ホラーがダメな僕でも映画『来る』が観れた理由
「葉加瀬くん、『来る』ってホラー映画知ってる?」
耳をつんざくようなクマゼミの大合唱(たぶんクマゼミは陽キャ)のなか、この世にたった3人しかいない僕の友人の一人からLINEが来た。
いやいや、この人は何を言っているのだろう?
僕たちは大学からの付き合いで、人生の中で最も甘酸っぱく『夢と希望とイヤンアハン』が大挙して押し寄せてくる青春時代にほぼ毎日顔を合わせ、『愚痴と失望とイヤンアハンの存在否定』などについて朝まで生テレビしていた仲だ。(田原総一朗も真っ青である、知らんけど)
お互いの恋愛遍歴や趣味趣向、持病に性癖、はては前世まで、まるっと全部お見通しの間柄である。
その彼が、この世で一番ジャパニーズホラーを嫌う僕に、
『来る』ってホラー映画知ってる?
だと?
暑さで気でも狂ったか。
「知らん。てかバイオハザード1って何時間でクリアできるか知ってる?」
と返信。
数秒後、貧乏ゆすりをするスマホ。
「ぜったい葉加瀬くんでも楽しめるから!アマプラで観れるから急いで観て!」
とのこと。
バイオの話題が闇に葬られてしまったことはこの際どうでもいいとして、
ホラー映画など「元カノの結婚写真」くらい見たくない。
とりあえず既読スルースキルを発動し、Twitterを開く。(注 仕事中)
驚いた。
“『来る』がアマプラで観れるぞ!”
“『来る』が来た!”
”8ヶ月で50kgのダイエットに成功しました!努力は裏切らない★”
・・・・・・。
祭りが開催されていた・・・。
来る、来る、来る、来る・・・
篠原ともえが「クルクルミラクル」をガンギマリの笑顔で歌いだしそうでドッカーーーンである。(は?)
なんだこれは?
え?
なに?
そんなに面白い映画なの?
おじさん、まったく知らないんですけど・・・
とりあえずYouTubeにある予告編を観てみる(注 仕事中)
・・・・・・。
いや、怖そうやけど!?
めっちゃくちゃ怖そうなんですけど!!!
・・・だがこうなっては気になる友人の言葉。
「ぜったい葉加瀬くんでも楽しめるから!」(リバーブ)
ホラー映画耐性マイナス53万の僕でも楽しめるホラー映画なぞ、もはやホラー映画ではないのではないか・・・?
そんな疑問を抱きつつも、僕はこの『来る』という映画に興味を持ち始めてしまった・・・。
これが8月6日のことである。
そして8月8日。
お盆休みの初日、YouTubeチャンネルの動画作成に必要な写真撮影と画像処理を終えた僕は、夕方からこのホラー映画『来る』と対峙する覚悟を決めた。
いつもは深夜に映画を観る僕が夕方から観始めたのはお察しの通りである。
なんか文句あるか!?
おっと失礼。
超絶簡単にこの映画のあらすじをご紹介すると、
妻夫木聡さん演じるイクメンパパが怪奇現象に巻き込まれ愛する妻(黒木華さん・大好き)や娘に危害が及ぶことを恐れて霊媒師の血族であるキャバ嬢(小松菜奈さん・可愛い)に調査を依頼。だがこの家庭に憑きまとう「アレ」は想像を遥かに凌ぐ強大なモノだった。そこでキャバ嬢の姉である日本屈指の霊媒師(松たか子さま・最高)が現れ・・・。
ネタバレになってしまうので詳しくは書かないが概ねこういった感じである。
結論から言う。
・・・・・・。
めちゃめちゃ面白いやないか!!!
・・・・・・。
めちゃめちゃ面白いやないか!!!
・・・・・・・・・。
いや、本当に未見の方は観てくれ。
少なくとも2回は「面白い!」って叫びたくなるから。
僕は見終わってからベランダを全開にし、「ルカーーー!」と叫んだ。
いや、それはさすがにしていないが、観終わったあとにPCモニターに向かって拍手をしてしまった。
スタンディング・オベーション ならぬ シッティング・オベーションである。
このホラー映画を観ながら僕はあることを感じていた。
「ああ、そうか、これは少年漫画だ。」
そう。
ホラー映画『来る』は少年漫画なのだ。(個人の感想です)
「ぜったい葉加瀬くんでも楽しめるから!」という友人の言葉に嘘偽りはなかった。
僕はホラー映画というものを生まれて初めて「楽しんだ」のだ。
なぜ楽しめたのか。
それは『来る』が『ホラー映画』という枠から限りなく『エンタメ』に軸足をずらした映画だからだ。
所謂『リング』などに代表されるジャパニーズホラー感が薄い。
正体不明の「アレ」を前にどう対処するか。
もちろん映画のメッセージ性や物語の下地となるテーマもしっかりとしているが、それよりも敵との「決戦」を如何に盛り上げ魅力的な映像にするか。
そこがこの映画最大の面白みであり、他に類をみないエンターテイメントとしてSNSでバズリを生んだ理由なのではないかと。
以下に僕が個人的に楽しんだ(少年漫画味を感じた)シーンを箇条書きにて記す。(ややネタバレ有り)
★満を持して登場した強キャラ感漂う人物が呆気なく死ぬ(the絶望感)
★柴田理恵さん演じる霊媒師のキャラ立ち(俺の柴田理恵がこんなにカッコイイわけがない!)
★松たか子さんの右フックにぶっ飛ばされるV6岡田くん(岡田くんの身体能力パねぇ)
★呪殺されるのを防ぐため別行動をしようと話していたおじさん霊能力者たちが結局全員無事に現地に到着してたこと(生きてた~)
★JKたちがただのJKではなかった(くぅうううう!)
そしてこの映画最大の見せ場である後半。
日本全国津々浦々、宗教宗派入り乱れての「大除霊祭り」のシーン。
これは必見である。
『来る』ではなく『かかって来いや!』って感じ。
詳しくは書かないがあまりの凄さに
「フェスかよ!」
とツッコんでしまった。
まさに『除霊フェス』である。
・・・・・・。
どうだろうか。
僕の拙い文章力ではこの映画の魅力を未見の方にお伝えするには如何せん力不足をひしひしと感じてしまうが、少しでもこの映画に興味を持っていただけただろうか?
僕と同世代の方にとても分かりやすく、
かつ独断と偏見を加味した言葉でこの映画を表現すると、
『ギャグ要素をなくしたGS美神』
これがわりとしっくり来るのではなかろうか?(異論は認めます、というか観た人どうしで朝まで生テレビしたい。田原総一朗も交えて)
とにもかくにも、
ホラー映画はもちろんジェットコースターやお化け屋敷、ヤクザに宇宙人まで怖いと感じる僕でも最初から最後まで「楽しめた」この映画。
原作は小説で、しかも比嘉姉妹シリーズとして4冊の既刊があるとのこと。
むむむ、
これは読まない手はないのではないだろうか・・・
でもなー
僕なー
ホラー苦手やからなー
・・・・・・。
ぶー、ぶー、
スマホが鳴る。
友人からのLINEだ。
通知欄にはこうあった。
「葉加瀬くん、映画よかったやろ?実は僕、原作小説も買っちゃってさ」
僕は既読スルーをかまし、電子書籍のサイトへジャンプした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?