第9話「共鳴」( ^ω^)ブーンがスーパーサブとして流れを変えるようです
後半49分 ブーンがドクオと交代し、ピッチに入った
( ^ω^)(その場から見ると本当に目が回りそうな凄いパス回しだお)
毘府高校は前半、このパス回しに苦しめられた
('j v i')(監督に言われた通り、パスカットで嫌な流れを断ち切るぞ!)
中浜がスライディングで飛びついて弾き、ブーンがこぼれ球を拾った
( ^ω^)(タンタタンタンタン)
[;"_"](この子ドリブルが上手い!)
ボールが足に吸い付くかのように、滑らかなタッチで瀬戸を躱した
( ^ω^)(これ行けるお!)
ブーンはワンツーでの抜け出しを図り、草野に預けた
しかし、草野は反転して自分でシュートを放ち、大西に止められた
ブーンが良い位置に居た事に気がついたのはボールを失ってからだった
(;0 L0)「すまん、そっちに出せばよかったな」
出してくれれば決定機だった
だがブーンは先輩に対してあれこれ文句は言えないと思った
( ^ω^)「後ろは見えないんでしょうがないですお
次に備えてまたチャンスを作りましょう」
自分のポジションに戻ったブーンに、近藤が声をかけた
(= Δ=)「おい左京」
( ^ω^)「はい?なんですかお」
(= Δ=)「アイツは馬鹿だから、ちゃんとパス要求しないと自分で撃つぞ」
( ^ω^)「ちょっ、馬鹿って言い過ぎですお」
(= Δ=)「まぁ事実だしな、なんで左京はもっと自分から要求しないんだ?」
( ^ω^)「それは…一年生があれこれ言うより先輩を頼った方が良いかと」
(= Δ=)「一年だからどうした、ピッチ上で年齢なんか気にするな、必要なら俺にもどんどん要求しろ」
( ^ω^)(気にしないってのはどうなんだお?でも深い言葉だな…)
( ^ω^)「ありがとうございます、やってみますお!」
(= Δ=)「頑張れよ」
今度はみなも水産ボールになり、毘府は守備に移る
中央の深い位置で伊藤がボールを受け、持ち前のスピードで攻め上がってくる
白木が伊藤に寄せる
伊藤が左足で浮かせてに躱す、ボールが離れた所を天野がワンタッチで近藤の方に飛ばした
( ><)「近藤さん!」
(= Δ=)「よし、天野ナイス」
(´・ω・`)「彼、よく見えてるな」
近藤は長くボールを持たずに2タッチ目で水戸にパスする
この時ブーンは自分の左前にスペースがある事に気づいた
水戸がパスを受けた時には既に島と太田がプレスに向かっていた、ここで奪われずにパスを出してくれればチャンスになる
( ^ω^)ノシ「水戸先輩!」
自分の右には瀬戸が居る
ならば左のスペースに抜ける動きをしたい
だがここで「左にパスを出せ」と口に出して言えば相手に警戒すべき場所を教えているようなものだ
相手にバレずに裏を取りたい
この水戸からのパスが鍵になってくる
( ^ω^)ノシ(気づいてくださいお…こっちに、外側に出してくださいお)
ピッチの中央に向かって走りながら左手を振る
('_L')(なるほど、ここで出せばサイド空くな)
ブーンの意志を感じ取った水戸が、左のスペースにスルーパスを出した
[;"_"]「うわそっちかよ!」
( ^ω^)「完璧っす水戸先輩!」
左に切り返し、空いたスペースに向かって駆け上がる
水戸からのパスはブーンと瀬戸の間を抜け、左前のスペースへと転がる
タッチラインに近いブーンが先にボールに追いつき、駆け上がる
ブーンが1人で抜け出したため、みなも水産のディフェンス陣が慌てて対応する
3バックは本来ゴール前でコンパクトに固まって守るシステムである、
選手同士の間隔が開いてしまえば無力だ
かと言ってサイドをガラ空きにする訳にもいかない
(-_-)「半田!14番追いかけて!」
サイドを走るブーンに半田を向かわせた
瀬戸も急いで戻って来る
( ゚レ ゚)「個人の力で組織の力に勝てると思うなよ!」
(^ω^ )チラッ
ブーンが中を見ながら縦に走る
( ゚レ ゚)(パスか…?)
ブーンがパスを出す振りをして左足でボールの上を空振り、
すぐ逆側に振って左足アウトフロントで押し出した
半田がフェイントに引っ掛かってバランスを崩す
(;゚レ ゚)「やられた!」
てっきりパスを貰えると思っていた伊織も膝をつく
(=;゚ω゚)ノ(僕まで騙してどうすんだよう)
今度はサイドではなくゴールを目掛けて走り出す
逆サイドの速水はまだ自陣に戻り切っていない
残るは小森とキーパーの大西のみ
だが、まだペナルティエリアの中まで入れていない
このままシュートを撃っても成功確率は低いとみて、
シュートは撃たずにドリブルを続ける
(;-_-)(もう俺が止めるしかないな)
(#-_-)「うおおおおぉ」
正面から向かってくる小森をルーレットで躱す、
体を回転させながら横にボールを遠ざけることで突っ込んでくる相手と距離を取る事ができる
(#-_-)「クソっ!大西飛び出ろ!」
あとはキーパーと1体1、顔を上げ前を向いた
( ;^ω^)(うわ近っ!)
大西がすぐ前まで飛び出してきていた スピードに乗っているためボールをコントロールするのが難しい
( ^ω^)(小細工無し!強気で行くお!)
ここは強気にインステップで縦に突破した
(;@、@)「マジかよ!!」
横向きに手を伸ばした大西を飛び越え、自分で蹴ったボールを追いかける
あとは無人のゴールにシュートするだけだが、
縦に突破した時、大きく蹴りすぎた
このままではゴールラインを割ってしまう
そうなれば試合は同点のまま相手のゴールキックになってしまう
自分のドリブルで生み出した圧倒的なチャンス、それを無駄にはできない
(;゚ω゚)(追いつけえぇぇぇぇぇぇ!)
白線に重なるボールに左足を伸ばし、身体を捻り横に振り抜いた、その時スピードに乗ったブーンの身体は大きくバランスを崩し転倒した
背中が地面に触れ、そのまま右回転で転がって行く
( ; ^ω^)(;^ω^)(^ω^ )( ω^ )(ω^ )
( )( ^ω)( ^ω^)「うおおおおぉ」
芝ではない場所で転んだ、衝撃を和らげるために肩を守るように転がった
( ;^ω^)「いっててぇ〜」
(・∀・)「おいおい、1人でネイマールチャレンジか?」
盛山がジョークを飛ばす
ネイマールチャレンジとはネイマールがファウルを貰うために大袈裟に倒れる事である
誰にも足をかけられていないが、今のブーンはネイマール並にド派手に転んでいた
体を起こし、盛山の手を借りて起き上がった
( ^ω^)「えっと、ゴール決まりましたかお?」
ブーンはボールの行き先が見えていなかった
(・∀・)「この歓声聞いたら分かるっしょ?」
( ^ω^)!
「ワァアアアアアアアアアアアアアアア!」
目の前のプレーに集中していて聞こえていなかった
言われて初めて気が付いた歓声
耳を傾けると、と言うより傾けなくても、自然とスタジアムの大きな歓声が耳に届いていた
58分 GOAL 毘府高校 ( ^ω^)左京文一朗 3-2
( *^ω^)「すげ〜地区一回戦でこの盛り上がり」
(・∀・)「盛り上がってる全員、お前が沸かせた観客だゾ」
( ^ω^)「俺が…夢みたいッスお」
ゴールの中に入り、自分が蹴ったボールを自分の目で確認した
それはしっかりとラインを超えていた
(;@、@)「くそぅ…」
(・∀・)「な、夢じゃねぇだろ?」
( ^ω^)「はい!」
それを拾い上げて頭の上に掲げた
( ^ω^)「やったおぉぉーーー!」
試合の流れを大きく変える
自分にとってもチームにとっても
大きな大きな初ゴールだ
みなも水産ボールで試合は再開される、
ブーンのゴールで毘府は勝ち越し、試合は有利に進めることができ、落ち着いてプレーできる
一方、みなも水産は一点を追いかける形となった
パスにも焦りを感じる、強引にでも縦パスを通そうとしている
ここは狙い目だ、毘府のみんなでボールを追いかけ回し奪いに行く
('_L')「おい走れ左京!足が止まってるぞ」
( ;^ω^)「は、はひっ!」
(#'_L')(こいつディフェンス下手すぎ…)
中浜がパスをカットし、ボールが東にこぼれる
東はブーンにパスを渡した
∫ ∫一Å一)「ここは君に託すよ」
明らかに相手の意識がこちらに向いている
ここまで手厚く守られては突破は難しい
だが、片方に人数をかければその分反対側の人数が足りなくなる
右サイドに大きくフライパスを出し、サイドチェンジを行う
盛山が自分の前に出来た空白のスペースに走り、
パスを受け取った
(-_-)「速水!10番に付け」
盛山が中を見ながらシザースで進んで行く
∑・ν・)(なんだコイツ、全然ボール見ないじゃん)
一気には攻め込まず、時間を使いながらシザースをする
∑・ν・)(カットインを狙ってるのか…?)
盛山が身体を左に傾け、左足を踏み込んだ
踏み込んだ足とは逆の右足はボールを跨がずに
アウトサイドで右サイドに蹴り出しそのまま走る
∑・ν・)(右に動いた!あれ、ボールが無い?)
ボールと盛山が速水の前で二手に分かれ、盛山が右・ボールが左を通り過ぎる
∑;・ν・)(パス?うわ、サイドバック どフリー)
盛山から出されたパスに走り出し、長岡が縦に突破する
∑・ν・)「元陸上部の底力見せてやる!」
( ゚∀゚)「げっ!足速すぎだろ」
速水の脚力であっという間に差を縮められる
そして追いつかれた、しかし速水はスピードに乗りすぎている
長岡がボールに足裏を乗せてスピードを殺し、切り返す
∑;・ν・)「止まれねぇ!」
スピードに乗った速水を引き剥がした
そして中に走り込んだ盛山を目掛けてパスを蹴り込む
( ゚∀゚)「低め!!」
ペナルティエリアで盛山がパスを受ける
(・∀・)(あとは当てるだけ)
確実に枠に入れるために、落ち着いて右足のインサイドに当てる
ニアサイドに浮かせずに決めた
73分 GOAL 毘府高校 (・∀・)盛山義孝 4-2
(*・∀・)「ひゃっほーい!ついかてーん!」
( *^ω^)「ナイスですおー!盛山先輩!」
('_L')「はしゃぐな、まだ2点差だ」
相手ディフェンダーがブーンを警戒し過ぎたことにより生まれたスペースを、盛山と長岡が崩したことによって決まったゴール
響き合う音叉のように
2人のサイドハーフが’共鳴’する
____毘府高校・ベンチ____
(’A`)(この試合は神回だな)
普段は他人の試合など全く興味を示さないドクオも今回ばかりは釘付けになっていた
(’A`)「伊織先輩、なんかブーンのドリブルって盛山先輩より進みが速くないっすか?」
(=゚ω゚)ノ「うーん、それは左京君が能動的、盛山が受動的って感じのドリブルだからじゃないかな?」
(’A`)「と言うと?」
(=゚ω゚)ノ「左京君は自分からどんどん仕掛けて行く感じがするね 対して盛山は相手を見て躱すタイプだね」
(^д^)「それに盛山は横に躱す事が多いけど、ブーンは縦に突破したり、さっきみたいにルーレットの流れで走ったりしてるから減速しずらいんだと思う」
(=゚ω゚)ノ「だね、横に躱してから前に行くとなるとどうしてもタイムラグは生まれるよね」
(’A`)「なるほど、そんな違いが」
(=゚ω゚)ノ「盛山は【躱すドリブル】左京君は【抜くドリブル】って感じかな」
2年生の選手達は試合を見る事で、新メンバーである一年生のプレーの特徴も掴んできた
(;-_-)「くそっ…あの14番のせいでSAN値が削られる…」
次第にみなも水産のパスの波は弱まっていった
理由は単純、スタミナ切れだ
みなも水産はパスでボールを運ぶため、
ドリブルで運ぶよりは体力を要さない戦術と言えよう、
しかし、いくらパスを回しても、走らなければパスを受け取れない
体力に自信の無いブーンにとってはよく分かる
時間が経つほど足が動かなくなるのだ
これは毘府にとってチャンスである
( ^ω^)「近藤先輩!こっち空いてますお!」
走りながら受けて抜け出そうと試みたが、
副審の旗が上がり、オフサイドとなった
( ^ω^)「近藤先輩もっと上がってパスを出て欲しいですお」
(= Δ=)「おっ、先輩にもガンガン指示出すようになったな だがそれは無理だ」
( ^ω^)「ドクオが居た前半はもっと高い位置取ってたじゃないですかお」
(= Δ=)「お前の守備力じゃ任せて上がれねぇ」
( ^ω^)「で、でも相手の動きは弱まってますし、攻めるなら今ですお」
(= Δ=)「そうやって意見を言ってくれるのはありがたい、だがここは譲らない」
(;´ω`)「そうですかお」
でも、相手はパス回しとプレスを掛けるディフェンスをして走り回っているため、徐々に疲弊してきている
自分1人でドリブルを仕掛けても、2点目を狙える可能性は高い、であれば…
( `ω´)(自分で狙うお!)
カットインで進み、シュートを打ち込んだ
ボールは左ポストを叩き、こぼれ球を半田に回収される
(;゚レ ゚)「ハァ…危ねぇ」
シュートはゴールにならなくても試合に影響を与えることがある
今のシュートは半田の脳裏に深く植え付けられた
みなも水産のディフェンス陣は毘府高校の攻撃に押され、
こうやって精神をすり減らされている
(-_-)「3バックは諦めた方が良さそうだな」
["_"]「じゃあ俺が下がります」
(-_-)「あぁ、頼んだ」
どうやらみなも水産は攻撃的だった盤面を下げて4バックにし、守備に転じたようだ
それなら逆転される可能性は低くなる
こちらにとっては好都合だった
('j v i')「ガチガチに守られてて出せないな…どこかにパスコース無いか?」
(✧─✧)「そこになければ無いですね!」
('j v i')「ダイソー店員かよっ」
東が一旦下がってパスを受ける
みなもの守備陣がパスコースを塞ぎつつ、島が前に出て奪いにきた
(✧─✧)「パスコースは無いぞ!どうする?」
足を出してきた島を東は落ち着いて右に躱した
∫ ∫一Å一)「でもシュートコースはガラ空き」
狙いすましてカーブをかける、東のコントロールカーブが大きな弧を描き、みなもディフェンス陣の頭上を超え、右上に決まった
86分 GOAL 毘府高校 ∫ ∫一Å一)東 修平
∫ ∫一Å一)「よし」
みなも水産の選手達は小柄な選手が多いため、頭上にシュートを撃てるスペースがあった
(;-_-)「ミドルシュートか…」
これで毘府の二列目の選手全員がゴールを決めた
点差は3点まで開く
ボールをセンターマークまで運ぶみなも水産の選手の足取りは確実に重くなっていた
島のパスで試合再開すると共にブーンがチェイシングする
(`ω´)「おおおぉぉぉぉぉ!」
(; •̀=•́)「この時間でのハイプレスはキツい…」
佐藤から瀬戸にパスが渡る、ブーンは方向を変えて追いかけまわす
[;"_"]「はや…」
バックパスで難を逃れる、ディフェンスラインが大幅に下がった
(`ω´)「まだまだぁぁ!」
他の選手も前線に走り、ボール回収を試みる
最終ラインまで追い込み、ブーンがプレスをかけるが、半田がダイレクトパスで左にサイドチェンジした
( ;^ω^)「全然奪えねぇお…」
('_L')「守備力低すぎるな」
みなも水産のディフェンス陣はスタミナが切れた状態でも連携を取り、ボールを保持している
('j v i')「パスカットォ!」
相手がパスを回しているならこの男の出番だ
手薄になってきている中盤ではパスコースは限られる、中浜から長岡にパスが渡り
草野を狙ってクロスを上げる
( ゚∀゚)「あー、パス伸びすぎちゃった」
キーパーの大西が飛び出し直接キャッチする
(@、@)「みんな上がれぇぇ!!!!」
勝敗はついたようなものである、それでも、
みなも水産の選手たちの目の輝きが消えることは無かった
(#@、@)「あと一点!!!」
(-_-)「ナイスだ大西!」
みなも水産の選手達が一斉に走り出し、
フィールド上に再び渦を巻く
まさにラストスパートと言った攻撃だ
(#'_L')「戻れ左京!」
(;´ω`)「くっ…」
(= Δ=)「燃料切れだな、まぁ予想通りだけど」
この時間帯で全員体力は衰えている
だが、パスワークは依然として衰えず安定している
人の壁を通しながらボールを前へ運んで行く
∑・ν・)「こっちだ!」
(;j v i')「うわっ、めっちゃ上がってきてる?!」
( •̀=•́)「よし!いいぞ速水!」
速水がウインガーの江口の横の位置までインナーラップし上がって来ていた、
その江口にボールが渡り、左にサイドチェンジする
〈+△+〉「もうこの際ポジションなんか関係ねぇ!」
(;゚∀゚)(やばいこっち手薄だ)
江口がファーストタッチで外側に動いてパスコースを開け、
速水へのスルーパスを供給する
(; ゚∀゚)(この2人思った以上の個人能力持ってるな
それに俺達以上のオーバーラップ攻撃だし)
みなも水産の波は止まらない、速水が深い位置に入り込み、
マイナスのボールを蹴り込む
(✧─✧)「見ろよ健潤!みんな自分のやりたいサッカーやってんぜ!」
(↑。↑)「あぁ、俺達がずっとやりたかったサッカー、こんなにも楽しいもんなんだな」
(✧─✧)「健潤!お前はどうしたい?」
(↑。↑)「最後は自分のゴールで終わらせたい!」
(✧─✧)「よく言ったぜ健潤」
島がボールの下を叩きダイレクトパスを送る
下回転のかかったボールがまっすぐ伊藤の所まで届く
(#'Д")「戻れぇ!」
伊藤は胸トラップでボールを足元へ落とした
(#↑。↑)「いっけー!」
そして右足インステップで撃ち込んだ
(;↑。↑)「っ…!」
シュートは新田の正面からやや右に飛んだ
威力は申し分なかったが、新田が簡単に両手で抱え込み受け止めた
(´・ω・`)「良いシュートだが真っ直ぐすぎるな」
新田がパントキックで大きく蹴り出し、笛が鳴った
試合終了
(;↑。↑)「なんで…前半はあんなにコントロールの良いパス出せてたのに、
なんでシュートだとこうなるんだ俺は…」
〈;+△+〉「え?すこーる、もしかして泣いてる?」
(*↑。↑)「泣いてねぇよ!ニィッ!」
〈;+△+〉「ビビった〜」
(↑。↑)「悔しいけどな、最後は笑顔で挨拶して帰ろう」
「ありがとうございました!」
____毘府高校 ロッカールーム____
みんなで勝利の喜びを分かち合っていた
(*・∀・)「飲め飲め、イッキ!イッキ!」
(;'Д")「炭酸でイッキはキツいわ!」
(;'_L')「あんまりこういうところでジュース飲むな!あと絶対こぼすなよ!」
喜びの感情を剥き出して騒ぐ部員の前に立ち、
水戸が持参のホワイトボードを掲げた
('_L')「今日のゲームの振り返りします 成功をまぐれで終わらせないために、
失敗は繰り返さないために、しっかり振り返りましょう」
(・∀・)「うお、クソ真面目出たよ」
('_L')「今年からは俺がキャプテンなんでね、俺なりにチームをまとめる方法を考えました」
('j v i')「いいんじゃない?PDCA大事だもんね!」
騒いでいた部員達も一旦落ち着いて席に着き、
今日の出来事をホワイトボードにまとめていった
('Д")「まず前半の先制点の献上、パスで崩されていたことが原因だな」
('_L')「次に霧島のパスから伊織の得点」
(=゚ω゚)ノ「パスが強めだったから、浮かせてループで決めたよう」
(’A`)「もっと弱めのパスでもよかったすか?」
(=゚ω゚)ノ「いや、あれくらいなら僕のスピードで追いつけるからそのままでいいよう」
(’A`)「分かりました」
('_L')「次、前半最後の失点、9番羽庭の執念のゴリ押しゴール」
(= Δ=)「ショートコーナーからの失点だったよな」
(´・ω・`)「島のシュートも凄かった」
('Д")「スマン、あそこでプレーを止めなければ防げたかもしれない」
('_L')「いやそこじゃないだろ、多分プレー続けててもPKだったし」
('Д")「えっとじゃあ、水戸から見てどこが良くなかった?」
('_L')「その前のクリアミスだ、あそこで掻き出せなければプレーを続けててももう手遅れだよ」
('Д")「そうか」
('_L')「次はボールと間違えて人の頭蹴らないように」
(#'Д")「間違えてねーわ」
('_L')「次は後半最初のゴール、左京のドリブルからのゴールだな」
(・∀・)「ナイスゴールだったぜブーン」
( *^ω^)「ありがとうございますお」
(’A`)「やっぱドリブルうまいよな〜」
( *^ω^)「いやぁ〜我ながらスーパープレイだったと思うお」
('_L')「左京は攻撃面では大活躍だった」
(= Δ=)「攻撃面ではな…」
( ;^ω^)「あ…」
「攻撃面では」その言葉で次に何を言われるのか、大体察しがついた
('_L')「左京は常に守備への戻りが遅かった」
( ;^ω^)「はい…」
('_L')「相手のパスを一本でもカット出来たか?」
( ;^ω^)「出来ませんでしたお」
('_L')「正直に言おう、お前が90分間フルで試合に出ていたら、間違いなくあと2点は取られてた」
(;´ω`)「そんなぁ」
一点取ったことでブーンは分かりやすく浮かれていたが、
水戸が開口一番に放った言葉は説教だった
(;・∀・)「そりゃぁ流石に厳し過ぎるんじゃないのか?ブーンは初めての試合でゴールを決めてくれたんだゾ」
('_L')「そこは確かに評価すべきだが…
でも、このまま何も言わずに放置して左京が守備をしない選手になれば
その分の守備の負担は左ボランチの俺に降りかかってくるだろう」
(;´ω`)(;・∀・)「確かに…」
('_L')「あのゴールはディフェンダーが奪ってからすぐに俺にパスが回ってきたからこそ出来たカウンター攻撃だ
守備陣には感謝した方がいいぞ、マジで」
( ;^ω^)「チャンスを恵んで下さり、誠にありがとうございましたお」
( ><)「逆に左の守備が手薄になった事で、僕に活躍のチャンスが来たから
ラッキーって感じで…結果オーライなんです」
(= Δ=)「良くないんですが」
厳しい言葉がロッカールームに響き、
いつの間にか宴会のような賑やかな空気は消え去っていた
/ ,' 3 「私は今日の左京君は良くやってくれたと思いますよ」
( *^ω^)(か、監督〜)
/ ,' 3 「攻撃的な選手を途中から投入するのは当たり前ですから、
守備力のある霧島君を先に出しました
左京君は起用に上手く応えて点を決めてくれたんですし、そんなに弱点を咎めなくても…」
( ^ω^)「いや、良いんですお監督
水戸先輩も意地悪で言ってる訳じゃないですから」
('_L')「あぁ、この程度で満足するな
まだまだ成長出来るはずだ、期待している」
( ^ω^)「ありがとうございますお、現状で満足せずもっと強くならなきゃダメですから
こんなところで止まってられませんお」
('_L')「じゃあ、説教はこれくらいにして…
独走ドリブルのゴールは凄かった、あれを何回も試合で使えるようになれば相当な戦力になるぞ、分析しよう
あのゴールはどうやって生み出せた?言葉で説明してみろ」
( ^ω^)「あのゴールは、水戸先輩のパスのおかげで生まれたゴールですお」
(;'_L')「え?俺?!いやいやあれは個人技だろ」
水戸は予想だにしなかった返答に驚いた
( ^ω^)「内側に走りながらボールを待っていました
瀬戸も俺に合わせて着いてきてましたお
そこで水戸先輩が左に速いパスを出してくれたから、直ぐに切り返して瀬戸を引き剥がしました
だから瀬戸よりも早くボールに追いついたんですお」
('_L')「だってそれは、左京が指で合図出してたから…」
( ^ω^)「普通は気づかないんですお!そんな細かい合図」
(・∀・)「ちょっとその合図やってみてや」
( ^ω^)ノシ「こんな感じですかね」
ブーンが左手を腰の横で振る
('j v i')「声で相手に悟られないようにしながら手で合図を出したのか」
( ^ω^)「水戸先輩からのパスをもらった時に
このままドリブルでゴールまで行けるなって思ったんですお
だからその自分の気持ちを信じて走ったらゴールを決めることが出来ましたお」
(・∀・)「自信を持ってプレー出来た証拠だな」
( ^ω^)「ベンチから試合を見てた時はパスが速くて心配になってたんですけど、行けるって気持ちが湧き上がって来たんですお」
盛山先輩が昨日言ってくれた【軸】を持って自分を信じるという話
自分にとっての軸が何なのかはまだ分からないが、
自分を信じて戦う事はできた
/ ,' 3 「盛山くんの言っていた【軸】というものはとても大事なものです
場の空気感、試合の流れは常に変わり続けます その中で揺るぎない軸を持っていれば流されることはありません
そして、左京君のゴールが決まってからは完全に流れは毘府高に来ていましたね」
('_L')「次の得点は右サイドからの長岡と盛山のコンビネーションプレーだな」
(・∀・)「俺のシザース凄かっただろ、左に走り出しての右にパス」
( ゚∀゚)「いやいや俺の切り返しの方が凄かった、ボールに乗ってからの止まってパス」
(・∀・)( ゚∀゚)「ブーン」「左京」
「どっちの方が凄かった?」
( ^ω^)「うーん、盛山先輩のシザースですかね」
(*・∀・)「いぇーい」
(’A`)「ブーン、こういうのはどっちも凄かったって言わないとダメなんだぞ」
( ^ω^)「そうなのかお?」
( ゚∀゚)「いや良いんだよ別に、霧島はどっちが凄いと思った?」
(’A`)「長岡先輩の切り返しですね」
(・∀・)「言わせてない?」
( ゚∀゚)「言わせてない」
('j v i')「それにしても良いオーバーラップだったね、個人技×個人技のコンビネーションみたいな」
(・∀・)「まぁ俺たち個人がやりたいように動いても機能するのが、このコンビの良さだな」
( ゚∀゚)「あぁ」
('_L')「次は東のゴールだな」
/ ,' 3 「最後に東君のカーブシュートが活きましたね」
∫ ∫一Å一)「左京君が掻き回してくれたんで…いつもより撃ちやすかった気がしました」
( ^ω^)(にょっ?)
('_L')「左京が?」
(‐λ‐)「あの…左京君の事なんですけど」
( ^ω^)「お?」
西尾の声は小さいものの、落ち着いていて聞き取りやすい みんなが西尾の方へ耳を傾けた
(‐λ‐)「後半から出てきて流れを変える事が出来る
【スーパーサブ】みたいな選手になれたら、
チームとしては頼もしいですよね」
/ ,' 3 「なるほど…スーパーサブですか」
スーパーサブとは、後半の勝負どころで投入される戦術的な切り札として起用される選手のことである
周りの選手が疲れている中、フレッシュな選手が出てくると相手はディフェンスラインを崩しやすい
今日のブーンはまさにそれだった
('_L')「まぁ俺が監督なら左京は先発で使いたくないしな…」
( ;^ω^)「ちょw酷いですお」
('_L')「お前のドリブルは確かに一級品だったからな、うまくいけば大きな戦力になるはずだ」
( ^ω^)「はい、ありがとうございますお!」
/ ,' 3 「それぞれ弱点が見つかったと思うので、
帰ったら苦手を克服するために練習しましょう」
バスに乗り込んだ
(・∀・)「あんまり気にしすぎるなよ?」
( ^ω^)「あんまり気にしてないですお」
( ^ω^)「盛山先輩は練習の時、後輩が相手でも本気でプレーしてくれましたお
きっと水戸先輩だって意地悪で言ってる訳じゃないですお」
(・∀・)「期待してるからこそ厳しくしてるって訳か〜 高宮と同じくツンデレなのか?」
( ^ω^)(高宮さんにデレはあるのか?)
( ^ω^)「あ、そうだ盛山先輩」
(・∀・)「ん?」
( ^ω^)「明日の朝、一緒に守備練習をしてほしいですお」
(・∀・)「…ッ!」
(・∀・)(失敗から学ぶこの向上心!
俺、もたもたしてると追いつかれるな)
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