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【灰澄さんと話そう#13】恐怖を解剖する試み②ハリウッドホラー編

こんばんは、灰澄です。

今回は、前回の「【灰澄さんと話そう#12】恐怖を解剖する試み①Jホラー編」の続編として、ハリウッドホラーについて言及します。

前回の記事はこちら↓

さて、Jホラーについては、恐怖の機構として「後ろめたさと共感」があり、しかし、実社会に脅威や悲劇が多い時代においては、恐怖の根拠となる物語に共感しづらい(それ以上の脅威や悲劇が現実にある)とした上で、近年の傾向として、「忌」や「穢」といった対話不能・自動装置的な恐怖が描かれがちで、今後もそうした作品が増えるのではないか、ということを述べました。

これに対して(対してということもないですが)、ハリウッドホラーはどうか、ということを考えてみます。


ハリウッド式恐怖の機構① 暴力(=殺人鬼)

ハリウッド映画における恐怖には身体的な脅威が必要、というのは、ハリウッド版『呪怨』が制作される際のインタビュー(だったと思う)で読んだことですが、実際、有名なハリウッドホラーの名ヴィランたち、即ちホラーヒーローを見てみると、なるほど説得力があります。

ジェイソン(『13日の金曜日』)
フレディ(『エルム街の悪夢』)
レザーフェイス(『悪魔のいけにえ』)
マイケル・マイヤーズ=ブギーマン(『ハロウィン』)
チャッキー(『チャイルドプレイ』)
ピンヘッド(『ヘルレイザー』)
フィッシャーマン(『ラストサマー』)
ゴーストフェイス(『スクリーム』)

……パッと浮かぶだけでも、ことごとく、物理的に人を殺害するという形で、恐怖を振るうキャラクターたちです。

少し毛色の異なる有名キャラクターとしては、ペニーワイズ(『IT』)があげられるでしょうか。とはいえ、リメイク版では物理的な脅威の要素が強くなっていたように思います。

列挙したホラーヒーローたちを改めて見てみると、出自はそれぞれで、中にはSF・オカルト要素が強く絡んでいる場合もありますが、基本的には「殺人鬼」としてまとめることが出来そうです。

彼らの恐ろしさは、人間の身体能力では絶対に勝てないような力を以て身体を脅かすという、圧倒的な「暴力」です。これは、直感的に想像できる恐怖ですよね。


ハリウッド式恐怖の機構② 邪悪(=悪魔)

ここに当てはまらないものは、『エクソシスト』、『ダミアン』、『悪魔の棲む家』、『死霊館』シリーズなどに見られる「悪魔」です。

これらは、場所や人に憑りつく、あるいは場所や人の形をとって顕現する、という形で人に害を為します。

「悪魔」に対する恐怖については、非キリスト教圏の人間にはピンときづらい部分があるかもしれません。というか、一見、Jホラー風の「悪霊」との見分けがつきにくいかもしれません。

悪魔が登場する映画での危害も、結局は暴力(事故を誘発する、自殺を促す、直接的に人に手を下すなど)なのですが、一番のポイントは、悪魔と邂逅した(憑りつかれた、取り込まれた)人間は、死後も祝福されることなく地獄に堕ちる、ということです。

神の加護から外れる、ということは永遠に救済されない、ということであり、現世の(肉体の)苦しみに留まらない、魂への加害です。そうした世界に引き込もうと、心の隙間を狙う悪魔への恐怖心は、殺人鬼のような暴力とはまた違った、より根源的な脅威に由来しているように思います。

悪魔が人に害を為すことに動機はありません。神の敵対者である悪魔は、人の弱さを狙って救いの無い道へと誘う、没交渉で「邪悪」な存在なのです。


これからどうなるハリウッドホラー

さて、Jホラー記事同様、今後のハリウッドホラーについて、無責任な予測を立ててみます。

Jホラーとは違い、ハリウッドホラーにおける「暴力」と「邪悪」が、恐怖の影響力を失うことは無いように思います。ただし、表現の角度は変わるのではないでしょうか。

その理由については、Jホラーと同様です。
現実に、あまりにも凄惨なこと、残酷なことが多く、あらゆる生活圏の人々がそれを実感しています。フィクションよりも心が凍り付くような日々と隣合わせだと感じている中で、お約束的なホラー演出は、単純明快過ぎて、ある意味では能天気にすら見えてしまうのではないか、と思います。
それは恐怖の機構として機能しなくなるというより、作品としての魅力の問題から、描き方の変化に繋がります。

ハリウッド映画は、邦画よりも敏感に世相を反映します。それは政治意識や、娯楽と実社会との距離感についての違いによるものであり、どちらが良い悪いということをここでは議論しませんが、やはり近年のホラー映画にも、その潮流を感じます。

この数年で制作されたハリウッドホラーを観た感想として、恐怖の対象となる「暴力」や「邪悪」の媒介者が、殺人鬼や悪魔といった空想の存在よりも、人間や社会に移り変わっているように思います。そこには、現実への問題的にや弾劾、風刺といった意図も含まれているでしょう。

では、「今の」ハリウッドホラーはどのような形をとっているのか。
最後に、上記の仮説を踏まえて、具体例としてオススメ作品を挙げてみたいと思います。


オススメ!「今の」恐怖を体現するホラー映画

最近観て、ホラーの形の変化を感じた作品をいくつか挙げてみます。オススメも兼ねてご紹介しますので、ネタバレは無しです。

『ハロウィン  KILLS』2021
マイケル・マイヤーズで知られる『ハロウィン』シリーズの新三部作、二作目です。スターウォーズで言うと、『帝国の逆襲』的な位置にあたるかと思います。恐怖の媒介者がマイケル・マイヤーズであることは確かですが、彼を鏡像として描かれる大衆心理や、恐怖が増長する暴力、というのが一つの注目ポイントです。個人的に、過去観たホラー映画の中で殿堂入りの面白さでした。

『ザ・マミー』2017
政治腐敗とギャングによる暴力が横行するメキシコを舞台に、親を失った子供の切実な闘争を描いた物語です。これをホラーと呼ぶことが適切か分かりませんが、どのジャンルの棚に置くかと言われたら、ホラー……だよなぁ……。ドキュメンタリーのような街の描写と、空想と現実の交差が印象的です。ホラー映画的な恐怖演出によって誘導される、この作品における「暴力」と「邪悪」がどこにあるのかに注目してみてください。久しぶりに、しばらく言葉を失うほどに圧倒されました。

『貪る』2012
エルサルバドルから、息子の手術費用を稼ぐためにニューヨークで働くシングルマザーが体験する恐怖を描いた物語です。制作年は2012年と少し古めですが、Amazonで配信されたのはごく最近のようです。制作当時と今観るのとでは、かなり印象が変わる作品のように思います。こちらも、ホラー映画的な恐怖演出が誘導する「暴力」と「邪悪」に注目すると、見え方が変わる作品です。観終わった後に改めてタイトルを見てみてください。何が、なにを「貪る」のか。

『ウィリーズ・ワンダーランド』2021
こちらは、今回の趣旨と若干ズレるのですが、つい先日観て、あまりにも衝撃的だったので、どうしても言及したくてご紹介させて頂きました。殺人鬼の霊に呪われた遊園地をめぐるホラー映画……というか、ニコラス・ケイジが悪魔の殺人ロボットをしばきながら遊園地を掃除する映画です。それ以上の情報は特に無いのですが、「結局、淡々と真面目に仕事をしている人間が強い」という事実に、溜飲の下がる思いがするのは、やはりこれまで述べてきたように、現実の社会の凄惨さに対する抵抗であり、怒りに由来するのだと思います。この映画については、近々、youtube向けにクイックレビュー動画を撮りたいと思います。


終わりに

前後編でお送りしました、「恐怖を解剖する試み」は以上となります。いかがでしたでしょうか。

前回の記事でも書きましたが、note記事が基本的に、ざっくりとした内容は決めているものの、ほとんどの部分を書きながら考えているので、着陸が上手くいくときと、そうでないときがあります。

今回も、もう少し深く掘れたような気もするのですが……。

なにはともあれ。

最近、というか、9月はあまりコンテンツを出せませんでした。そのくせ、Twitterには毎日のように中途半端な弾き語り音声が投稿されています。なんか、考えがうまくまとまらないんですよね……。

とはいえ、準備していることも色々あるので、来月からは記事も動画も、もう少し増やしたいと思います。

詳細はまた後日にどこかで何かしますが、なんと! Live2Dモデル実装の目途が立ちそうです。お願いする方(ご対応頂ける方)が決まりました。

え、これ、Vtuber? うーん、今のところそんな気はしません。せいぜい「口数の多い視聴者」くらいの認識なんですよね……いや、一緒に配信をやってくださるという方も数名いらっしゃるというのに、そんなこと言っていられないんですが。

どこかの段階で、正式に(?)「Vtuber準備中」になると思います。ゆるーーい歩みにはなりますが、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。

では今回はこんなところで。また次回の記事でお会いしましょう。


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