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息子が部活を引退した

息子が部活を引退した。区大会を勝ち進み、市大会では名門校相手にジャイアントキリングをかまし、次のベスト8で惜しくも敗退した。

区大会のはじめの試合から嫁と観戦した。出場する試合もあればしない試合もある。それでも彼はいつも帰宅後大きな声で「勝ったよ!」と教えてくれる。

まったくの未経験で入部した部活動。周りは経験者も多く、彼らとの力の差は大きい。1年生のときは一回も見に行かなかった。2年生のときに一度だけ市外の遠征を見に行った。そのときは後輩の1年生に線審の指導をしていて驚いた。

3年生のゴールデンウィークには県外に2泊3日の遠征に行った。1年生のときはコロナで開かれなかった(か、1年生は自粛だったか)が、2年生のときに行ったその遠征はとても楽しかったらしく「また行きたい」といつも言っていた。気になっていたので趣味であるサイクリングにかこつけて見に行った。本人には言わず。会場の隅から見る彼は先発で出場したり、途中交代で出場したりしていた。見違えていた。離れた場所から何枚も何枚も写真を撮った。そのうちの1枚は今スマホの壁紙になっている。

一方で、自分はと言えば、中学のとき1年の途中であっさり部活を辞めた。だから部活の仲間もいない。一生懸命練習した記憶もない。そして緊張感のなか、真剣に試合で戦い、その結果に仲間と全力で喜んだり、泣いたりした経験はない。彼が運動部に入る、と聞いたときには「未経験なのに入って大丈夫?」と前向きには捉えていなかった。自分に3年間全うした経験がないのでどう接していいのか分からなかったんだと思う。

彼は、仲間たちと支え合い、励まし合いながら自身の経験を築いていった。一朝一夕ではなし得ない大切な思いの蓄積になっている素晴らしい時間を過ごしてくれた。未経験で入部して卒部まで残ったのは彼一人らしい。これを聞いただけでも泣きそうになった。仲間たちと努力して自分の3年間を圧倒的に魅力のある時間に磨き上げた。本当に素晴らしい。

最後の試合、負けが決まった瞬間、みんな泣き崩れた。保護者も。試合後、監督を中心に、全員が負けを噛み締めつつ3年間を振り返っていた。それを見ながら、悔しい、勝って欲しかった。でもよく頑張った、ここまで連れてきてくれて、こんな貴重な経験をさせてくれてありがとう。いろんな感情が湧き上がっていた。まるで自分の部活かのように。この年で人前で泣くとは思わなかったし、強烈な感動をさせてもらっていた。3年前、入部の話を聞いた時にこんな日が来るなんて思ってなかった。自分の息子からこんな経験をさせてもらえるなんて無茶苦茶幸せなことだ。想像もしていなかった。

圧倒的に素晴らしい15年間を過ごしてくれている。しかもそれは彼自身の頑張りによって。幸せは与えられるもんではない、自ら作り上げるものだ、と誰かが言った言葉がまさか今日身に染みて気付かされた。

彼はこれから受験に向けたモードに切り替わる。多くの部活動を引退した子がそうであるように。もちろん心配ではあるけれど、昨日の彼を見ていると「大丈夫だよ」と言ってくれたような気がする。ちゃんと達成した運動部と同じように、ちゃんと笑顔で来年の春を迎えてくれるんだと思う。

息子からたくさんのことを教えてもらっている。自分じゃ知らなかったことをたくさん。紆余曲折のある自身の人生のなか、彼に出会えたことは奇跡だと思う。だからお父さん、頑張るよ。


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