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逆ブルーロック 2話

日本サッカーがW杯優勝するために
世界一のストッパーを誕生させる
その計画の元に俺たち300人の高校生DFは
充分な食事と衛生設備が整っていること、緊急事態以外は外部と連絡を取れないことを説明され
健康診断を受け、アレルギーなどを確認した後に
希望制で保険に加入した上でバスに乗せられて
群馬の山を越えた先に、それはあった

(これが逆ブルーロック…俺のサッカー人生が変わる場所)

バスから降りて荷物を預け、1人ずつにボディスーツが配られた

(291Z…何の番号だこれ…)

コンクリートで出来た部屋を進み、Zの部屋を開けた

「伊太利くん!よかった、知ってる人が同じ部屋で…」

「流くん、俺も安心だよ」

部屋を見渡すとガタイの良い奴や足の速そうな筋肉をした奴が居た、俺を含めて全員で11人、恐らくこのメンバーでチームを組むのだと思っていた

「失礼します!」

「12人目?」

「うお!キミ流荒太アーノルド!?
すげー!日本サッカーの宝!本物じゃん」

「あ、どーも」

「伊太利って子も友達?よろしく!
俺、間口排也(まぐちはいや)っていいます!」

「あ、ども…」

「俺さ、寺の息子なんだよね!高校卒業したら寺を継ぐ運命だったんだけどさ、プロサッカー選手になれたら継がなくていいって親父と約束したんだ!
だから利他の話を聞いて震えたね!人生を変えるチャンス来たって感じ!」

「俺と同じじゃん、よろしくね」

(あ、この人300だ)

『着替えは終わったか?才能の原石共よ』

(出た…利他カテナチ男)

『今同じ部屋に居るメンバーはルームメイトであり、高め合うライバルだ
お前らの能力は俺の独断と偏見で数値化されランキングされている、肩の数字がそれだ』

(291位…微妙だ)

『そのランキングはトレーニングの成績や試合結果によって変化する、そして上位5名は半年後に行われるU-20W杯のDF登録選手とする』

『書面でお伝えしたように、逆ブルーロックで
敗れた奴はこの先、一生日本代表に入る権利を失う、ここで勝ち上がるために必要なのは"アルトゥリズム"だ、今からその素質を測るための入寮テストを行う』

『さぁ鬼ごっこの時間だ』

天井からボールが落ちてきた

『制限時間は136秒、ボールに当たったやつが鬼となりタイムアップ時に鬼だった1人が帰る野郎だ』

(え…は?)

『あとハンド禁止、以上』

モニターには間口排也の名前が映し出されている

「300位の俺が最初の鬼かよ…」

(なんなんだよいきなり…これサッカーと何の関係あるんだよ、俺身長高いから当たりやすそうだし何か手を打たないと…)

「間口くん!きっとアイツの言ってることはハッタリだよ!」

「ホントだったらどうすんだよ!
負けたら一生寺の坊主…負けたら一生寺の坊主…」

(ダメだコイツ…早くなんとかしないと…)

間口に背を向けて走り距離を取る、直後ボールを蹴る音が聞こえた

「うぉっ!」

「クソ!惜しい」

(マジかコイツ…)

本気で俺たちを蹴落としに来ている、あと2分間本気で逃げ続ければならない

「馬鹿げてるよこんなの…こんな遊びがトップトレーニングとは思えない」

「流くん!」

「こんな2分ちょっとのボール当てでサッカー人生を決められるなんて間違ってる!あんな奴に僕の未来潰されてたまるかよ」

(この人走りながら冷静に考えてる…)

間口が蹴ったボールにパーマ頭の男が飛びつき肩に当たった

「しまった…つい癖で」

BLランキング 294位 半大駆(はんだいく)

「よっしゃ南無三!」

「くそ…誰かに当たれ!」

半が横の壁に思いっきり蹴った
壁に当たったボールが伊太利の目の前まで来る
避けようとした時、後ろから間口に押されてボールに当たってしまった

「南無三!」

「伊太利くん!?」

(ヤバい…あと1分 当てなきゃ俺のサッカー人生が終わる)

しかし、全員身体能力が高くただ蹴っているだけでは当てることが出来ない
自分からボールが離れないように壁に当てて跳ね返しながら5人を何とか端に追いやった

「へい!」

間口が誰かを羽交い締めにしている
チャンスだと思い近づいた

「お前いい加減にしろ」

羽交い締めされていた男が背負い投げで間口を床に叩きつけた

BLランキング290位 帝庵ロメ郎

「これでおあいこな」

仰向けになっている間口に近づく

「ちょ待て…来んなって!
さっき狙ったの謝るからさぁ!」

「当てろ!伊太利くん!」

(勝てる…今当てれば生き残れる)

「やめろ…頼む…」

間口は動けない、残り時間も少ない

(いや…ここでただのラッキーで生き残っても、これから先も生き残れるとは限らないよな?)

「おい間口、俺に命令しろよ」

「へ?」

「ピンチの時に現れて、命令を忠実にこなす、
それがディフェンダーだろ?」

「何言ってんだ伊太利くん!」

(ほんとだよ、何言ってるんだ俺…
でもこうでもしなきゃ変われないよな)

間口が指を差した

「流に当てろ!」

「イエッサー」

振り返り、流に向かって走っていく
避けるのが上手く、まだ全く息も上がってない
どうやって当てればいいか全然分からないが、何故か当てれる気がした

「訳わかんないよ伊太利くん!」

「一番強い奴…」

流の顔に向かってボールを放った
今まで足ばかり狙われていたため反応が遅れる
鈍い音が鳴り、流の鼻血と共にボールが宙に浮く

「…っし」

残り時間2秒、流が後ろに仰け反った
残り時間1秒、流が足を伸ばした

「フザけん…なっ!」

「…?」

ボレーでボールを放った
軌道の先には間口が居た

「はんっ?!」

ボールは間口の下腹部に当たり、その直後に部屋にブザーが鳴り響いた

『おつかれ才能の原石共よ、ここでは結果が全てだ、敗れた者は出ていけ!
間口排也 失格!』

「嘘だろ…やっと掴んだチャンスなのに…」

狼狽する間口に流が近づく

「おつかれ、じゃ寺の後継ぎ頑張ってね」

「クソ…」

間口は流を睨みつけ、部屋を後にした

「流くん…?」

「僕はまだ認めてないけどね…こんなのサッカーじゃない、理不尽なお遊びじゃないか」

流がロッカーにもたれかかった

『その部屋の広さは16.5×40.32M、ペナルティエリアと同じサイズだ、ディフェンダーとフォワードがこの戦場でシノギを削り合う…』

「じゃあ鬼ごっこにはなんの意味があるんだよ」

『逃げる側に要求されるのは対人感覚、駆け引き、ポジショニング
追う側に要求されるのはドリブルやキック精度
サッカーに必要な要素が詰まっている』

「だったら2分ちょっとで何がわかんだよ、サッカーは90分だろうがよ」

『1試合で1人のプレイヤーがボールを保持できる平均時間は約136秒、その限られた時間で結果を残せる選手しか必要ない、ディフェンダーに必要なのは最後まで逆境に耐え抜く集中力だ
倒れた間口ではなく流を狙った伊太利ヨイッチ、
逆に最後まで諦めずに間口を狙った流荒太アーノルド、それこそがチーム、そして己を守り抜くためのストッパーとしての精神力だ』

「よくあそこで狙ったよね、流石だよ流くん!」

「黙れ伊太利くん…」

「あ、ごめ…」

『喧嘩は後にしろ才能の原石よ、まずはおめでとう
逆ブルーロック入寮テスト合格だ
部屋に居るのはちょうど11人…お前らはこれから生活を共にする運命共同体、チームZだ』

(この雰囲気でチーム?めっちゃ気まずいなぁ…)

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