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新たな負担を迫られる村~沖縄米軍基地問題

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/blog/archives/2006/07/post_62.html
投稿日時:2006年07月5日14:35

「日米同盟」は日本の安全保障の根幹だ--。
そんな言説が当然視されてまかり通る中、米軍再編計画は地元の意向などほとんど顧みないまま進められようとしています。しかし、もし仮に日米安保体制が日本にとって重要だとしても、沖縄をはじめとする一部の地方に基地負担を押し付け、その実態も声もろくに考慮しないまま「日米同盟は何より重要だ」などと涼しい顔で言い放つ言説を支持するわけにはいきません。

では、当の基地負担を背負わされた自治体や地元はどうなっているのか、現地では一体何が起きているのか。それを十分に把握した上で日米関係を考え、さらには「中央」と「地方」や沖縄の問題などに取り組んでいかねばならないのではないでしょうか。

市民参加メディアである「オーマイニュース」は、こうした地域に暮らす市民記者の記事を積極的に集め、それぞれの地元が抱える問題や市民の声、矛盾や現実を可能な限り伝え、皆さんに「考える材料」を提供していきたいと思っています。

そうした中、沖縄で市民記者となってくれた豊見城市の岡田耕子さんが地元の様子をリポートする記事を寄せてくれました。米軍のヘリ訓練基地建設をめぐる岡田さんのリポートを以下に紹介します。
(編集局)

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沖縄、緑深いヤンバルと呼ばれる北部の東海岸に面した風光明媚な村、 東村。

天才ゴルファー、宮里藍ちゃんのふるさとでもあります。その北の国頭村との村境に位置する東村高江区は亜熱帯特有の照葉樹の森があり、小川にはきれいな水が流れ、海岸部は切り立った崖になっており、県道沿いに真っ青の大海原が見渡せます。昔は陸路がなく「陸の孤島」と呼ばれ、船で行き来をしていたそうで、今もヤンバルクイナ等の希少動物が生息する豊かな自然が残っています。

高江区民は150人ほど。世帯数65で農業を中心に生計を立て、自然に囲まれながら緩やかで穏やかな生活をおくっている……はずなのですが、一つだけ彼らの生活を脅かすものがあります。それが米軍です。

県道を横道に逸れてすぐに米軍ヘリ訓練用のヘリパッド(着陸帯)があり、昼夜を問わずやってきて、騒音を撒き散らし民家をサーチライトで照らしたりするのです。嘉手納飛行場の爆音は遠くから徐々に音が強くなっていきますが、高江でのヘリは、森の起伏を利用する飛行訓練をしているのか、ベトナム戦の映画さながら谷底からぬっと出てきて、突然の爆音が家を揺らし、子供たちはショックを受け怯えて泣き出します。墜落の危険もあります。実際に落ちたこともあります。

また森を少し入った場所にジャングルでの戦闘を想定した海兵隊野戦訓練場があります。時々訓練中のお腹を空かせた海兵隊員がふらふらと県道まで出て来たりするのです。

【画像省略】

その高江に新たな問題が持ち上がりました。米軍再編の計画の一つとしてさらなるヘリパッドを建設しようと言うのです。既存のヘリパッド以外に新たに5箇所の建設計画。しかも配備されるのは過去何度も墜落事故を起こし、欠陥機と呼ばれる大型ヘリ、MV-22オスプレイ。そんなものが6箇所のヘリパッドを拠点にヤンバルの山々を飛び回るのです。更なる住民への被害、事故が予想されます。しかも周辺には県民の水がめであるダムが2つあります。そこへ墜落すれば県の水道水が汚染されることになります。

今年2月、高江区民は新聞でそのことを知りました。これを受けて臨時の区代議員会を開き、全会一致で「反対」を決議しました。しかしそれを無視するかのように3月3日、防衛施設局による住民への説明会が開催。70人ほどの真っ黒なスーツの施設局員たちが小さな公民館にやってきて、参加した子供を抱いた女性たちを含む35人ほどの住民を威圧するかのように取り囲み立ち並びました。施設局側は住民側をビデオ撮影していましたが、住民側からの録音機器の持ち込みは一切禁止。手に持っていた反対ビラなどもしまってくれなどの注文が付けられました。

説明は「工事は年内着工予定、希少動物保護に配慮して工事する、その際幅の狭い通学路を一日50台の工事車両が往復する」など、環境アセスメントや工事計画に関しての報告のみ。しかし事故の懸念や住民被害についての説明は一切なし。今後その説明会の予定もないといいます。通学路を一日50台の工事車両が往復するとは一日100台が通ると同じこと。危険じゃないかと問い詰めても「答える義務はない」と言うばかり。

我々に死ねというのか、出て行けというのか。住民が怒りをぶつけても我関せずの施設局側。言いたいことを言ったら、さあ終わったとばかりに帰って行ったそうです。何のための説明会だったのか? しかもおかしなことに渡された資料を見ると、今回の説明会は既に2回目となっていました。これが民主国家である政府のやることでしょうか?

実はこのヘリパッド新設予定地は厳密に言えば東村高江ではなく、村境の向こう側国頭村に位置します。そこには集落などなく、実際に被害を被るのは高江区民であっても、基地建設容認の意思決定は国頭村にあるわけです。

各市町村長とひざ突き合わせて交渉をし、沖縄の負担軽減のためにがんばったと弁舌さわやかに語った額賀防衛庁長官。彼のいう交渉とはどういうものだったのでしょうか?
(岡田耕子記者)
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※引用文中【画像省略】は筆者が附記
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今、国の姿勢が問われているのではないでしょうか(NHK風)【5日前】