現代語俳句投句会 第6回 結果発表
「現代語俳句投句会」と題して、
現代語で詠んだ俳句を募集しています。
第6回は4名のみなさんに全26句をお寄せいただきました。
以下その結果発表です。
現代語俳句投句会 第6回
2020年 6月
◎ 特選句 ◎
蜘蛛の巣も宝石になれ垂れ滴
笹塚心琴
ソーダ水躊躇が喉を下りてゆく
笹塚心琴
涼あおく水鳥が舞う逆さ富士
吉田翠
なにもかもアルバムに閉じ夜の秋
吉田翠
驟雨の矢いざこの本を護り抜け
矢口れんと
紫陽花の国にアリスの見え隠れ
矢口れんと
青田凪ぐ千の瑞穂が向く空よ
矢口れんと
雲の峰副都心から生まれたか
悠凜
◯ 入選句 ◯
葉の裏のカタツムリこそド根性
笹塚心琴
すべからく休み休みよカキ氷
吉田翠
勲章か梅酒の瓶と指の傷
悠凜
◇ 佳作 ◇
ふくよかな母のてのひら梅雨の雲
笹塚心琴
やれ謡え空に鎮座の夏雲ぞ
吉田翠
洒落者が粋で鯔背ですててこで
吉田翠
金魚乱舞どっしり黒のお囃子で
矢口れんと
琥珀色梅酒の瓶のかがやきよ
悠凜
敬称略
句の並びは投句会ご投句順です
【特選句より鑑賞】
ソーダ水躊躇が喉を下りてゆく 心琴
ソーダ水は炭酸水に砂糖などを加えた飲み物。夏に飲むとすっきりします。人としての日々は躊躇・ためらい・迷いの連続です。ソーダ水の強い刺激とともにそれらがすっと喉を下りて、やがて腹が決まればまた顔を上げて夏の日射しの中へ出てゆくのだと思います。
涼あおく水鳥が舞う逆さ富士 翠
逆さ富士は湖面にくっきりと映る富士の姿のこと。富士五湖の逆さ富士は有名です。「涼」が主季語です。自然の雄大さ、しずけさ、そして厳かな涼気を感じる句です。言葉で描いた絵画のように美しいです。
青田凪ぐ千の瑞穂が向く空よ れんと
青田は稲が青々と成長している田。瑞穂はみずみずしい稲穂のこと。まだ未熟で青々としたものも稲穂と呼びます。日本は稲が多くとれることから瑞穂国という美称を持っています。この句は風が凪ぐたびに空を向く稲の姿を、人々にかさねた言祝の句ともいえそうです。
雲の峰副都心から生まれたか 悠凜
超高層ビルがたちならぶ東京の新宿副都心。遠くから眺めてもよく目立ちます。とても現代らしい句で、なおかつ雄大です。現代語でいきいきと詠めるものの1つに都市もありますが、この句はそうした句です。「副都心」の語の選択も抜群です。
【ご投句いただいたみなさんの全作品です】
◯ 笹塚心琴さんの作品 ◯
雨音のスタッカートに踊る恋
ソーダ水躊躇が喉を下りてゆく
濡れそぼり仰ぎ見る天のモノクロ
蜘蛛の巣も宝石になれ垂れ滴
雨傘をくるりくるりとゆるむ頬
葉の裏のカタツムリこそド根性
長電話すっかり雨もやんでおり
ふくよかな母のてのひら梅雨の雲
きみの顔ビニ傘越しに観察ぞ
大雨ののち訪れる初恋よ
◯ 吉田翠さんの作品 ◯
マッピング目をこらすほど夏の夢
やれ謡え空に鎮座の夏雲ぞ
涼あおく水鳥が舞う逆さ富士
なにもかもアルバムに閉じ夜の秋
すべからく休み休みよカキ氷
洒落者が粋で鯔背ですててこで
◯ 矢口れんとさんの作品 ◯
緑蔭のベンチ埋まって根にふたり
驟雨の矢いざこの本を護り抜け
金魚乱舞どっしり黒のお囃子
紫陽花の国にアリスの見え隠れ
青田凪ぐ千の瑞穂が向く空よ
◯ 悠凜さんの作品 ◯
見えずとも記憶起こすは山梔子ぞ
雲の峰副都心から生まれたか
勲章か梅酒の瓶と指の傷
琥珀色梅酒の瓶のかがやきよ
赤茄子を収穫しては祖父の笑み
ご投句・ご参加いただき
ありがとうごさいます