緊急コラム「一眼レフとミラーレス」
「ニコンがデジタル一眼レフの生産を終了。今後はミラーレスだけで勝負」
という、衝撃的なニュースが流れたので、急遽、「デジタル一眼レフ」と「ミラーレス一眼」の違いについて、書いておこうと思います。
本来であれば、他の基礎的知識を何本も書いた上で書くつもりだった内容なので、知らない言葉などが出てくるかもしれません。
そこは、(今は)軽く流してください。そのうち、必ず説明します。
1.ミラーレス一眼とは?
被写体から来た光はまずレンズを通って、センサーの上に像を作ります。(結像) この像を電気信号に変えて処理し、SDカードなどのメモリーに記録します。これが、デジタルカメラの基本原理です。
ところで、私たち撮影者もこの像を見せてもらわなければ、カメラが今どこを狙っているのかわかりません。なので、センサーから出て来た電気信号を少し分けてもらって、それを背面モニターだとかファインダーに映し出しているのです。これがミラーレス一眼の原理です。皆さんが持っているスマホのカメラや、コンパクトデジタルカメラと基本的には同じ原理ですが、その中でレンズ交換できるものが、ミラーレス一眼だと思って頂ければ結構です。
2.一眼レフとは
一眼レフは、もともとフィルムカメラ時代に考え出された機構です。
フィルムカメラの場合、被写体から飛んできた光はレンズを通って、最終的にはフィルムの表面に「結像」します。が、一度限りの化学変化を利用して写真を撮るフィルムの場合は、「フィルムに光が当たっている瞬間」は、まさに「撮影している瞬間」なのです。フィルム上に光が当たって像ができる。この「像」を横から何らかの方法で覗くことはできるかもしれませんが、それを見て「あ、しまった。もう少し右を狙わなきゃ」とか思っても、もう手遅れなのです。フィルム上に最終的に像を作る前に、カメラがどこを狙っているかわからないと、意味がないのです。
昔は、こうしていました。
カメラのフィルムを置くべきところに、まず「すりガラス」を置きます。すりガラスの上には、レンズを通して被写体の像が結像されます。すりガラスを裏から覗けば、いま、カメラはどこを向いているか?ピントは合っているか?それを、目で確認することができます。
それを見ながら、構図を考え、ピントを合わせて、よしこれでOK!となったら、カメラを動かないようにしっかり固定し、すりガラスを外して、その代わりに(すりガラスと寸分たがわぬ位置に)フィルムを置きます。フィルムの前には「遮光版」が付いていて、この遮光版をさっと外せば、さっき覗いたのと同じ構図、同じ映像がフィルムの上に結像され、化学変化が起こり、撮影されるわけです。(実際にはシャッターも併用します。)
昔の写真家が、三脚を立て、大きな箱のようなカメラの後ろに黒い布がついていて、それをかぶりながら写真を撮っている光景を何かで見たことがあるでしょう? あれが、まさにこれです。すりガラスに映った像がしっかり見えるように黒い布をかぶるのです。
「そんな七めんどくさいことしてられっかい!」と言うことで考え出されたのが「一眼レフ」です。
レンズとフィルムの間に斜め45度のミラー(鏡)を置いて、フィルムに行くはずの光を横に逸らし、そこに「すりガラス」を置きます。この「すりガラス」(「フォーカシングスクリーン」と言います)に映った映像を見ながら、構図やピントを合わせます。35㎜フィルムカメラの場合、この映像はとても小さく(24㎜x36㎜)、暗いですから、小さなルーペで拡大し、黒い布をかぶらなくていいように目を密着させて箱の中を「覗く」スタイルにします。また、ミラーで一度反射させた映像を見るのですから、上下か左右のどちらかが反転した像になってしまうので、「ペンタプリズム」という五角形のプリズムを使ってこれを直します。これが一眼レフの「ファインダー」です。(一眼レフの「レフ」は「レフレクション」すなわち「反射」の略です。ミラーを使って反射させるからです。)
このファインダーを覗きながら、被写体を狙い、「これでOK!」となったら、シャッターボタンを押します。
シャッターボタンを押した瞬間、文字通り「瞬く間」に、今までレンズとフィルムの間で邪魔をしていたミラーが、さっと横に「退避」し、レンズとフィルムの間に障害物が無くなり、続いてフィルムの前にあるシャッターが開き、フィルムに光が当たり、化学反応が始まり、撮影完了したら、シャッターが閉じ、退避していたミラーが元の「邪魔な45度位置」に戻り、最初の状態に戻ります。
当然ですが、フィルムに光が行ってる間は、ミラーが退避しているので、ファインダーの中は何も見えません。
デジタル一眼レフも、このフィルムがセンサーに置き換わっただけで、基本的な仕組みは同じです。
・・・なんだか、えらくややこしそうですね。
そもそも、一眼レフはフィルムカメラ時代に考え出された苦肉の策。
「デジタルカメラになってミラーなんて無くてもちゃんと撮れるんだから、それでいいじゃない。なんで、過去の遺物を引きずるのさ? ミラーレスですべてOKじゃん。」
そう思うかもしれません。
しかし!
このマガジンの読者なら、ここで呟いてくれるはず。
「世の中に上手い話はない。上手い話の裏には必ず何かある。表と裏。光があれば必ず影がある。光と影を結び時告ぐる、高き山羊の。。」
そうです。それぞれにメリット、デメリットがあるのです。
説明しましょう。
3.ミラーレス一眼のメリット
①一眼レフに比べて小型軽量
「ミラーレス」の名の通り、ミラーの複雑な機構が不要です。さらにペンタプリズムも不要になるので同じ性能なら、ミラーレスの方が小型軽量になります。しかも、邪魔なミラーが無い分、レンズ設計も自由度が増し、レンズも小型軽量に作ることができます。
②シャッター音、シャッターショックが少ない
一瞬で高速動作するミラーの動きが無い分、一眼レフよりもシャッター音とショックが少なくなります。電子シャッターモードにすれば、無音撮影も可能です。
③今から写す映像とほぼ同じものが見られる
当たり前ですが、実際に撮影に使うセンサーから出力される映像を見るので、今から写す映像とほぼ同じ(全く同じではない!注意!)映像がファインダーやモニターで見られます。
なお、ミラーレス一眼のファインダーを「EVF:電子ビューファインダー」といいます。
④ファインダーやモニターの映像を拡大・加工できる
電子ビューファインダーなので、映像の一部分を拡大したり、あるいはその上に何か情報を重ねて表示したりが自由自在です。電子水準器を出したり、ヒストグラムを表示したり。。
如何です?
これだけ、読むと「ほら~、やっぱりミラーレスが断然良いじゃないか!」
て、なりますよね?
今から、反撃です。
4.デジタル一眼レフのメリット
①待機中にバッテリーを喰わない!
デジタルカメラは「電池なければただの(重い)箱」です。
しかも、最近は専用リチウムイオン電池を使うので、電池を使い切ったら買ってくるわけにもいかず、充電が終わるまで待つしかありません。
ヤマトの波動砲みたいなもので、これは大きな足かせです。
デジタル一眼レフは、ミラーレスに比べて消費電力が圧倒的に少ないです。特に差が出るのが、待機中です。
写真を撮る時、ファインダーを覗いて「こう撮ったらいいかな? いや、縦位置で撮った方がいいかな?」といろいろ考えながら、試しますよね。その時間が一種の楽しみでもあります。
が、ミラーレス一眼の場合は、ファインダーが「電子ビューファインダー」なので、電源を入れないと真っ暗で見えません。電源を入れて、ファインダー(またはモニター)を覗いて、あれこれ考えている間、ず~~~~っと連続して、センサー、ファインダー、モニター、が電気を喰い続けています。休むことなくです。だから、ただ構図を決めているだけで、どんどんバッテリーが減っていきます。
対する、デジタル一眼レフはどうでしょう?
電源を切っていても、ファインダーに映像が見えます。構図を決めたり、(手動で)フォーカスをいじってみたりもできます。
露出計などを動かしたければ電源を入れることになりますが、電源を入れても、一番電気を喰うセンサーや映像処理の回路がお休みモード、設定で背面モニターも切ることができますから、そうなるとミラーレスとは桁違いに低消費電力です。
カメラを取り出してすぐシャッターを切る、という使い方では差が出にくいですが、じっくり待ち構えて撮る、という使い方では、ミラーレスとデジタル一眼レフで大きな差が出ます。
なお、低消費電力であるため、過去には単3電池4本で動くデジタル一眼レフというのもありました。万一旅先で電池が無くなってもすぐ調達できるので、私は愛用しています。
②ファインダーにタイムラグがない
ミラーレス一眼はファインダーやモニターで見ている映像と実際の映像に微妙なタイムラグ(遅れ)があります。近年、かなり改善されていますが、ゼロではありません。特に、暗いところで顕著に出ます。マニュアルでピント合わせをするとき等に支障があります。
その点、デジタル一眼レフは光学ファインダー。レンズを通った光をそのまま見ているのですから、そういう意味でのタイムラグはゼロです。ピント合わせでも困りませんし、カメラを振った時や、ズームしたときの「気持ち悪さ」もありません。
③暗いところで目に優しい
ミラーレス一眼に使われている、電子ビューファインダーやモニターは「発光」しています。特に暗いところで使うと、画面の明るさと周囲の明るさの不一致で、目が疲れます。夜景を撮る時など、せっかく暗闇に慣れた目が、ファインダーやモニターのせいでリセットされてしまうこともあります。
デジタル一眼レフの光学ファインダーは、外の光そのままを見ているので、目に優しいです。
④センサーがダメージを受けにくい
太陽に代表される「強い光源」からの光が入ると、場合によってはセンサーがダメージを受けます。虫眼鏡で紙を燃やす実験と同じで、条件が揃えばセンサーがやられます。
ミラーレス一眼の場合は、基本的に「常にセンサーは外光にさらしっぱなし」(そうしないと、ファインダーの映像が見られない)なので、外光によるダメージを受けやすいです。
一方、デジタル一眼レフはシャッターを切る直前までは、センサーの前のシャッターが閉じ、外光から守られています。さらに、その前にはミラーがありますから、撮影時以外外光がセンサーに届くことはありません。
ついでに、レンズ交換時もセンサーにホコリが付きにくくなります。
⑤ナマの映像を見るのが楽しい!?
昔、ビデオカメラが流行っていた頃、撮影しながら感じたことがあります。
「今この瞬間、目の前に(おそらく二度と無い)すばらしい光景が広がっているのに、自分はなぜこの小さなモニターやファインダーの不鮮明な映像を見ているのだろう? ナマで、自分の眼で、直接目の前に起こっていることを見た方が良いではないか?」
全く、その通りです。
ミラーレスの電子ビューファインダーやモニターで見ているのは、言ってみれば「ニセの映像」です。よく作られてはいますが、本物とは色も違うし、白飛びしているところもあれば、黒くつぶれているところもあります。センサーと言う「ニセの眼」で見た映像を加工して見させられているのです。センサーや電子ビューファインダーの性能の限界を超えることはできません。
他方、デジタル一眼レフのファインダーを覗いた時に見えているのは、本当の光です。レンズを通してはいますが、色や明るさ暗さは本物です。双眼鏡や望遠鏡を覗いているのと同じ感じです。もっと飛躍した言い方をすれば、メガネをかけてみているのと、さほど変わりがありません。ミラーレスに比べて、圧倒的に「本物の」景色を見ているのです。
だから、ファインダーをじっと覗いていても、臨場感があるというか、ナマで見ているのとほとんど同じ「楽しさ」を味わうことができると思うのです。
5.ライブビュー機能を使えば一眼レフもミラーレスに化ける!?
ここまで、ミラーレスとデジタル一眼レフの長所についてそれぞれ説明しました。自分の使い方に合わせて、どちらかを選べば良いのですが、
ここで衝撃の事実!
実はデジタル一眼レフはミラーレスに(ほぼ)なり切ることができる!!
え?
本当です。
ミラーレスのメリットをもう一度復習してみましょう。
①一眼レフに比べて小型軽量
②シャッター音、シャッターショックが少ない
③今から写す映像とほぼ同じものが見られる
④ファインダーやモニターの映像を拡大・加工できる
①だけはどうしようもありませんが、
②③④については、デジタル一眼レフでも「ライブビュー機能」を使えば可能になります。
デジタル一眼レフは「電子ビューファインダー」は積んでいませんが、背面モニターはあります。通常はここに再生画像や各種情報が表示されますが、「ライブビューモード」にすれば、ここが、ミラーレスで言うところの、背面モニターと同じ働きをするようになります。
「ライブビューモード」に切り替えると、あの邪魔なミラーが退避し、センサーの前のシャッターも開き、センサーが直接レンズからの光を受けるようになる。つまり、本当にミラーレスに「なり切る」のです。
逆にミラーレスがデジタル一眼レフに「なり切る」ことは逆立ちしてもできません。
そう考えると、デジタル一眼レフは、ほぼ万能だと言えなくもありません。
ただし、ミラーレスに残された、ただ一つの?メリット「小型・軽量」はやはり絶大です。
なお、ニコンはデジタル一眼レフの製造をやめますが、ペンタックスはデジタル一眼レフに積極的で、今も名機をいろいろと作っています。
私はこれからもペンタックスを応援します!(偏向記事)