惚気と性的指向と『窓辺にて』。
彼氏ができたところで、性的指向が変わるわけもなく。自分ではアロマンティックと思っていたが、ノンセクシュアルであることが判明。性的指向の流動性の中、動いたのか、はたまた元々なのかはわからない。
彼が理想中の理想であることは確かなのだ。黒髪ストレート、オフメガネ、the・大学生。
恋愛感情は薄っすらとはある。(だから、“ノンセクシュアル”を名乗っている。)しかし、若干スキンシップが辛い。手を繋ぐくらいはなんとか耐えられるがハグからがどうしても両親を彷彿とさせてしまう。もともと、人よりも感情が発現しづらく、例に漏れず恋愛感情も昔から薄かった。修学旅行の自分に振られる恋バナ(人の話は楽しく聞ける)が憂鬱だったし、性行為への嫌悪感も他人より大きい。ただ、大学生のカップル。プラトニックでいられるほど健全ではないのも分かっている。女子校出身だからというのを盾にするのもいつまで続けられるかわからない。
付き合った日に見た映画「窓辺にて」。言わずとしれた今泉力哉監督の最新作。彼に映画に誘われて、見たい映画を問われた際、なにも考えずただ本当に見たかったこの映画を答えてしまった。ざっくり話すと主人公は本編では言及されていないが、「アロマンティック」であると思われる。他者に対する恋愛感情が湧かない。妻が浮気をしていても、怒りの感情も悲しみの感情も湧かない。それを周りの人間からおかしいと責められ、自分の現状に向き合っていく話。でも、彼の気持ちが私にはよくわかった。多分、恋愛感情のある人にとっては、かなり理解に時間を要する問題だと思う。隣で観てた彼もよく分かっていなかったようだし。
多分どこかで、私たちにもいつか同じことが起こるんだと思う。好きな気持ちに嘘はないけれど、それが確実に恋愛感情であると言い切れることは多分一生ない。恋愛感情が湧かないから浮気もしないけど、ただただ時間が流れるのを待ってるだけ。別れようと言われればそれまでで、特に抵抗もすることなく、受け入れてしまうんだと思う。きっとBGMは「melt bitter」なんだろうな。
あまり、嫉妬心がわからないのだ。好きだから付き合ったのか、付き合えそうだったから好きになったのか。きっと私は人と付き合うのに向いていない。
私の顔が良くなければ、こんなこと思わなかったかもしれない。いろんな人が寄ってきて、私を見定める。大学に入って、そこそこデートにも誘われた。男性を加点方式で見ることができない私は、消去法的に今の彼を選んだ。目が大きくなくて、色白で、髪を染めてなくて、服装がシンプルで、変なアクセサリーをつけてないところが良かった。あと、なによりデートが楽しかった。付き合う前の家の距離感はかなり居心地良かった。ただ、付き合った後の家でのふたりきり距離感が私はどうも苦手なようだ。あと、LINEの返信も。
彼氏はものすごく私に甘い。「可愛い」「ほんとに俺の彼女?」「なんで?」「俺でいいの?」「どこが好き?」それはもうしつこいと思うほどに。彼は私の顔が好きらしい。特に右目と前髪。私も私の顔が好きで、特に右目が好きだから、完全なる同担。
彼が一旦、落ち着くのを待ってみる。多分今の私たちは側から見れば、とんでもないバカップルだと思う。彼は私の家の前で、帰りたくないと駄々をこねる。「多分引いてるよね、ちょっとだけ我慢して。多分時間が経てば落ち着くから。」って。正直かなり意外だった。付き合う前はかなり紳士ぶってたから。いや、そうでもないか。いつも「11時半までには帰すから」と言いながら、付き合った日以外は2時過ぎ解散当たり前。今日は日を跨ぐ前に帰してくれるだろうか。いや、明日は休みだからってなんだかんだ4時までコースだろうな。カップルってもうちょっと友達みたいな距離感でいられると思ってたんだけどな。
まぁ、飽きられるまでの可愛い彼女の役はちゃんと引き受けたからさ、「本当に好き?」とか「どこが好き?」とか聞かないで。