偏質的俳句鑑賞-第二百六十回 煮凝の味に加わる山の闇-木附沢麦青『読む力』
煮凝を最近食べることはないけれど、たまに旅行の和食で出ることがある。
谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』の羊羹ではないが、夜食べるとなかなかきれいだったりする。
この作者は「山の闇」という抽象的で読者が今までどのような体験をしてきたかに左右されやすい言葉を持ってきた。
しかし、左右されやすいからと言って読者は詩を解釈するために煮凝のあの独特の色味に似た闇を思い起こさせる。
そういった読者の誘導が上手いところがこの句の核だろう。
次回も良ければ読んでください。