現代語俳句投句会 第1回 結果発表
「現代語俳句投句会」と題して、
現代語で詠んだ俳句を募集しました。
第1回は5名のみなさんに全30句をお寄せいただきました。
以下その結果発表です。
現代語俳句投句会 第1回
~2020年 1月~
◎ 特選句 ◎
凍て蝶か病衣をさする手の無力
矢口れんと
着ぶくれて嬉しい夜の散歩道
笹塚心琴
冬の虹たったひとつの夢がある
笹塚心琴
女こそおしくらまんじゅう押し返せ
吉田翠
友たちのハッピーバースデー寒の内
悠凜
酌み交わす 憧れの人 風花に
岸あい
◯ 入選句 ◯
書き初めはメモ帳とペン空の下
矢口れんと
とがらせたくちびるに冴ゆくすり指
笹塚心琴
春を待ち母が手にする日めくりよ
吉田翠
静寂を海に放つか冬の月
吉田翠
七草をとなえてきざむ夕餉時
悠凜
年賀状 当たる切手は 恩師より
岸あい
◇ 佳作 ◇
冬鷺の凛々しい影を追いかける
笹塚心琴
筆跡にかぶせた母の古ショール
笹塚心琴
待たせては味もしみるかおでん種
吉田翠
開かれて椀に閉じられ鏡餅
悠凜
身を細め冬三日月もふるえる夜
悠凜
春よ来い 私の心は 冬の梅
岸あい
敬称略
句の並びは投句会ご投句順です
【特選句より鑑賞】
凍て蝶か病衣をさする手の無力 れんと
「凍て蝶」のように病床に横たわるあなたをどんなに看病していても、自分の無力さを思わずにはいられないという句です。病床に伏している人を「凍て蝶」とだけ表現されたのが本当に斬新でみごとです。
着ぶくれて嬉しい夜の散歩道 心琴
着ぶくれることが嬉しい、という瑞々しい感性がすばらしいと思いました。そしてその思いにたしかに共感ができる1句でもあります。「夜」「散歩道」など、さりげなく置かれていますがどれも必要不可欠な語です。
女こそおしくらまんじゅう押し返せ 翠
華やかさや明るさ・楽しさだけでなく、意志や力強さも感じる句です。句の背後に、女性の地位向上など現代社会が取り組んでいくべき諸問題も秘められています。女性・男性どらちの心も大きく打つ力のある句だと思います。
友たちのハッピーバースデー寒の内 悠凜
寒中に誕生日を迎えるご友人の方々を次々と祝っているのでしょう。「寒の内」は1年のなかでもっとも寒い時期。だからこそご友人たちの存在やその誕生日を祝うことが、一層嬉しくあたたかく感じられるのだと思います。
酌み交わす 憧れの人 風花に あい
憧れの人と酌み交わす酒。その人とその束の間のひとときは舞う風花となって心にのこりつづけるだろうという句です。句のなかでの流れるような時間の経過の仕方・場面の転換の仕方がとても斬新でみごとです。
【ご投句いただいたみなさんの全作品です】
◯ 矢口れんとさんの作品 ◯
凍て蝶か病衣をさする手の無力
書き初めはメモ帳とペン空の下
子らの背を追い靴の鳴る厄払い
寒椿立つ通い路背くらべ
◯ 笹塚心琴さんの作品 ◯
誰よりも孤独が似合う冬の月
着ぶくれて嬉しい夜の散歩道
風邪ひいた理由が君のこそばゆさ
冬鷺の凛々しい影を追いかける
筆跡にかぶせた母の古ショール
冬の虹たったひとつの夢がある
儚さを乗り越えてゆけ冬の蝶
とがらせたくちびるに冴ゆくすり指
街じゅうがダイヤモンドだ犬踊る
寂しさもおでんとともに煮込まれる
◯ 吉田翠さんの作品 ◯
春を待ち母が手にする日めくりよ
静寂を海に放つか冬の月
待たせては味もしみるかおでん種
冬枯れを抱きあげ仰ぐ一天ぞ
女こそおしくらまんじゅう押し返せ
◯ 悠凜さんの作品 ◯
書き初めの文字もほろ酔い千鳥足
七草をとなえてきざむ夕餉時
開かれて椀に閉じられ鏡餅
春近しそうは言っても寒さ勝ち
友たちのハッピーバースデー寒の内
身を細め冬三日月もふるえる夜
◯ 岸あいさんの作品 ◯
元日は この甘酒と 初詣
年賀状 当たる切手は 恩師より
初出勤 しばれる手と手 脳みそも
酌み交わす 憧れの人 風花に
春よ来い 私の心は 冬の梅
みなさま
ご投句・ご参加ありがとうごさいます