開催者&句友選~俳句バトルミニ大会『北風の章』
開催者&句友選について
すずめが信頼する句友二人にお願いし、俳句バトルの成績とは別に、全句の中から「大好きな句」と「好きな句」を選んでもらいました。
選考に当たっては、作者名を匿名にし、「参加者1の4句」「参加者2の4句」……という形で見てもらっています。
(なおお二人はXをしていないため、バトルには投票していません)
開催者も句友と同じく、俳句バトルの成績とは関係なく、全句の中から「大好きな句」と「好きな句」を選びました。
句友選~影山らてん
影山らてんのプロフィール
俳歴6年。「麒麟」に所属しています。
⚫️大好きな句
尺鯵のがつと糸引く夕焼けかな ぷるぷるぷりん
(評)
がつと、がいいですね。単なる鯵ではなく尺鯵たる迫力がありますし、
夕方までかかってようやく釣り上げた喜びも伝わって来ます。
この作者の他の3句も素敵でした。代表してこの句を大好きな句として推させていただきます。
⚫️好きな句
ギャロップの勁く春泥跳ね上る 珠林
(評)
景がよく見えギャロップの力強い音も聞こえてきます。
春の躍動感がよく感じられます。
むささびのぜんぶ広げてゐる強さ 露草うづら
(評)
下五の着地が好きです。
見事に季語を言い当てた一句。
一昼夜分の北風染む猫帰還 多木紫蝶
(評)
おかえり! 一昼夜分がいいですね。
猫は案外お出かけを楽しんでいたのかも。
太陽に北風を抱く許可出せり 外鴨南菊
(評)
面白い。
寒いの苦手なので毎日許可出してください。
湯冷めして二の腕細くなりにけり 海の朝
(評)
そんな気がしますね。
把握の仕方ですが楽しいです。
大根引く聖なる剣抜くやうに みどちゃん
(評)
素敵な直喩ですね。
インディージョーンズに大根を引かせてみたい。
句友選~天谷翔子
天谷翔子のプロフィール
気に入っている自分の句
白黒写真のセーターの色あれは赤
仏壇の灯りのやうに桃ひとつ
夏空と海の境に本置きぬ
⚫️大好きな句
財布空っぽ朝北風のターミナル Q&A
(評)
出だしの上手さ。ん?と読み手を引き付ける。朝北風、ターミナル、がいい。途方にくれている姿が目に浮かぶ。今日一日をどう過ごすのだろう、と、読者の気持ちを揺さぶる。五七五で、名詞と助詞だけで、これだけのことが言えるんだ、と感心した。
⚫️好きな句
着膨れて炊き出しの鍋かき混ぜる Q&A
(評)
景がしっかりと浮かび、上五で寒さが伝わって来る。
絨毯の不時着めける曲がり方 露草うづら
(評)
中七の比喩の上手さ、面白さ。空飛ぶ絨毯を、直ぐに思う。どんな曲がり方をしているんだろう、と想像させる。
一昼夜分の北風染む猫帰還 多木紫蝶
(評)上五中七の表現の上手さ。下五のきっぱり感もいい。
手から手へときめき流れ歩く冬 修平
(評)
初々しい!何も言わなくても、繋いだ手から伝わって来る感情。春、夏、秋では駄目で、季語が実に効いている。
湯冷めして二の腕細くなりにけり 海の朝
(評)
二の腕、と、体の一部分を具体的に述べたことで、感覚がより鮮明に読者に伝わる。
大根引く聖なる剣抜くやうに みどちゃん
(評)
中七下五の比喩には感心した。大根の白さが目に浮かぶ。大根は清浄なる野菜だ、と気付かされた。
開催者選~山田すずめ
⚫️大好きな句
流れゆく右手左手踊の輪 みどちゃん
(評)
語順が感動をもたらしている。上五中七の時点では一人の手のことかとも思う。けれど「踊りの輪」で光景が一気に鮮明に。人々の滑らかに動く右手左手を思い浮かべれば、自然とそれを照らす灯りや、足の動きや表情も見えてくる。好き!
⚫️好きな句
北風や逢瀬帰りの知らぬ駅 紫月暁雫
(評)
楽しい時間の終わりを痛感させられる。逢瀬という非日常から日常に戻り、我に返った感が強く出ている。
北風の森をただしく出でにけり ぷるぷるぷりん
(評)
「ただしく」に惹かれた。風が木々の間を過ぎていくだけ。でも「ただしく」と言われることで、自然の厳かさ(主人公が持つ自然への敬意)に気づかされる。
流木を拾う少年夏の空 Q&A
(評)
流木と少年、空、の組み合わせが好き。海を旅してきた流木と世界に幅立つ可能性を持つ少年、世界の広さを思わせる夏空。ロマンがここにある!
リビングにマルゲリータの香の聖夜 土佐藩俳句百姓豊哲
(評)
「香の聖夜」の「の」が好き! マルゲリータがあるのではなく、マルゲリータの香りがする聖夜でもない。香りと聖夜が一体化している。マルゲリータという言葉の選択もいい。外食産業がそこまで発展していなかった頃、洋食というのは憧れだった。外国の食べ物がいっぱい並ぶきらきらしたクリスマスにもあこがれた。あの頃の憧れがよみがえる。好きっ!!
雲海や西へ流るる鳥一羽 露草うづら
(評)
景の鮮明さと壮大さが好き。この人物は鳥に一体何を思うのか。知りたい。聞きたい。
水洟に途切れアンパンマンのマーチ 藤白真語
(評)
「途切れ」だから、終わってはいない。途切れた歌はきっと再開する。主人公がこどもと思えば、子どもらしい懸命さが、大人と思えばなにかの切実さが感じられる。どちらでも、冬の寒さに負けない強い想い。好き!
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