検索してもでてこないリアル・フィリピン飯の魅力 ③大体もっさりしてる
■ メヌド(Menudo)
これもフィリピン飯の定番と思われる。
何しろどこにでもあるから。
「豚肉と野菜のトマトソースシチュー」と言えば伝わるだろうか。
肉は豚肉を使ったPork Menudoが基本のようである。メインの野菜の具としてジャガイモとニンジンが小さめのサイコロ切りで入っている。
トマトソースシチューと先に書いたように、色が赤みがかっていて、トマトの味がすることがこの料理の特徴だ。
とは言ってもそこまでトマトの味・酸味は強く感じられない。
ベースはコンソメかブイヨンのキューブで味を取っているのだろう。全体的に味がもっさりしてる。
作り方を調べてみると、玉ねぎ・ニンニクを炒めた後、ジャガイモ・ニンジンを入れ、豚肉と炒めたのち、やはり水と一緒にブイヨン・キューブを入れていた。その後トマトソースを加える。
それだけでは塩気が足りないので、肉には先に醤油をかけておく場合が多い。レシピには出てこないが、少し甘みがあるやつもあったので、おそらくバナナケチャップか砂糖で味をととのえるものもあるだろう。
具は先述のもの以外にウィンナーや豚レバー、ピーマン・パプリカを入れることもあるようだ。
これは友人のお母さんが作った家庭のメヌド。基本的に店の味と同じ。
最初の写真のやつは豆豉(トウチ)のような豆も入っていて、コクがあって美味かった。
しかしそれでもやっぱり、全体的にもっさりしている。
■イガド(Igado)
これも赤っぽい煮込みだ。
特徴として豚レバーが入ってる。
豚レバーと一緒に豚バラか肩ロースも入っている。野菜はニンジン・ジャガイモやグリーンピース、パプリカなどが入っていることが多い。
味の特徴は、甘みや酸味がほとんど無く、メヌドと比べるといくぶんしょっぱい。
あとレバーと肉は肉々しい食感で、他の煮込み料理のようにクタっとしていないところだろうか。
ただ基本的な味付けはやはりブイヨン・キューブだろう。フラットな味わいだ。香辛料などの風味も無い。
上の写真のイガドは赤いので、メヌドと同じでトマトが入っているのかと思ったが、食べてみるとトマトの味はしないし、酸味もほとんど無い。
というか、ネットでイガドを調べてみるとほとんどが赤くない。茶色い。
別の食堂で食べた下の奴なんか、茶色いどころか白っぽかった。
作り方を調べてみると、やはりトマト(ペースト)は入れない。
じゃなんで最初の奴は赤かったのかというと、レシピによってはAtsueteという食紅みたいなものを入れるものがあるようだ。
Atsuete(アツエーテ)・・・日本や英米ではアナトー(Anatto)と呼ばれるらしい。ベニノキの種子から抽出される色素。
あと作り方を見たら意外とめんどくさかった。
レバーや肉は醤油に漬け込んで下味をつけておく。(だから塩気を強く感じるのか)
ニンジンやパプリカやジャガイモなど細切りにして、肉と一緒に炒める。作り方によってはどちらかが焦げるのを避けるため、別々に炒めたりする。
この料理は煮ることよりしっかり炒めることがメインのようで、だから肉もぐにゃっとならず肉っぽい味と食感が残る。
でも結局最後は水を加えてブイヨン・キューブ入れて煮る。そこにベイリーフ入れたり胡椒入れたり砂糖やお酢入れたり(あと最初にタマネギ・ニンニク炒めて香りを出したり)するが、やっぱりなんとなーく全体的にフラットな味に出来上がる。
料理名イガド(Igado)はスペイン語のヒガド(Higado)「レバー」から来てるらしい。
やはりこの料理はレバーが入っていることが特徴であり、それ以外については特筆すべき点はない。メヌドほどじゃないが、もっさりしている。
■ ビーフ・カルデレータ(Beef Kaldereta)
ビーフ・カルデレータはそんなにもっさりしてない!
やはりこれもトマト・ペーストが入ったシチューなのだが、どうしてだろうか、メヌドより明らかにコクがあって美味い。
豚でなくて牛肉を使ったおかげだろうか、全体的に力強くリッチな味わい。
他の具には特に特徴はない。メヌドやイガドと同じくニンジンやジャガイモやパプリカなどが入ってる。
それではカルデレータのコクの秘密は何だろうか?作り方を調べてみて分かった。
基本は先に紹介したもっさり系煮込みと変わらない。野菜や肉を炒めて、醤油とお酢で味付けする。そこに水とブイヨン・キューブとトマト・ペーストを入れる。しかしカルデレータは、さらにそこへレバー・ペーストを加えるのだ。
フィリピンで売ってるレバー・ペーストの缶詰。豚のレバーに色々調味料で味付けして売ってるようだ。(画像はHomeshop.phよりhttps://www.homeshop.ph/reno-liver-spread-85g)
この缶詰のレバー・ペースト(こう言っちゃ悪いがすごく犬の餌っぽい)をズルッと鍋の中に入れて溶け込ませる。これのお陰でカルデレータはメヌドやイガドには無いコクと旨みを得るのだ。
牛肉を使ったもの以外にもポーク・カルデレータやチキン・カルデレータもあるが、レバー・ペーストを入れるのは共通のようである。
他にはレシピによってココナッツ・ミルクやチーズを入れる場合もあるようだ。(僕はまだ食べたことない)またこれもAtsuete(アツエーテ)を入れて色味を出すものもある。
ちなみにカルデレータ(Kaldereta)という名前はスペイン語のCaldereta「鍋で煮込んだ料理(シチュー)」から来ているらしい。
ここまで紹介してきたもので既にお気づきだと思うが、フィリピン料理の名前はスペイン語から来ているものが多い。
それはフィリピンが16世紀から300年以上スペインによる植民地下におかれていた影響だろう。料理名に限らず、フィリピンの言葉でスペイン語から入ってきて残ったものは多い。
だが名前だけで、料理自体はほぼフィリピンオリジナルだ。同じ料理名もしくは似た名前の食べ物がスペインや他のスペイン語圏の国にもあるのかもしれないが、全然別物だろう。
今回は全体的にもっさりしているシチュー料理を紹介したが、正直、アドボなどの味の濃いしょっぱいオカズと比べると、ちょっと物足りない。(勿論個人的な感想です)
しかし、これはこれで素朴な味わいで、「給食っぽさ」とも呼べるような、どこかほっとするような魅力がある。
あと他の肉オンリーどす茶色とか油ギットギトのフィリピン飯と比べると比較的野菜が入っているのでギルティ―感が薄らぐかもしれない。(フィリピン飯の野菜の少なさについては、また別個書こう)