見出し画像

アメリカ国内で流行中の高病原性鳥インフルエンザは脳にも影響を及ぼす可能性

ここのところアメリカ国内における高病原性鳥インフルエンザ(以下HPAI)H5N1型の動きに注視しているのですが、また少し気になる論文がリリースされました。
タイトルは「マウスにおけるベトナムH5N1株と比較した乳牛由来H5N1株のより強い脳炎感染性」。

現在アメリカではHPAI H5N1型が哺乳類間で拡がりを見せており、すでに乳牛の間ではかなり感染が拡がっているとみられています。
インフルエンザウイルスは構造上変異しやすい性質を持っているのですが(この性質のおかげでワクチンが効く効かないがしばしば問題になる)、現在乳牛の間で流行っている株がどんな性質をもっているかしっかり調べてみましたというのが本研究の主旨になります。本研究では組織嗜性、つまりどの組織でウイルスが増殖するかにフォーカスを当てています。

比較対象として同じH5N1型で2004年にヒトの致死例から分離された株(以下ベトナム株)を使ってマウスへの感染実験を実施したところ、以下のことが判明しました。
✓ いずれの株でもマウスは致死的な結果となった
✓ 2株間では組織嗜性に大きな違いが出た
✓ ベトナム株ではウイルスの増殖は呼吸器に限られたのに対し、乳牛から  
  分離された株は呼吸器だけでなく、脳においても増殖が認められた
✓ 乳牛から分離された株に罹患したマウスは神経症状を呈した

神経系まで侵されるとなるとかなりやっかいな印象です。
先月下旬のWebinarにおいては感染乳牛は神経症状を呈したという話はなかったように思いますが、この辺りついては今後詳細な報告が出てくるものと思います。

アメリカ国内だけでなく世界規模でもHPAIの哺乳類における感染拡大が予想以上のスピードで進行していることを示唆するデータもあります。
グラスゴー大学の研究グループは、アジア(モンゴル)の馬の間でH5N1型のHPAIがすでに感染していたことを発表しました(12/12)。
https://www.heraldscotland.com/news/24790236.glasgow-research-shows-bird-flu-horses-running-unchecked/?ref=yahoo

馬自体はHPAIに感染しても無症状だった可能性が高いのですが、すでに馬が持っているインフルエンザウイルス(馬インフルエンザウイルス H3N8型)と合わさることで、未知の新たなウイルスに変異する可能性があるため馬の監視体制を強化する必要性があるとしています。


いいなと思ったら応援しよう!