Q. ユーザー情報は「私のプロフィール」か「あなたのプロフィール」どっちが正しい?
ちょっとしたUI/UXデザイン関連の質問に答えていくシリーズ。
今回の質問はこちら。
結論
私もあなたもつけず「プロフィール」にすべき
どうしてもつけたい場合は日本語だと「マイプロフィール」「あなたのプロフィール」あたりが自然
「私の / 自分の / マイ」はユーザー専用の情報感が強くなる
「あなたの」は他のユーザーからみた情報感が強くなる
「[ユーザー名] の」も検討したい
解説
「あなたのライブラリ」
「私の受信箱」
「マイリスト」
「自分宛てのメール」
「鈴木さんのポイント」
……といった、アプリにおける人称どれが適切なんだ問題。
所有格を明確にしがちな英語などのケースではなく、日本語でどうするべきかという点にフォーカスして解説する。
ひとつのアプリの中で「私」と「あなた」が同じ意味で混在しているとなんかよくなさそうなのは明らかだが、どちらに統一したほうがいいのだろうか?
「私の」事例
まずは愚直に「私の」「自分の」と使っている例。あまり見当たらなかった。
一方で「マイ(My)」を使って「私の」の意味を表現している例はたくさんある。
ちなみに「マイページ」は2000年以前のログイン機能があるWebサイトがほぼなかった時代において、ログイン前の情報と差別化する意味合いで生まれた和製英語である。
たしか iモード(ガラケーのネット接続サービス)とかヤフーとかが使いはじめて、今でもメルカリのタブで使われるほど一般的な概念となった。
それもあって、マイリストとかマイミクとかマイナンバーとか、マイ◯◯◯という言葉をひとつの単語として使う独特な文化が日本には存在する。
ニュアンスとしては my list(マイ・リスト)というより mylist(マイリスト)だし、my page(マイ・ページ)というより mypage(マイページ)なのである。
なお、英語で My ◯◯◯ と使われている事例はこちら。
「あなたの」事例
アプリ側に主体があって、「あなたの」とユーザーを呼びかけるようにしている事例はこちら。
ツールアプリとは違って、SNSなど他のユーザーの存在がちらつくアプリにおいては「あなたの」と使われることが多い。
ユーザーだけが取り扱う情報ではなく、他のユーザーからみた「あなたの」情報という文脈が強いからだ。
また、「あなたを」「あなたへ」のように目的格としてユーザーのことを示すときや、レコメンドの文脈で使われる場合は大体の場合「あなた」である。
この場合、逆に「私を追加したユーザー」「私自身のことを伝えましょう」「私が興味ありそうな番組」「私へのおすすめ」だと日本語として変になる(アプリが発言しているようにも思えてしまう)ため、「あなた」の方がふさわしい。
「ユーザーの」なのは当たり前
ここまで「私の」「あなたの」とついている事例を見てきた。
しかしながら、そもそもアプリとしてダウンロードしている時点で、もしくはWebサービスとして使っている時点で、自分のものであることは自明な場合がある。
もしアプリに「プロフィール」という第1階層のタブがあったら、タップするとどういう情報がでてくると思うだろうか?
多くの人が、他のユーザーも含めたプロフィール一覧ではなく、自分のプロフィールがでてくると思うだろう。
アプリにおいてタブや情報をみる際には前提として「自分のデバイスに落とした自分のアプリにおける……」という文脈がすでに存在することを忘れてはいけない。
具体的にいうと、マイライブラリ、マイチャット、マイアカウントなどは「マイ」がなくても通じる場合が多い。
YouTubeのマイページにおける「作成した動画」というリンクは、誰かが作成した動画ではなく明らかに「自分が作成した動画」なので、「自分が」はいらないのである。
また、Googleカレンダー(Web)で作成した予定が「作成者:あなた」ではなく「作成者:Hajime Hirono」となっているように、ユーザー名をまんま使うという選択肢も多くの場合で有効だろう。
そのうえで「他の誰でもなく自分のもの」だと強調したいときは、以下の使い分けを参考にしてほしい。
使い分け
ユーザー自身が主体となる「私の」を使う場合は、当然ながらユーザー専用の情報感が強くなる。
ユーザー自身がつくったコンテンツに対しては「私の」の方が適しているだろう。
マイタスク
マイレシピ
私の旅程表
マイメッセージ
私のメモ
マイファイル
私のエピソード
マイカレンダー
一方で、ユーザーがつくったコンテンツでも他のユーザーから見られることを意識させたいときや、アプリから呼びかけてサポートしている感をだしたい場合、アプリがユーザーに提供する情報などは「あなたの」を試してみるといい。
あなたのプレイリスト
あなたのプロフィール
あなたの目標
あなたの進捗
あなたへのおすすめ
あなたのチケット
あなたの利用履歴
例をみてお察しの通り、どちらでもいいケースは多々ある。
絶対的な正解はなく、ユーザーにどう感じてほしいかという意思と、アプリを通して主体・目的格にルールの統一感があることが大事。
より「サービス」感を強めたい場合は「お客さま」と記載する場合もある。
マイとユア
日本語のカタカナで「マイxxx」というのはよくあるが、「ユアxxx」というのはアプリに限らずあまり見ない・聞かないように思える。
マイプラン、マイストーリー、マイネーム、マイスタイル
は字面も見たことあるけど、
ユアプラン、ユアストーリー、ユアネーム、ユアスタイル
は字面でも音でも比較的なじみがないだろう。
日本語としての発音のしやすさも関係していそうだ。
Spotifyでは英語で「Your Library」のタブ名が、日本語で「マイライブラリ」になっていた。
また、先ほど紹介したYouTubeの「作成した動画」は、実は英語で「Your Videos」である。
「あなたの動画」という日本語では、作成したというニュアンスが薄いからだろうか。
SpotifyもYouTubeも、言語特性や文化に合わせて細かく翻訳をしている良い例である。
ついでの情報だが、英語ではどちらかといえば Yours をよくみる気がする。
まとめ
質問と結論の再掲。
私もあなたもつけず「プロフィール」にすべき
どうしてもつけたい場合は日本語だと「マイプロフィール」「あなたのプロフィール」あたりが自然
「私の / 自分の / マイ」はユーザー専用の情報感が強くなる
「あなたの」は他のユーザーからみた情報感が強くなる
「[ユーザー名] の」も検討したい
ぜひ解説も含めて参考にしてほしい。
UI/UXデザイン関連の質問があれば気まぐれで答えていくので、お気軽にこの記事へコメントかXでリプライどうぞ。
こういう相談に即日おこたえするデザイン顧問も枠少なめだけれど、下記サイトのお問い合わせフォームより受付中。