夢やぶれて

私はミュージカルが好きだ。
いつからだろう。ミュージカルに恋して惹かれたのは。

小学校低学年の時
兄の同級生のお姉さんが子供市民ミュージカルに出演していた。
市民なら誰でも参加できたような気がする。
なんか劇団四季の人が教えてたり、振り返ってみれば中々レベルの高い市民ミュージカルだった。
年に一回公演があり、お姉さんは毎年主役だったり主役のお姉さん役だったり敵役だったりメインどころを演じでいた。とても歌が上手かった。
母とお姉さんのお母様が仲がよく、私は観劇に連れられていた。
初めて見た時、普段仲良く遊んでもらっているお姉さんが1人で歌っている姿をみて、びっくりして感動したのを今も覚えている。自分もやりたい!ってすぐに母に伝えた。

母はすぐに辞めるでしょって言って習わせてはくれなかったけれど、お姉さんの公演は全部連れて行ってくれた。毎年公演が楽しみだった。


小中高と一貫の女子校に通っていた。
所謂お嬢様学校と呼ばれる女子校。周りはみんなお家柄がよく、なんか運がよく偶然入れてしまってサラリーマン家庭の私は物凄く浮いていた。
絶対附属の中学には上がらないと決めていた時に中高の文化祭があった。
そこでミュージカル部に出会ってしまった。
しかも女子校だから男役を女性が演じてる。
かっこよかった。きらきらしていた。

市民ミュージカルは出来なかったけどミュージカル部ならミュージカルができるかもしれない。
私はミュージカル部に入るためだけに附属に上がった。

所謂大学デビューならぬ中学デビューだ。
小学校時代私は図書室に引きこもり、担任からも存在を忘れらるぐらい無だった。目立つことはしなかった。

ミュージカル部は学校の頂点だった。人数もどの部活より多いしミュージカルの先輩達は学校を仕切っていたし、カッコいい男役の先輩は違う部活でもみんな知っていた。
そこに私は飛び込んだ。

ミュージカル部への想いを書くと様々な気持ちが溢れてしまう。すごく楽しかったし、とても辛かった。まるで、ほろ苦い珈琲。でもすこし甘い。そんな感じ。

勇気を出して飛び込んだけれど、私には才能がなかったのだ。努力しても上は果てしなく後輩に抜かされていく。

舞台に出ている時間より裏方にいた時間の方が長かった。
私の居場所は舞台上手のサイド上のライトだった。
たまに下手にも手伝いにいった。
ライトにもランキングがあってライトの花形は調光室のスポットライト。通称デカスポ。
デカスポは主役の2人を照らす。私はサイドから主役じゃない歌のソロを歌う子だったりを照らしていた。ライトですら脇役だった。



私は舞台で輝く光にはなれなかった。
引退公演は引退する子達はメインの役柄なのだが私はその中でも一番下で、最後もほとんど上手のサイドにいた。



同級生のセリフ
「愛しています。あの輝く星に誓って」
私はそれをサイドの上から照らしていた。
同級生は私が照らしているライト、星に向かって、そして私に目を合わせながら愛を誓った。



観客はみんな同級生2人をみている。
輝いていた。そんな2人を私は照らしていた。
多分、いやそこで私の夢はやぶれたのだ。



自分も輝ける人になりたい、きらきらしたい。



現実は甘くない。才能があって努力を重ねる人の前になんて立てるわけがないのだ。


ミュージカルに恋をした。初恋だった。

よく聞く言葉。


初恋は叶わない。

その言葉どおり、私の10年間の初恋は18歳の春に終わりを告げた。


でもやっぱりミュージカルが好きなんだと思う。
だから舞台に足を運ぶ。そして叶えられなかった初恋を思い出しほろ苦い気持ちになるのだ。


夢やぶれて
私の好きなミュージカルLes Misérables(レミゼラブル)の中の曲。

夢を見ていたわ 望み高く生きて 愛がすべてだと
神は許し給うと 若く勇気溢れ 夢は輝いてた 自由にはばたき 歓び追いかけた


夢やぶれた私はきっとこれからも初恋を思い出し、愛おしく思うのだろう。




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