人よりちょっと顔が良かった。
「次は顔以外で選ぶよ。」
彼氏に言われた。正直傷ついた。
やっぱり顔だったじゃんって。
どーせ、この顔に揺らいだだけじゃんって。
またそのパターンじゃんって。
振られたのは、きっと人生で3回。
多分1番最初の失恋は、小学生のとき。学年で1番頭が良くて好きだった幼馴染に「お前顔だけはいいもんな」って言われたとき。今でも夢に見るくらいのトラウマだ。その時のことはよく覚えてる。自転車を押しながらその子の家まで行く道中、背中越しに言われたから、相手の顔は見えなかった。当時は今ほど可愛くはなかったのに、そう言われたから、きっと傷ついたんだと思う。このレベルなのに顔だけが取り柄なのかって。
2番目の失恋は、他校の生徒会長だった。付き合ったとかではないけど、何回かデートくらいはした。「なんか思ってたのと違った。」それが性格なことなのか、はたまた価値観のことなのかはわからないけど、たいしてお互い知らなかったのに向こうからのアタックだったから、結局は顔だったんだと思う。
んで、3番目が年上の自分より偏差値がいい学部に通っている若干高学歴でこれ。「次は顔以外で選ぶよ。」ほんとにひでぇ人生だよ。「条件で括ってちゃんと選ぶ。」そんなに悪い彼女だったかな。努力したのになぁ。とか。まだ付き合ってはいるけど、“次”の話とかされてるし、正直もう将来がないのは明確。こっちだって結婚は願い下げだ。専業主婦になんてなるつもりはないけど、もし仮に収入が彼より下だった時を考えると何を言われるかわからない。言われたから、野菜の切り方も調べたし、健康的な食生活だって心がけたし、メイクも服装も変えたのに。芸人とアイドルの追っかけだって、バレないようにしてた。私の方から、強要なんて1つもしてない。好かれたくて、こんなに頑張ってたのに。
だから、ずーっとコンプレックスなの、この顔が。
でもね、結局は私も一緒。顔だけを褒める奴らと何も変わらない。だって、“学年で1番頭がいい”とか“生徒会長”とか、“年上の高学歴”とか。明らかに自分より上位の存在であることが絶対条件にある。私はそこ以外に条件が一切ないの。だから、知能や権力などが自分よりも優れている人間にしか興味が湧かない。その条件でしか他人のことを好きになれない。
そらモラハラばっかり引いちゃうよ。だって、私が常に下にいるんだもん。で、付き合ったら、男全部切って自分としか連絡取らないんだよ?顔がいいのに。今まで別にモテてこなかった男ばっかりだから、調子に乗せちゃうに決まってるじゃん。それが嫌で、こっちから切ったことも何度かあるし。
でも今回は我慢してたはずなんだよ。結婚に対しての焦りがあったから。時間を極力無駄にしたくないから。それでこれだもんな。
だから子供にはおんなじ思いはさせたくないけど、可愛い子供じゃないと愛せないのも自分が一番よく知ってる。怖いなぁ、あたしなんかが産むべきじゃないんだよ。ルッキズムに支配されて生きてきて、コンプレックスであり唯一の誇りであるこの見た目が、どんどん嫌いになっていく。
でもコンカフェ嬢は天職だったんだ。どんな性格でも、付き合うわけじゃないから許容してもらえる。お客さんのこともちょっと下に見れるから、何言われてもムカつかない。で、そこそこ稼げる。自尊心が保たれる。一定のリスクを負った仕事だけど、程よいバランスだと思う。
でも、今よりブスに生まれてたら早いとこ死んでるだろうから、仕方ないよ。これは背負って生きてくしかない業だと思ってる。私って老いちゃったらどうなるんだろう。
どうせ自分のことすら愛せなくなるなら、綺麗なうちに終わらせたほうがいいのかもなとか、そんな勇気もないくせに思ったりして。