チコタン

あれは、一体何だったのだろう?

いまどきだから、ネットで検索すればすぐにわかるのであろう。
だが、私は自分で文章を書くとき、できるだけ検索しないようにする。
そうじゃないと、いろんな雑念が入ってしまって、自分の文章じゃなくなってしまう気がするのだ。

だから、敢えて調べない。
記憶だけを頼りに書く。
もしかしたら、間違ってるかもしれない。
でも、いいじゃない。
許してほしい。

さて、タイトルの「チコタン」。

小学校で、ある日授業中に突然聴かされたレコード。
その歌のタイトルが「チコタン」。

少年少女合唱団みたいなのが歌っていたのだが、それが何というか、複数の歌で成り立っていたのだ。そして、ちゃんとストーリーになっている。
それもそのはず、先生がおっしゃるには、この歌は実話が元になっていると。
しかも、主人公の小学生の男の子が書いた作文だか、詩だかが元になっていると。
その男の子が、同級生の女の子を好きになる。
女の子の名前はチエコさん。あだ名が「チコタン」

第1楽章(タイトル忘れた)
「なんでやろ?なんでやろ? なんでチコタン好きなんや?」
どうして自分はチコタンのことが好きなんだろう?
なんでこんな気持ちになるんだろう?
と自分に問いかける。恋の始まり。

第2楽章「プロポーズ」(←おい! 小学生だろっ!)
勇気を出してチエコさんに愛の告白をするシーン。
「チエコさん! 僕のお嫁さんになってください!」
とサラッと言いたいが、緊張してどもってしまう。それをそのまま歌で表現している。
「ちちちちちちちチエコさん! ぼぼぼぼぼぼぼくの! およおよおよおよおよお嫁さんに、 なななーってくだーさいー!」

第3楽章「ほっといてんか!」(放っておいてくれ!)
せっかく頑張って告白したのに、致命的な障害が発覚。
チコタンは魚が大嫌い。
でも、男の子の家はよりにもよって魚屋だった。
「ほっといてんか! ほっといてんか!
おやつなんか、要らん!
テレビなんか、見とない!(見たくない)
アホたれ! バカたれ!
かあちゃんのアホたれ! とうちゃんのバカたれ!」
あらためて書き出してみると、酷い歌詞だ。
拗ねて、親に八つ当たりである。

第4楽章(タイトル忘れた)
男の子は素晴らしい解決策を思いつく。
「チコタン、チコタン、エビ好き言うた!
チコタン、チコタン、カニ好き言うた!
チコタン、チコタン、タコ好き言うた!
ほんなら(それなら)、エビ、カニ、タコだけ
売ったらええやんか♪
やっほー♪」

全て解決!(かなぁ?)
順風満帆。
あとは大人になって結婚するのを待つだけだ!(だいぶ待つけど。)
と思いきや。。

衝撃の結末。
最終楽章
「ふたりで約束したのに。。
チコタン。。わろてる(笑ってる) 写真の中で。。
チコタン!笑うな!
ぼくは、ぼくは、悲しいねんぞ!!
チコタン 横断歩道でダンプにはねられて死んだ。
誰や!
チコタン殺したん誰や!
僕のお嫁さん殺したん誰や!
あほーーーーーっ!!!!!」

絶叫で歌は終わる。

あの歌は、何だったのだろう?
小学校にいる間、2回聴いた。
1回目は、まだ低学年だったから教室で担任の先生が聴かせてくれた。
2回目は、音楽室で音楽の先生に聴かせてもらったから高学年だったはずである。
小学校を卒業してからは、ラジオやテレビでも友達同士でも一度も話題になったことが無いし、歌そのものも聴いたことがない。歌詞が(「プロポーズ」を除いて)すべて関西弁だから、関西限定なのか? しかもごく一部のエリア、一部の学年しか聴いていないのだろうか?

今までの人生で、たった2回聴いただけなのに、歌詞の内容が衝撃的だったせいかメロディーも歌詞もほぼ覚えていて、いつでも歌える。
前奏も、レコードのジャケットの絵も、しっかり覚えている。

最初はコミカルな雰囲気で始まり、
失敗して暗く落ち込み、
そこからまた立ち直り、
幸せの絶頂へ。
そして最後に地獄の底に叩き落される。

先生は「実話が元になっている」とおっしゃったが
そうだとしたら、あまりにも悲しすぎる。

案外、ググってみたら。。

「歌がリリースされた当初は、大阪市在住の男の子が自らの実体験を綴った作文を元に作詞家の〇〇が歌に仕上げたとして話題を呼んだ。実在する小学生が書いた実話の歌詞ということで関西の一部の小学校では音楽の授業の教材にも使われたが、後に全て作詞家の創作であったことを作詞家〇〇自身が明かしている。話の元になった小学生も実在しない。」

なんて書いあったりして。
だったら、却って救われるんだけど。



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