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チャリティコンサート

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/blog/archives/2006/06/post_6.html
投稿日時:2006年06月04日11:45

【画像省略】

鳥越です。

今日6月3日はオーマイニュースのオフィスにも行けず、一日中、紀尾井ホールにいました。これは15年前から始まったことなので私の中では優先順位が他と比べられないことなんですばい。
創刊に向けて頑張っているスタッフには申し訳ないんだけど、まあ、次のようなことなんですね。

今日、紀尾井ホールで午後3時から6時まで約3時間、コンサートが行われました.タイトルは——

「エイズ幼児救済チャリティコンサート」

私は司会進行役としてコンサートの盛り上げ役を務めていたのです。このコンサートは紀尾井ホールでやるようになってからは今回で3回目。その前は度々チャリティ募金のためのイベントをやってきました。その度に私は司会役をやってきました。私はこの「国際幼児エイズ救済基金」の立ち上げメンバーの一人だから当然のことなのですが、実はこういう基金を作るようになったきっかけは私が新聞社からトラバーユ(ちょっと古い表現かなあ…)してテレビ朝日の報道番組「ザ・スクープ」のキャスターをやるようになった1989年に起きたある出来事と関係があります。

1989年12月のクリスマスも近い頃、日本から遥か離れたルーマニアの地で、それまで独裁を恣にしたチャウシェスク政権が倒れ、民主化の動きが一気に始まりました。もう17年前のことですから、今の高校生はおろか大学生だって記憶にない歴史上の出来事ですねえ。
その直前に「ザ・スクープ」はスタートしたばかりで、まだ私も若かったんですね。東欧社会主義政権が音を立てて崩れ落ちて行くのを見ながら、これは日本のテレビでも伝えるべきだと主張し、取材クルーを現地に派遣するように求めました。だけど、ルーマニアに行ったからといって何が撮れるか全く分からない段階で、テレビはそうおいそれとカネのかかる現地取材など決断出来ない、ということはおいおい分かってきましたが、まだテレビに来て時間のない私には理解の外にあったようです。
行くべきだ、といい募る私の声に答えた男がいました。
社会部出身で私とは理解し合える仲だった芋原くんです。
彼は何も分からないまま兎に角行く、という突撃精神でルーマニアに乗り込んだんですねえ。今のテレビの状況ではこういうことは許されないでしょうが、当時はバブル経済崩壊の直前、まだテレビにも余裕みたいなもんがありました。
彼はルーマニアの地からいくつもスクープ映像を送って来ました。
その中に衝撃的な映像があったんです。ルーマニアはチャウシェスク政権時代、人口拡大政策を取っていたせいで、やたら親のいない孤児たちがいたんですが、その孤児たちも多くがエイズに感染していたんです。恐らく港に入った船の乗組員たちから女性に感染し、やがて同じ注射針を使い回すことで孤児たちにあっという間にエイズウィルスは広がって行ったようです。
芋原くんたちはそうした孤児を収容した病院を取材していたんですが、ある幼児がカメラの前で亡くなっていく様子をしっかりとレンズがとらえていました。そのあまりに悲劇的な衝撃映像はルーマニアの孤児たちのエイズ事情を伝えてあまりありました。
その放送を私の主治医でもある谷美智士先生が見ていたんです。で、この子供たちを先生の生薬(漢方薬)で治せないかなあ……生薬は人間の免疫力を上げる力があるそうです。エイズという病は後天性の免疫不全症候群なので、免疫力を上げることが出来ればエイズウィルスとも対抗出来るのではないか。
そう考えた先生は1990年、一回目のルーマニア訪問をして孤児たちの治療に取り組み始めます。私たち先生の患者を中心にした仲間が先生の実験を支援するために基金を設立、91年8月からルーマニア政府の正式許可を得て谷先生によるエイズキャリアーの児童55人に対する生薬治療が始まりました。
94年8月、第二回目の募金イベントが行われ、そこにエイズキャリアで先生の生薬治療を受けていた5歳の男の子、シャバンくんがルーマニアの医師、マトゥーシャ先生と共に日本にやって来たのを昨日のことのように覚えています。
そのシャバンくんが今日、紀尾井ホールに姿を見せていました。
彼は18歳、元気な若者に成長していたのです。
私は何ともいえない感動を覚えました。
そうかあのシャバンが!!!
それは谷先生の生薬治療が遠くルーマニアの地で確かに効果を上げている証でした。
2002年からはカンボジアでも子供たちの治療が始まり基金はその活動の支えになっています。
という訳で、私はいつもチャリティコンサートの司会者という役目なんですねえ。
松本美和子さんや米良美一さんら10人余の歌手が「日本の歌、世界の歌、オペラ、オペレッタ」などの歌曲をノーギャラで歌ってくれましたが、会場にはなんとあの安田祥子さん、由紀さおりさん姉妹もいらっしゃっており、私の判断で(というのはウソで実は前もって頼んでおいたんですが)3曲も即興で歌って頂きました。彼女たちも谷先生のところに通院する患者さんなのでしたが。
ま、そういう訳で今頃(午後11時22分)このブログの原稿を書いているんですね。
医学と言えば西洋医学のことを指すようですが、分析的な西洋医学とは全く異なる、人間を総合的に診断して治療する東洋医学の世界のことも考えてみる必要があるんじゃないでしょうか?
少なくともルーマニアやカンボジアではHIVに感染した子供たちが生き生きと輝いている事実はあるんです。生薬治療の結果として。
ああ、ちょっと疲れましたねえ…今日はもう寝るかあ……。

※引用文中【画像省略】は筆者が附記
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引き続き、鳥越編集長の親しみやすさを前面に出したエントリです。ご自身の過去の活動にも触れながら、異なった視点から物事を見る大切さを伝えておられます。