新型コロナ対策をオフィス改革の契機に
新型コロナウィルスへの対策として、テレワークの導入が急ピッチで進められている。たしかに、それがもっとも効果的な対策であることは間違いない。
しかし、仕事の進め方や顧客対応の仕方などが大きく変わらないなかで、いきなりテレワークといわれ戸惑っている企業も多い。実際、オフィスにいなければこなせない仕事もたくさんある。
そこで、オフィスで働いても感染リスクを小さくする工夫が必要になる。新型コロナウィルスは、主に接触と飛沫によって感染するといわれている。したがって一人ひとりのデスクの間を仕切れば、ある程度は感染を防止する効果が期待できるはずだ。
周知のように日本企業のオフィスは大部屋で仕切りがないのが普通だが、私が世界20か国以上の企業を見てきたなかでは、このようなオフィスは日本だけである(企業によって例外はあるが)。たいていの国では管理職なら個室、それ以外は隣と衝立によって仕切られたオフィスで仕事をしている。少なくとも向かい合った人との間には仕切りがある。
大部屋で仕切りのない日本型オフィスはコミュニケーションが取りやすく、互いに仕事ぶりも見えるというメリットがある。しかし一方で、仕事に集中できないとか、ストレスを感じるといったデメリットもある。とりわけ知的な仕事、創造的な仕事をするには不向きだといえる。
そして今回のような感染予防を考えたら、いっそう仕切りが必要になる。
仕切りを設ける以外の方法もある。デスクを反対に向け、背中合わせに座るのだ。日本の学校では職員室も教師が向かい合って座る形になっているが、ノルウェーの学校では壁や窓に向かって座るレイアウトになっていた。
日本でも役所の記者クラブなどでは、記者が壁に向かって座るようになっている。いわゆる「士」業のオフィスで試してもらったところ、働きやすく仕事の能率が上がったと評判がよかった。
仕切りを設けるにしても、背中を向けて座るにしても、コミュニケーションや人間関係に差し障りがでることを懸念し、ふだんはなかなか実行できない。今回のように「感染対策」という明確な理由があるときこそ、オフィス改革の好機である。