見出し画像

俳句読みくらべ ~現代語俳句と古語俳句~



現代語の俳句と古語の俳句をならべて
読みくらべてみようという記事です

楽しんでいただけたら幸いです


春夏秋冬・新年の句を
それぞれならべてくらべていきます


古語俳句は
古語・歴史的仮名づかい・古典的切れ字を
基本にして

現代語俳句は
現代語・現代仮名づかい・現代的切れ字を
基本にして
それぞれ詠んでいます




読みくらべ
~古語俳句と現代語俳句~


◇ 春の句 ◇


「梅の花」

古語俳句

いちりんの梅匂ひたつ日なたかな


現代語俳句

にっぽんのかおりの梅の花ひらく



「春」

古語俳句

人といふちひさき春のゆく野かな


現代語俳句

伊勢神宮おおきな春の日だまりに



「花見」

古語俳句

ほほ笑んで花となりたる花見かな


現代語俳句

花見してはるばると時こえゆくか



「花ふぶき」

古語俳句

そのなかに人うつくしき花ふぶき


現代語俳句

どの人も花とふぶいていることよ



◇ 夏の句 ◇

「風鈴」

古語俳句

散りふぶくごとく風鈴鳴りにけり


現代語俳句

おおぞらをとおくきよめて風鈴よ



「街」

古語俳句

噴水やまだ見ぬひとを待つこころ


現代語俳句

一人一人孤独でアイスコーヒーで



「香り」

古語俳句

手にとりし人にもつとも薔薇匂ふ


現代語俳句

そのなかに揺れるみらいよ香水瓶



「昼」

古語俳句

むぎわら帽子珊瑚の島を愛しけり


現代語俳句

寝ころんでうちゅうに一人夏座敷



◇ 秋の句 ◇


「桐一葉」

古語俳句

こころへと落ちてくるなり桐一葉


現代語俳句

バス発って落ちてきたのは桐一葉



「月」

古語俳句

花鳥風月こよひは月をあふぎけり


現代語俳句

たかだかとこころがのぼる名月よ



「虫」

古語俳句

すず虫のはるかなこゑやかごの中


現代語俳句

にわにすむこおろぎも子々孫々と



「しみじみと」

古語俳句

十月が身にしみてくる湯ぶねかな


現代語俳句

生きること死ぬこと天の河のした



◇ 冬の句 ◇


「雪」

古語俳句

結晶のおもたさのゆきふりにけり


現代語俳句

あおぎみるひとりひとりが雪の花



「あたたかさ」

古語俳句

入りてより時のとまりし炬燵かな


現代語俳句

母というひかりがそこに日向ぼこ



「火」

古語俳句

くべくべてすべて忘るる焚火かな


現代語俳句

一日がぼっとはじまるストーブよ



「くじら」

古語俳句

大いなる海のちひさきくぢらかな


現代語俳句

くじらゆくはてない海の淋しさよ



「寒」

古語俳句

大寒と言ふだけのことありにけり


現代語俳句

寒がらす人の世もっとさびしいぞ



◇新年の句 ◇


「雑煮」

古語俳句

年ねんにかぞくふえゆく雑煮かな


現代語俳句

一人住むひとりながらも雑煮の香



「正月」

古語俳句

正月凧ひつぱるたびに揚がりけり


現代語俳句

てっぺんに富士あるそらよ正月凧



現代語俳句と古語俳句
それぞれ優れた点とそうでない点があると思います。

古語俳句では、「や・かな・けり」の伝統的な切れ字の威力をぞんぶんに活かすことができます。それが強みの一つです。

ですが、古語をベースにしているため、古語・歴史的仮名遣いを使う必要があります。それが読みづらさ・伝わりづらさを読者の方に感じさせることになり、弱みになっています。


現代語俳句では、「よ・か・ぞ」など現代の語としても通用する切れ字を使いますが、これらはあまりなじみがなく、切れ字としてまだ成熟していません。それが弱みの一つです。

ですが、現代語をベースにしているため、現代語・現代仮名遣いが使えます。その読みやすさ・伝わりやすさは強みとして活かしていくことができます。


一長一短ありますが、
どちらにご興味を持たれたでしょうか。



言葉は時代とともに変わっていくものです。

それは進化でもあり、退化でもありますがとめようがありません。

たとえば平安時代の言葉で文章を書いている作家の方は、現代ではおそらくいないと思います。


現代の俳人の方々が言葉の変化・移り変わりに、この先どう対処されていくのか、見つめつづけていたいと思っています



いつも
ご覧いただき
ありがとうございます


*俳句については、個人・団体によって様々な考え方や見解があります