#24 Johannesburg, South Africa
たった35年前まで人種隔離政策(アパルトヘイト)をしていた世界最恐都市ヨハネスブルグ。現地では「Joburg」とか「Jozi」とか言わている。
南アはアフリカ大陸においてはナイジェリアと並んで経済的に豊かな都市にもかかわらず、人口の80%以上を占める黒人の失業率は40%。
豊かな国故にマラウイ、モザンビーク、ジンバブエからの出稼ぎも多いが、南アの人たちは出稼ぎ先がないから腹いせで外国人排除運動なども行われて、負のスパイラルだという。
ヨハネスで働く友人の同僚(マラウイ人)の息子はマラウイから汽車で南アフリカに向かう途中、汽車の窓から投げ捨てられて殺されてしまった、という日本にいたら絶対に耳にすることのないような話がわりと身近にあったりするようだ。
その友人宅のディストリクトの目の前でも自分が訪れる1週間前に発砲事件があったというから(実際に車の窓の破片が道端に散らばっていた)、それなりに旅慣れているとはいえ、さすがに今回ばかりは中々身を引き締める必要があった。
そんな状況もあり、事前にいくつかのサイトをチェックしたり、地球の歩き方を見たりしていても、二言目には「気をつけろ」とのこと。ただひたすらに「気をつけろ」。
極力時計はつけない、むやみにスマホは外に出さない、肩掛けバッグNG。
友人曰く「常に警戒している風でいろ。襲ってくる人も、むやみに人を襲うわけでは無い。極力争いたくないから、不用心の人を襲うのだ」と。そりゃそうだ。
最低限の事をわきまえ、安全な場所を選びさえすれば、問題なく過ごすことができる。今回の滞在先であるサントン辺りは完全なる都会で、欧米諸国やシンガポール、上海などの都心部と雰囲気は変わらない。
ただし、徒歩移動は基本NGで、建物から建物への移動は徒歩5分の場所でもUber。Uberはすぐにつかまるので本当に便利だった。そしてUberのドライバーの多くはマラウイ人やジンバブエ人だったが、外国人排除運動があるので普段は自分たちがどこの出身かはあまり口外したくないらしい。
そんな中現地ガイドに案内してもらった、ヨハネスブルグの中でも特別治安が悪いHillbrowを車で通過した。目の前に広がる光景は、バットマンの中で描かれるゴッサムシティのそれだった。
一人では絶対に近づきたくないな、と思わせる雰囲気がそこにはあった。車から降ろされてそこに取り残された瞬間、身ぐるみはがされる気がした。村上春樹作品の『ねじまき鳥クロニクル』に出てくるモンゴル人の挿話を思い出した。
Hillbrowの後はアパルトヘイトミュージアムに行った。アパルトヘイトとネルソン・マンデラは切っても切れない関係なので、マンデラミュージアムも兼ねていた。博物館というよりは美術館のようで、内容はヘビーだが視覚的にはおもしろいつくりだった。
ミュージアムから次の場所に移動する際、イニエスタが決勝ゴールを決めたW杯2010の決勝の会場を目の前で見た時にはわりと感動した。
最後に到着した、ヨハネス最大のタウンシップであるSOWETOは貧困地区ではあるもののマラウイのリロングウェの街並みとそんなに変わらない感じがした。マラウイは世界最貧国だからそりゃそうか、と妙に納得した。数年前に初めて行ったアフリカの国がマラウイだったりザンビアだったため、色んな物差しが狂っているのかもしれない。
そして南アフリカといえば言い方は悪いが猫も杓子も”ネルソン・マンデラ”という印象を受けた。世界中探しても、ここまで英雄扱いされ、ありとあらゆる人々からリスペクトされている指導者はいないのではないか、と思ってしまうほど本当にネルソン・マンデラでいっぱいだった。
最終日に行ったThe Neighbourgoods Market, Johannesburg(ネイバーグッズマーケット)は素晴らしいコミュニティプラットフォームだと思った。使われていないビルの2Fと3Fが居抜きになっており、毎週土曜日にマーケットが開かれる。ローカルのフード、バー、カフェ、ファッションアイテム、民芸品、アート、音楽などがぎゅっと詰まっており、ローカルと観光客で賑わっていた。
あまり日本では見られないがどういう仕組みでなりたっているのか気になる…。
ちなみに、南ア滞在中、食事はどこも美味しかった。現地の人から見れば高級店なのだろう、という雰囲気のレストランばかり行ったからかもしれないが、それでも熟成肉のステーキが500g食べても日本円にして2000円程度なので本当に贅沢だったと思う。ビールはpintで250円くらいだし。
just for funでまさかアフリカ大陸に二度来る人生になるとは想像してなかった。
ただ、一度来てしまえば心理的距離というものはぐっと縮まる。
いつも思うが、知っていることと実際に見て体験するのでは、経験値に大きな差が出る。ただ、気を付けなければならないのは、自分が体験したことがすべてではないということだ。たしかにゼロかイチかで大きな差があるが、イチはあくまでイチでしかなくまだ点だ。線にもなってないし、面にもなっていない。話が逸れそうなのでこの話はここまで。
とりあえず、一度体験することによる心理的距離が縮まる、この感覚が何事においても大事なんだろうな。
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