偏質的俳句鑑賞-第百三回 ひぐらしや水のごとくに逝きたまふ-吉野義子『花真』
大野林火の死に際した一句だ。
「水のごとくに逝」くとは穏やかな死に方であることが容易に想像できるのに、詩としては隙がない。
比喩の使い方として教科書レベルだ。
季語の「ひぐらし」が少し死のイメージと重なるところはあるが、全体として人の死を悼む気持ちにガッチリとコーティングされていて緊張感がある。
「たまふ」で自身との関係性や尊敬の念がしっかりと出ている。弔問の句はありきたりでその場限りになりやすいが、この句は普遍的な悲しみをしっかりと掴んでいる。
それだけです。次回も良ければ読んでください。