【⑤ペナン・ジョージタウン後編 ブンゴスって何だ?そして団地発見】
やっとコムタタワーに着いた。
バスチケットが買える所を見つけたいのだが、急いでいるわけでもないのでとりあえずタワーの中を散策してみよう。
ショッピングセンターみたいな所であると想像していたが、実際に行ってみると、何と言うか・・・
暗いな・・・。
お店、やってることにはやってるのだが、活気が無い・・・客もまばら。
上の階ならもっと商売っ気があるのかな?上がってみよう。
さらなる虚無が広がっていた。
え・・・何このスペース?
どの店もシャッターが下りている。
もう戻ろうか・・・いや、さらに上、登れる最上階まで上ってからにしよう。ペナン島で一番高い建物だ、きっと町中を見下ろせる展望階があるだろう。
どこかに上へ上がれるエスカレーターないかと探していると、あることにはあった。しかしそれは唯一キラキラ光った、謎の施設のガラスゲートの先にあった。
事前情報何も仕入れていなかったが、この時点で色々と察しがつく。中を覗いていると、受付のお姉さんに「上に行きたいの?」と声を掛けられる。
なんか色々アクティビティがあること説明してくれる。水族館にジュラシックパークに7D(?)・・・要はチケット売ってると。展望階(スカイウォーク)行くにもチケットが必要。
「展望階はいくらですか?」
「64RM(約1,750円)です」
うん。そんなもんだよね。一応聞いてみただけ。勿論行かない。
展望は諦めて、あらためてバスチケットを探す。
1階外にバスターミナルらしき場所があったので、そこらをウロウロする。
しかし往来してるのはどれも市バスみたいのばかりで、長距離バスの停留所が一向に見当たらない。チケット売り場みたいのもない。
ターミナル内にフードコートみたいのがあった。
だいぶ歩き疲れた。まだチケット売り場見つけてないけど、その前にちょっとここで休憩していこう。
定番のオカズ自分盛り食堂の間には、茶店みたいのもある。
メニューに"KOPI AIS"って書いてある。おそらく字面的に「アイス・コーヒー」だろう。
いいじゃん、アイス・コーヒー。それ飲んで一服しよう。
お店のおばちゃんに「コピ・アイス!」とそのまま読んで言ってみる。
どうやら注文は通じたよう。
しかしおばちゃん、「ブンゴス?」と聞いてきた。
思わず「ブンゴス・・・?」と聞き返す俺。
おばちゃん、今度は地面を指さしながら「ブンゴス」と繰り返した。
ははーん、分かったわ。
おばちゃんは〈イート・イン or テイク・アウト〉を聞いているのだ。
おばちゃんが地面を指すジェスチャーで分かった。
ブンゴス=ここ=イート・インだ。座ってゆっくり飲みたかった俺は「ブンゴス!」と自信満々に答えた。
そして出てきたのがコレ↓だ。
持ち帰り特化型・ビニールコーヒー。
いや、ビニール袋入りなのは驚かない。タイにもあるし、普通に飲んだことあるからね。
それよりもブンゴス=イート・インという予測が見事外れたことがショックだった。
え、ブンゴスって何?ひょっとして「袋」って意味だった??
あっ、そうだ。こんなときのために、買ったじゃないか!辞書を!
もう今更遅いけど、今日買ったマレー語ポケット辞書を開いてみる。
常に片手が塞がる袋コーヒーをチューチューしながら、もう片方の手で辞書を引っ張り出す。
えーと、ブンゴス・・・Bungosかな?※
"B"のページを開いて、"Bu"はどこだ・・・?
・・・ん?????
"Bop"の次が"Gun"????
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ページがねぇ。
最初一瞬、マレー語にはその間の単語が存在しないのかと思った。
いやいや、そんなわけない。よく見るとページ飛んでるし、小口から抜き取られた形跡もある。
やっちまった・・・欠損品買ってしまった。
他にも抜き取られてるページはないか・・・?!
"ha"から"Ji"まで40ページほどねぇ。
初っ端から"Boj"までねぇ。
AとCとDとEとFとIが丸ごとねぇ。
パパからもらったクラリネットかよ。
最低のクソ欠損中古辞書だった。なんで買う前によく確認しなかったんだ・・・。
※ちなみに後でネットで調べたら、ブンゴス(Bungkus)はテイク・アウトの意味でした。チクショウ
やっぱりノリで買い物するとこうなんねんな・・・と少し反省しながら、気を取り直してバスチケットを探す。
しかし改めてバスターミナルから建物内に入ってみると、すんなり見つかった。キオスクのすぐ入口に観光バス等の案内カウンターがある。
店の兄ちゃんに「クアラルンプール行きのバスに明日乗りたい」って言ったら時刻表出してくれて、23:30を選択、38RM(約1,030円)支払って、その場でチケット発行。超楽勝。
「乗り場はどこ?」って聞いたら「今から案内するから、ちょっと待ってて」と言って、後から来た客の会計した後、「じゃ着いて来て」と兄ちゃん歩き出した。
LOUDNESSのバンT着てガンガン進む兄ちゃん。
横断歩道ない道路もさくっと渡り、歩くこと2,3分、NEW ASIANって書かれたボロい旅行代理店みたいなところに着く。出発1時間前までにはここで待っててね、とのこと。1時間前て、早いな・・・。
バスチケットも買えたし、乗り場も分かった。
一安心したところで、さて、次はどうしよう?観光スポット巡りもしたくないので、またふらふら町をうろつくことにする。
しかしまぁ、どこを通っても絵になる町だなぁ。
アートの町と言われるだけあって確かに色々なところにストリート・アートの類があるけど、そういうの抜きにしてもただ建物や町づくりが面白くて美しい。
歴史を偲ばせるだけでなく、この町で普通に仕事し生活してる地元の人々の息づかいを感じられるのが良い。
しかし、やっぱり気になるのは裏道だ。
特にこの町の裏道は、その先に何があるのかつい覗いてみたくなる空気が流れ出ている。
特にこの道。先に見えるものに目を奪われた。ひょっとしてアレは・・・
当たりだ・・・団地だ。
裏通りを少し入った奥に、表から隠れるように2棟の団地が建っていた。
それぞれ少し間を空けてL字型に並んでおり、中央はフランスのアパルトマンの中庭のようにぽっかり空間が空いている。
駐車場としては十分過ぎるそのスペース内には、小さな祠もあった。
1階の表口は工場(こうば)になってたり、何か商いをしている様子だ。
屋台車も出てる。
この空間の中で小さな経済圏が存在してることが想像できる。
団地の周りの小道を回ってみると、決して邸宅とは呼べない、トタンとベニヤが打ち付けられた家屋が並んでいた。
裏の勝手口の前では、妙に若々しい恰好をした中年の女性が腰かけてレッドブルを啜っていた。
視線が鋭い・・・。
今更だが俺みたいな余所者があまりうろつくべき場所ではないのかもしれない・・・。
表通りへ戻った。
しばらく他の裏通りも歩いてみたが、さすがに数時間も炎天下の中さまよってるとバテてくる。本日の気温も35℃近い。たまらずまたどこかで休憩したくなってくる。
そんな時、一軒のバーを見つける。
Hong Kong Barというのがその名前である。
なんとも言えない独特のバイブスを放っている。
決して洒落てるとは言えない、が、趣きがる。
ここで1本ぐらいビール飲んで喉を潤すのも一興だろう。
中に入るとおばちゃんがカウンターで寝てる。申し訳ない気もしたが、遠慮していても始まらないので声を掛けて起こし瓶ビールを1本注文する。
Tiger Beer大瓶で20RM(約540円)。
マレーシアはお酒高いと聞いていたので覚悟はしていたが、確かになかなか良い値段するな・・・。まぁ1本くらいならヨシとしよう。
店先のテラス席でタバコをぷかぷかしていると、おばちゃんがビールと一緒に一冊のノートとペンをテーブルに置いてった。
中を開いてみると、たくさんの人の手書きで名前や日付、そして一言が書き添えられていた。
これは面白い、ここのお客の寄せ書き帳だ。
ここ2か月分くらいの寄せ書きでノートの1/3くらいが埋められていた。
なかなか興味深いので、自分のを書いた後他の人のコメントを読んでしまう。アメリカやヨーロッパに中国など、世界中の色々なところから人が来ている。オーストラリア人が一番多い。
ここって実は有名なバーだったのかな?(ちなみに日本人の書き込みはひとつもなかった。)
パラパラと見てると『今回で3回目です!』などとリピーターが多いことがわかった。中には『20年ぶりに来ました』なんてのもあり、「おーやっぱり結構古くからやってるお店なんだな~」と感心してた。
しかし次のコメントを見て度肝を抜かれる。
『私が最初に来たのは1969年でした』
―えっ?!50年前!!?!?
思ってたよりずっと古い店なのか・・・。改めて看板を確認してみると・・・
SINCE 1920!!!
なんともうすぐ100周年の超老舗だった!!!
もう少し寄せ書きを読んでいると、「最初に来たのはRCBでした。〇年前の話です」というように、RCBという単語が良く出てくる。
RCBって何なんだろ?
店内にその答えがあるかもしれない。改めて壁に掛けてある様々な盾やプレートなどを眺めてみた。
やはりRCB関連のモノでいっぱいだった。
RCBというのはRifle Company Butterworthの略らしい。
しかし肝心のそれが何なのかが分からない。オーストラリアが関係しているのは間違いなさそうだ。(オーストラリアの客が多い理由もこれで分かった。)
しばらくプレートを巡ってみたが一向に分からなかったので、店のオヤジさんに聞いてみる。
「RCBって何ですか?」
「RCB?あーRCB。うーんRCB・・・」
どうやら英語で説明するのが難しいようである。オヤジさんを困らせたくなかったので、大丈夫ですサンキューと断って後で自分で調べてみることにした。
ちなみにこのバーは15年ほど前に火事で全焼していたことが壁に掛けられた新聞記事で分かった。建物は一度失ってしまったが、多くのファンに支えられて今日まで営業を続けられているようである。
さて、RCBことRiffle Company Butterworthの正体だが、後でネットで調べてみると
「マレーシアのバタワースに拠点を置くオーストラリアの歩兵隊」
とのことであった。
バタワース(昨日船乗って来たところ)にはマレーシア空軍の基地がある。1960年代後半から起こった「マレーシア共産党の反乱」に対し、オーストラリア軍がマレーシア軍を援護し基地を防衛する目的から1973年にそこで設立されたのが、RCBである。反乱は1988年には収束したが、その後も訓練の目的から定期的にオーストラリア軍の兵士が送られ、マレーシア軍とも共同訓練に当たっているようである。
なるほど。訓練キャンプで送られてきたソルジャー達の憩いの場がここHong Kong Barだったというわけだ。
しかしこの店の創立はRCBよりずっと古いし、RCBより前に来訪している客もいるわけだから、店に刻まれた歴史はもっと深いようである。
たまたま見つけてふらっと立ち寄った店がペナンでも最も古いバーだったとは、偶然とはいえ面白かった。
一旦宿に戻った後、晩飯を食いに出る。
今夜の飯はもう決まっている。「中華」だ。
町中の中国語を見ていたら腹がそうなった。華僑の多い町だし、きっと美味い中華が食えるだろう。
宿の近場でちょうど中華料理屋が並んだ通りがあること日中発見したので、そのあたりを物色してみる。
ちょうど良さそうな店を見つけたので入る。
客もぼちぼち入っていて雰囲気も庶民的。
お店のおばちゃんが何か色々薦めてくるけど、どれも微妙に高い。
色々おばちゃんにリクエストして相談した結果、というか結局、焼きそばみたいのを頼むことに。
出てきたのがコチラ↓
ビィミョ~・・・。
見た目これ残p・・・いや、重要なのは味だ。
うん、味も微妙だった。
別に不味くはないよ。アメリカで食うチャイニーズみたいな味。
お値段、コーラ入れて7R(約190円)。
割高感強し・・・普通に期待外れだった・・・。
この店はこれで切り上げて、もう1軒行ってみることに。
次に選んだ店がこれ。
店前のオープンキッチン(?)に、奥に製麺機みたいなのが見える。
見るからに「ウチで手作りしてます!」って店構えだ。ここなら期待できそう。
メニューの一番上にあったこの店の名物らしい雲吞を頼んだ。
きっと店頭の機械で皮から作ってるのだろう。期待に胸が弾む。
出てきたのがこちら。おお、見た目はイイぞ。早速ひと口運ぶ。
(´-ω-`)
ん・・・なんか・・・なんというか・・・
臭い
おそらく海老だと思うのだが、発酵した干し海老のような、独特の風味がする。
海老のプリプリ感が味わえると期待していたのだが、全くない。
むしろ海老の殻がちょいちょい混じっててガリっとする。
餡には豚肉も混ぜてあると思うのだが、ジューシーさもない。
スープはそれほど悪くはない。何かの乾物で出汁を取っているのか、本格的な味わい。
お値段6.55R(約177円)。はっきり言ってこれも期待外れである。
ひょっとしたらコレが本格的な海老雲吞なのかもしれない。俺の味覚が外国人舌なのかも・・・。
でもコレ食うなら普通にタイの飲茶食った方がプリプリジューシーで100倍美味いよ、正直。
ペナンに来てから昼まで飯ハズレなしだったので、ここに来て夕飯二連敗したショックはでかかった・・・。
若干の失意を抱えたまま、またあの中華小商店のような宿にとぼとぼ戻るのであった。
ちなみにこちら↓がそのホステル Red Inn Courtである。
俺の部屋は2人部屋2段ベッド1台という刑務所みたいな狭さだったが、雰囲気はgood。
あと翌朝子猫が大量に走り回っていたので、猫好きも嬉しいかもですね。
とりあえず、今日はもう寝る。
(2月11日。晴れ。明日へ続く)