ブックガイド(81)「小説の書き方 小説道場・実践編」(森村誠一)
人気作家である森村誠一さんが書いた指南書で、ずっと独学で小説を書いてきた自分にとっても教科書の一つだった。
実践編と銘打つだけに具体的
目次は以下の通り。
第一章 アイディアと構成
第二章 書き始めと結末
第三章 プロットの立て方
第四章 文章論ー言葉の六大機能
第五章 文体論
第六章 実作のサンプル
ご覧のように、「作品の発想~構想~プロット~実際の執筆」といった流れに沿って書かれている。
2009年に角川から出ている本。当時、うつによる休職開けで、総務部付きという身分で社に通っていた私は、それをいいことに「奥安アパートメントの四季」(現在ステキブンゲイ掲載・連載完了)という長編小説を書いていた。うつが寛解すると同時に原稿書きたくなるところが物書きの性(さが)なのだが、そこで出会ったのがこの本だったのだ。
こつやテクニックなどを意識化
完全な初心者向けではあるが、同時に自分流で作品が描けている私にも、「なんとなくやっていたこと」に対して、「~だからこうしなければならないのだ」という理由を「意識化」してくれる良著だった。
特に印象に残っているのが、「説明するな描写せよ」
これは、もう自分の座右の銘になっている。
ちなみに私の二大モットーが、
「説明するな描写せよ」
「説得するな気づかせろ」
前者はこの書から学んだが、後者は派遣社員としてメーカーのコールセンターで苦情電話対応をしてたときに学んだことである。
小説は話芸である
この書で判るのは「文字と文章で綴られる物語、小説」は、高座で語られる口承文芸の末裔であり、間違いなく話芸なのだということ。漫才の芸人やタレントにとって、小説は舞台の延長線上にあり書けて当然のことなのだ。
奇しくも、この書を読んだ7年後の2017年からサイタというサービスで小説創作のコーチをすることになった。初心者の原稿を拝読しながら、この本を思い出した。
拙い原稿を読みながら「俺ならこうする、それは何故かというと~」という気づきに満ちていて、森村先生もこういう気づきを書かれたのだな、と思えた。
小説を書きたいという初心者にお勧めである。何度も読み返して発見や気づきのある良著。
「小説の書き方 小説道場・実践編」