしょ」と思っていたが、いけなかった。シャキシャキのれんこんだけを食べても「ご飯が欲しいーー」とはならない。キャロットラペなんかは最たるものだ。あれはワインしか進まないと思う。異論は認める。
さて、ワンプレートの中心に盛られた紫色のおしゃれなご飯を、小さな豚肉3枚で仕留めなければならない。小さな豚肉だが、ひと口では行かず半分だけかじる。そこでご飯をもりっと口に入れる。うまい。
作戦は決まった。
とりあえずシャキシャキ野菜陣を先に平らげて、残りの豚肉を半分かじってご飯をもりっと。それで行こう。でも待てよ、最後にお肉だけ残していると「あの人、お肉をあんなに大事そうに最後まで取っておいてるわ…」と思われないだろうか。
いや、誰もお前の食べ方なんて見てねえよ。
頭の中のもう1人の私がツッコんでくれた。ありがとう。そうだよ誰も私なんて見ていない。作戦通り、ベジファーストでスープと野菜を平らげてから、豚肉で紫色のご飯を頬張ってワンプレートを食べ終えた。
食後にお願いします、と頼んでいたはずのホットコーヒーが待てど暮らせど出てこないので(皿を下げられてから10分待った)店員さんに手を挙げて、「食後のコーヒーがまだ出てきておりません…」と伝えると、1分で出てきた。
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機械の音がしていたので、機械がいれてくれたのであろうコーヒーはとても美味しかった。カップがサラサラしていて珪藻土のような感じで、何焼きだろうかと気になったが聞けなかった。
食べ終わったらコーヒーを飲みながら読書でもするつもりだったが、気がつくと店内の客は私1人だったし、店員さんはキッチンで談笑しながら片付けに徹しているし、なんか気まずかったので会計して店を出た。
家に帰ったら不思議なことにお腹が空いていた。冷蔵庫を開けたら、朝作ったゆで卵があったので迷わず手に取る。
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ビタミンと食物繊維はたっぷり摂れただろうけど、そういえばタンパク質が足りないワンプレートだったなと思いながら、スパイスソルトをかけたゆで卵を食べた。
食べながら、晩ご飯は肉にしようと決心した。
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