千夜千句(191)
癩人と言ひ争へば陽が溜まる
ハンセンの俳人村越化石へのオマージュ。元の句は、
癩人の相争へり枯木に日
20年以上前、目も鼻も耳もないハンセン病の詩人桜井哲夫をドキュメンタリーに残そうと、草津温泉の療養所に通い詰めたことがあります。結局、自治会の反対にあい、写し取ることはできなかった(その企画者兼監督は、ゴールデン街の最古参「わらじ」の主人。もう亡くなって、お店も閉じましたが、私の師のひとり)。
草津の自治会の役員たちは、こんなことを平然という。
「彼は隔離政策を肯定した厄介者、それにあんな重症の化け物を撮ってもらっちゃ困るんだ、また新たな差別を煽るだけだ、我々は忘れ去られて消えて行くのだ」
と。
若かった私は、彼らとフラットに議論をしようとしました。桜井哲夫を映像に残す意味と価値を申し述べようと身を乗り出した。瞬間に彼らは、反論などされたことがないのか、全身で拒絶をあらわし、それを見てとった監督が私を手で制し、議論にはならなかった。
(桜井哲夫、通称てっちゃんは今やネットにたくさん写真があります)